164 約束するキス
次の瞬間——
愛菜の目から、堰を切ったように涙が溢れ出す。
「……っ、う……」
ぽろぽろと、止まらない。
「……おい」
蒼が少し困ったように笑う。
「そんなに泣くなよ」
そっと、声をかける。
「……だって」
愛菜は涙を拭いながら、首を振る。
「……だってさ」
うまく言葉にならない。
「……また」
息を吸って。
震えながら、続ける。
「……また蒼の隣にいれるのが」
ぎゅっと、目を閉じる。
「……すごく嬉しくて」
声が、崩れる。
「……っ、ほんとに……」
それ以上、言葉にならない。
蒼は、何も言わない。
ただ——
そのまま、少しだけ距離を詰める。
「……バカだな」
小さく、呟く。
優しい声で。
愛菜は、少しだけ笑う。
泣きながら。
「……うるさい」
鼻をすすりながら返す。
でも——
その表情は、どこか幸せそうだった。
少しだけ、間。
イルミネーションの光が、静かに揺れている。
そのとき——
「……ねー、アオ?」
愛菜が、少しだけ照れたように言う。
「ん?」
蒼が顔を向ける。
愛菜は、少しだけ目を逸らして——
でも、すぐに戻す。
「……今度こそ」
小さく、笑う。
「ちゃんと幸せにしてよね」
その言葉に——
蒼は、ふっと笑う。
「……任せろ」
短く、答える。
そして——
そっと、顔を近づける。
愛菜も、逃げない。
目を閉じる。
静かに、距離が重なる。
二度と終わらない幸せに、
二人は約束するようにキスをした。
⸻
ふと、空から白いものが舞い始める。
「……雪」
愛菜が小さく呟く。
街の光に照らされて、ゆっくりと降りてくる。
静かな夜。
その中で——
二人の止まっていた時間が、また静かに動き始めた




