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蒼色の恋に。  作者: ひろねる


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190/209

189 双子?

黒崎流夜 (くろさきりゅうや)

放課後。

グラウンド。

乾いた打球音と、掛け声が響いている。

蒼はフェンス越しに少しだけ中を見てから、一歩踏み出す。

(……行くか)

そのまま中へ入る。

「宮本さん」

少し離れたところで声をかける。

宮本が振り向く。

「……来たか」

「……はい」

少しだけ間。

「昨日の件なんですけど」

宮本の視線が、まっすぐ向く。

蒼は一度、軽く息を吐く。

「……ここで」

少しだけ言葉を区切る。

「野球をやらせてください」

短く、でもはっきりと言う。

数秒。

沈黙。

宮本は、特に驚いた様子もなく頷く。

「そうか」

「じゃあ今日から来い」

「……はい」

そのとき——

「おー、柏木だぁ」

後ろから軽い声。

振り向く。

長身の男が、ニヤッと笑いながら立っていた。

「……?」

「お前、柏木だろ?」

「あ、はい」

その顔を見て、少しだけ引っかかる。

「……あれ」

「……小夜さん?」

男が一瞬止まる。

「ははっ」

「ちげーよ」

「小夜は俺の双子の姉」

「え、小夜さんって双子だったんですか?」

「そうだよ」

男が笑いながら手を差し出す。

「弟の黒崎流夜」

「よろしくな」

「あ、柏木です」

軽く握手する。

「まあ」

流夜がにやっと笑う。

「お前のことは知ってるけどな」

「え、そうなんですか?」

「俺も姉ちゃんと同じで木商出身なんだよ」

「……あ」

「だからお前とは秋大で当たってる」

「……」

「まあ」

少し肩をすくめる。

「言っても俺は控えだったから」

「直接対戦はしてねーけど」

「……そうなんですね」

「つーかさ」

流夜が少し顔を近づける。

「思ったより普通だな」

「……は?」

「いやなんかもっとこう」

「バチバチ系かと思ってたわ」

「……そんなわけないでしょ」

「ははっ、だよな」

軽く笑う。

その空気を見て——

宮本が一言。

「流夜」

「はーい」

「遊んでねぇでアップ行け」

「はーいキャプテン怖い怖い」

軽く手を振って離れていく。

蒼はその背中を少しだけ見送る。

「……」

「騒がしいやつだろ」

宮本が言う。

「……はい」

少しだけ苦笑する。

「でも」

宮本が続ける。

「実力は本物だ」

「……」

グラウンドを見る。

さっきまでより、少しだけ違って見える。

「とりあえず今日は見とけ」

「明日から入れ」

「……はい」

その一歩が——

確かに、新しいスタートだった。

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