185 卒業
「私は……」
「アオとしたいよ?」
空気が、止まる。
蒼は、言葉を失う。
目の前の愛菜は——
真っ赤な顔で、それでも逸らさずに見ている。
「……本気で言ってんの?」
静かに聞く。
「……うん」
小さく、でもはっきりと頷く。
「……」
蒼は少しだけ目を閉じる。
息を吐く。
「……無理してない?」
「してない」
すぐに返す。
「……後悔しない?」
少しだけ間。
「……しないよ」
その言葉に、蒼はゆっくり目を開ける。
「……そっか」
小さく言う。
少しだけ距離を詰める。
「じゃあ……」
「……うん」
もう一度、キスする。
さっきより、少し長く。
手が、触れる。
少しだけ震えているのは——
どっちか分からない。
「……大丈夫?」
小さく聞く。
「……うん」
「ちょっと怖いけど……」
「でも」
「アオだから」
少しだけ間を置いて——
「初めてはアオがいい」
その言葉に、蒼は少しだけ息を止める。
「……」
それから、静かに息を吐く。
「俺も、初めてだし」
「え?」
「だから」
「一緒だな」
「……うん」
少しだけ、緊張がほどける。
部屋は真っ暗。
静かな夜。
言葉は、もうほとんどない。
名前を呼ぶ声。
重なる呼吸。
触れる手。
ぎこちなくて、不器用で。
でも——
確かに、お互いを求めている。
時間が、ゆっくりと流れていく。
やがて——
静けさだけが残る。
薄暗い部屋の中。
二人は、並んで横になっていた。
少しだけ、息が整っていく。
「……愛菜」
「ん?」
「痛くなかった?」
蒼が、少しだけ気まずそうに聞く。
「ちょっとだけね」
愛菜が、小さく笑う。
「……ごめん」
「大丈夫だよ」
少しだけ間。
愛菜が、蒼の方を向く。
「すごくアオを感じれた気がする」
「……」
蒼は一瞬、言葉を失う。
それから——
「……そっか」
小さく返す。
「……ありがと」
愛菜が、もう一度小さく言う。
「……こっちこそ」
蒼も静かに返す。
そのまま、そっともう一度キスをする。
外は、いつの間にか深い夜になっていた。
二人は確かに大人になった




