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蒼色の恋に。  作者: ひろねる


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21 Re:スタート

三学期が始まり、クリスマスも正月も過ぎた頃。

学校は、どこか落ち着いた空気に包まれていた。

進路もほぼ決まり、自由登校が始まる前の午後。

教室は静かで、廊下を行き交う生徒の姿もまばらだった。

下校時間。

蒼が教室を出ると、同じタイミングで愛菜も廊下に出てきた。

二人は、思わず足を止める。

別れてから――

まともに顔を合わせるのは、これが初めてだった。

一瞬だけ、空気が張りつめる。

「あ……」

先に声を出したのは愛菜だった。

「こ、こんにちは」

少し照れたように言う。

蒼もぎこちなく笑った。

「おう……こんにちは」

短い挨拶のあと、少し沈黙が流れる。

それでも二人は、なんとなく同じ方向へ歩き出した。

「冬休み、どうしてた?」

蒼が何気なく聞く。

愛菜は少し考えて答える。

「うーん、家でのんびりしてたかな」

「蒼は?」

「俺も、まあ……特に変わらず」

何気ない会話。

でも、どこか少し懐かしい感じがした。

二人とも、お互いの進路は知っている。

それなのに、どこか意識してその話題には触れない。

小さな沈黙のあと、蒼がふと思い出したように言う。

「そういえば……」

少し言葉を探して続けた。

「来年から、同じ大学だよな?」

その瞬間、愛菜の目が大きく見開かれる。

「え、ほんと!?」

思わず声が少し大きくなる。

「同じ大学じゃん!」

二人は思わず顔を見合わせた。

そして、同時に笑う。

少し照れくさい、でもどこか懐かしい笑いだった。

「そっか……」

蒼が苦笑する。

「なんか、変な感じだな」

愛菜も小さく笑う。

「うん……ちょっと不思議」

少し間を置いて言った。

「でも、なんだか嬉しい」

廊下に差し込む午後の光が、二人の影を長く伸ばしている。

あの日々の思い出も、別れの痛みも。

全部、胸の奥に静かに残っている。

それでも二人は、少しずつ前に進もうとしていた。

校門を出ると、冬の冷たい空気が頬を撫でた。

蒼がふと思いついたように聞く。

「ところで、大学では何したいの?」

愛菜は少し目を輝かせる。

「うーん、英語とか経営とか色々学びたいな」

「あと、サークルとかも楽しみ!」

蒼は小さく笑う。

「いいね」

「俺はバイトとかしてみたいかな」

少し間が空く。

愛菜は、少しだけ蒼の顔を見る。

それから、少し遠慮がちに聞いた。

「……蒼はさ」

蒼が振り向く。

「ん?」

愛菜は少しだけ視線を落とす。

「野球は……もう、いいの?」

その言葉に、蒼は一瞬だけ足を止めた。

冬の風が、二人の間を静かに通り抜ける。

蒼は少し苦笑する。

「まあな」

軽く肩をすくめる。

「もう肩が無理なんだよ」

それだけ言って、蒼は前を向いた。

「だから、野球はもういいかなって思ってる」

愛菜は一瞬、何か言おうとした。

でも――結局、何も言えなかった。

ただ、小さく「そっか」と呟く。

それ以上は聞かなかった。

蒼が前を向いて歩き出す。

愛菜も、その隣を静かに歩いた。

二人の影は並んで伸びていた。

けれど、その間にはほんの少しだけ距離があった。

冬の冷たい風が頬を撫でる中、二人は並んで校門を出た。

新しい年の始まりとともに、

少し大人になった二人の関係が、ゆっくりと動き始めていた。

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