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蒼色の恋に。  作者: ひろねる


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169/218

168 出発

12月30日の朝。

冷たい空気が、駅前にゆっくりと広がっていた。

吐く息は白く、足元からじんわりと寒さが伝わってくる。

スーツケースを引く音が、静かに響く。

「……さむ」

愛菜が肩をすくめる。

マフラーに顔を少し埋めながら、小さく息を吐く。

「まだこれで寒いって言ってたら、向こう行ったら死ぬぞ」

蒼が少し笑いながら言う。

「いや、さすがにそこまでは言ってないじゃん」

「顔が言ってる」

「言ってないし」

少しだけ頬を膨らませる。

そのやり取りに、蒼は軽く笑う。

「まあ、ちゃんと準備してきたなら大丈夫だろ」

「うん」

少し得意げに頷く。

「カイロも持ったし、手袋もあるし」

「なら安心だな」

軽く頷く。

「寒かったらちゃんと言えよ」

「言うよ」

少しだけ笑う。

「……頼るから」

その一言に、蒼は少しだけ目を細める。

「おう、任せとけ」

自然に返す。

そのまま、改札の方へ歩き出す。

年末の朝。

人はそこまで多くない。

静かな空気の中、二人の足音だけが響く。

「……なんかさ」

愛菜がぽつりと呟く。

「ん?」

「アオの田舎のおばあちゃんち行くの、ちょっと変な感じ」

「なんでだよ」

蒼が少し笑う。

「いや、なんかさ」

少しだけ考える。

「アオの家族のとこ行くって、今までなかったじゃん」

「まあ、そうだな」

軽く頷く。

「でもさ」

蒼が少しだけ続ける。

「そんな構えなくていいと思うぞ」

「ほんとに?」

「うん」

少しだけ柔らかく言う。

「普通に話せばいいし」

「……そっか」

愛菜が少しだけ安心したように頷く。

「でも」

少しだけ笑う。

「おばあちゃんは初めてだけど」

視線を少しだけ上げる。

「アオのお母さんには久しぶりに会うなーって感じ」

「……あー」

蒼も思い出したように頷く。

「高校のとき来てたもんな」

「うん」

少しだけ笑う。

「なんか懐かしい」

「たぶん喜ぶと思うぞ」

「ほんとに?」

「うん」

少しだけ肩をすくめる。

「普通に気に入ってたし」

「……そっか」

愛菜が少しだけ照れる。

少しだけ、間。

静かな空気。

でも——

どこか、心地いい。

「……楽しみ?」

蒼がふと聞く。

「うん」

愛菜はすぐに頷く。

「雪も見たいし」

「やっぱそこか」

少しだけ笑う。

「大事でしょ」

「まあな」

軽く頷く。

「じゃあちゃんと見せてやるよ」

「ほんと?」

「うん」

少しだけ笑う。

「めっちゃ降るときは、ほんとすごいぞ」

「うわ、楽しみ」

目を少しだけ輝かせる。

そのとき——

電車がホームに滑り込んでくる。

ドアが開く音。

「……行くか」

蒼が言う。

「うん」

愛菜も頷く。

二人、並んで乗り込む。

席に座る。

窓の外に、見慣れた景色。

電車が、ゆっくりと動き出す。

「……」

流れていく景色。

少しずつ、遠ざかっていく日常。

「……なんかさ」

愛菜が小さく呟く。

「ほんとに行くんだなって感じ」

「だな」

蒼も頷く。

「まあでも」

少しだけ言葉を続ける。

「たまにはこういうのもいいだろ」

「うん」

愛菜も頷く。

「……一緒だし」

小さく、付け足す。

「……」

蒼は少しだけ笑う。

「だな」

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