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蒼色の恋に。  作者: ひろねる


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22 葛藤電話

蒼は小さく息を吐いた。

気づけば、視線は部屋の床に落ちていた。

昔のことを思い出すと、胸の奥が少しだけ重くなる。

三郎は黙って蒼の顔を見ていた。

しばらくして、ぽつりと口を開く。

「……なるほどな」

腕を組みながら、小さく頷く。

「そりゃあ、色々あったわけだ」

蒼は苦笑する。

「まあな」

少しだけ間が空く。

三郎はふっと笑った。

「でもさ」

蒼を見る。

「愛菜、まだお前のこと好きだと思うぞ」

蒼は一瞬だけ目を伏せた。

(……もちろんそんなこと、気づいてる)

でも、口には出さない。

蒼は軽く肩をすくめて言った。

「こんな最低なやつ、まだ好きなわけないだろ」

三郎は少しだけ目を細める。

何か言いたそうに口を開きかけて――

でも、結局何も言わなかった。

部屋の中に、少しだけ静かな空気が流れる。

その日の夜。

蒼は自分の部屋で、ベッドに腰掛けながらスマホを耳に当てていた。

「もしもし、新井さん?」

『あ、蒼くん。どうしたの?』

電話越しに聞こえる凛の声は、柔らかくて落ち着いていた。

蒼は少し頭をかきながら話し始める。

「今日さ、三郎と太陽と愛菜と4人で、ゴールデンウィークどこ行くか話してたんだけど」

『うん』

「バーベキューいいんじゃないかって話になってさ。新井さんとお友達も、バーベキューでいい

かなって思って電話したんだ」

少し間が空く。

そして凛が明るい声で答えた。

『うん、全然大丈夫だよ。バーベキュー楽しそう!』

その声に、蒼も少し安心して笑う。

「よかった」

少しして、蒼は思い出したように言った。

「そういえば、新井さんって太陽と愛菜のこと知らないよね?」

『あ、太陽くんは知ってるよ』

蒼は少し驚く。

「え、そうなの?」

凛は少し考えるように言った。

『この前、三郎くんと3人で話したときに名前出てたよね?蒼くんと同じ野球部だったって』

「ああ、そうそう」

蒼は思わず頷く。

「太陽は高校のときの野球部のチームメイトでさ。キャッチャーやってて、キャプテンだったん

だ」

少し笑う。

「面倒見もいいし、チームの中心みたいなやつでさ。あと、めちゃくちゃ真面目でいいやつ」

『へえ、そうなんだぁ』

凛は楽しそうに相槌を打つ。

そして、ふと思い出したように聞いた。

『愛菜さんは……?』

『知らないなぁ』

その名前を聞いた瞬間。

蒼の頭の中に、ふっと愛菜の顔が浮かんだ。

ほんの一瞬、思考が止まる。

蒼は少しだけ間を空けてから言った。

「あー……高校の同級生だよ」

それ以上は説明しなかった。

凛も、特に深く気にした様子はなく

『そっかぁ』

と素直に返す。

「まあ、みんな普通にいいやつだからさ」

蒼は少し笑う。

「たぶん楽しいと思うよ」

『うん、楽しみにしてるね』

蒼はスマホを持ち直す。

「それでさ、当日なんだけど」

『うん』

「朝9時に駅前のロータリー集合で大丈夫?」

『うん、大丈夫だよ』

凛は電話の向こうで小さく頷いた気配を見せた。

蒼は続ける。

「三郎がさ、親から車借りて出してくれるって言ってて。それでみんなでバーベキュー場まで行く

感じ」

『あ、そうなんだ』

凛は少し考えるように声を出す。

『えっと……』

少しして、指折り数えるように言い始めた。

『私でしょ、蒼くんでしょ、三郎くんでしょ、千尋ちゃんでしょ、太陽くんに愛菜ちゃん……』

少し間が空く。

『……6人だよね?』

蒼は頷く。

「うん」

凛は少し心配そうな声で続けた。

『6人も乗れる?荷物もあるだろうし……』

蒼は軽く笑う。

「大丈夫だよ」

「三郎の家の車、8人乗りだから」

『あ、そうなんだ』

凛はほっと息をつく。

『それなら安心だね』

蒼も笑う。

「まあ、たぶんにぎやかなドライブになると思うけどな」

電話越しに、凛が小さく笑った。

『ふふ、楽しみだね』

「だな」

少しだけ沈黙が流れる。

でも、不思議と気まずくはない。

むしろ、どこか心地いい時間だった。

『じゃあ、当日よろしくね』

「ああ、よろしく」

凛は少し柔らかい声で言う。

『……おやすみ、蒼くん』

「おやすみ、新井さん」

通話が切れ、スマホの画面が暗くなる。

蒼はそのままベッドに体を預け、小さく息を吐いた。

――一方、蒼。

蒼は天井を見つめながら、ふとさっきの会話を思い出していた。

『愛菜さんは……知らないなぁ』

その言葉が、頭の中に浮かぶ。

――高校の同級生だよ。

そう言って、少しだけ言葉を濁した自分。

しばらく天井を見つめたまま、蒼は小さく息を吐いた。

「……まあ、いいか」

そして、ゆっくり体を起こす。

「バーベキュー、楽しむか」

ぼそっと呟き、蒼は部屋の電気を消した。


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