186 二年生
四月。
春の風が、キャンパスを抜けていく。
満開の桜の下、新入生たちの声があちこちで響いていた。
「新入生どうですかー!」
「サークル見学やってます!」
ビラを配る声、人の流れ。
キャンパスは、いつもより騒がしい。
「すげーな」
蒼が周りを見ながら言う。
「毎年こんな感じなんだな」
「まあ一年で一番賑やかかもね」
愛菜が答える。
「俺らのときもこんなんだったっけ?」
三郎が言う。
「いや、こんなだっただろ」
蒼が笑う。
そんな会話をしながら、三人で歩いていると——
「蒼せんぱーい!」
元気な声。
「……お?」
蒼が振り向く。
そこには、両手いっぱいにビラを抱えた七海が立っていた。
「七海か」
蒼が軽く手を上げる。
「おはようございます!」
七海が駆け寄ってくる。
「ようこそ京葉大へ!」
三郎が笑いながら言う。
「ありがとうございます!」
七海も笑顔で返す。
「でももう、サークルとか部活とか……」
少し困ったようにビラを見下ろす。
「勧誘がすごすぎます!」
「まあ最初はそんなもんだよ」
愛菜がくすっと笑う。
「こんなに持たされるんだな」
蒼がビラの束を見る。
「気づいたらこうなってました……」
七海が苦笑する。
「そういえば」
七海がふと思い出したように言う。
「蒼先輩、野球部なんですよね?」
「あー、そうだな」
蒼が軽く頷く。
「どれくらい入ったんですか?」
「んー」
蒼が少し考える。
「20人くらいかな」
「やっぱ多いですね!」
七海が感心したように言う。
「まあでも」
蒼が少し笑う。
「俺もまだ入ったばっかだけどな」
先月。
俺は、京葉大の野球部に入った。
サークルじゃなくて、“ちゃんとした部活”
。
正直、自分でも驚いてる。
(なんで、また真剣に野球やろうと思ったんだろうな)




