20 秋3
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しばらく歩くと、通りの角にあるコンビニの明かりが見えてきた。
七海がふと立ち止まる。
「あ」
蒼が振り返る。
「どうした?」
七海は少し照れくさそうに言う。
「ちょっと喉乾きました」
蒼は小さく笑う。
「なんだそれ」
七海はコンビニを指さす。
「寄りません?蒼先輩」
蒼は頷いた。
「まあいいけど」
二人はコンビニに入る。
七海は飲み物コーナーの前でしゃがみ込む。
「うーん」
真剣な顔で並んだペットボトルを見ている。
蒼は適当にお茶を手に取った。
「まだ悩んでんのか」
七海は振り向く。
「だって結構大事ですよ」
蒼は笑う。
「飲み物だろ」
七海は少しむっとする。
「蒼先輩、そういうところ雑なんですよ」
結局スポーツドリンクを手に取る。
「よし、これにします」
レジを済ませて外に出る。
夜の空気が少し冷たかった。
七海はペットボトルを開けて一口飲む。
「ふぅ」
蒼はそれを見て笑う。
「満足したか?」
七海は頷く。
「はい」
少し歩いてから七海が言う。
「蒼先輩」
「ん?」
七海はペットボトルを少し差し出した。
「一口飲みます?」
蒼は驚く。
「いやいいよ」
七海はきょとんとする。
「なんでですか?」
蒼は苦笑する。
「お前のだろ」
七海は笑う。
「いいですよ別に」
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しばらく歩くと分かれ道が見えてきた。
七海の家は右。
蒼の家はまっすぐだ。
七海が立ち止まる。
「ここですね」
蒼も足を止めた。
「おう」
七海は軽く手を振る。
「じゃあ」
「また明日、蒼先輩!」
蒼は少し笑う。
「おう」
七海はくるっと背を向けて歩き出す。
数歩歩いてから、少しだけ振り返った。
蒼はもう歩き出している。
その背中を見て、七海は小さく笑う。
(蒼先輩が笑ってくれるなら)
(それだけで、ちょっと嬉しい)
七海は前を向いた。
夜の帰り道を、軽い足取りで歩いていった。




