163 再愛
「……好きだ」
静かに、でもはっきりと。
「愛菜のことが、好きだ」
その言葉が、夜の中に溶けていく。
「……」
愛菜は、すぐには答えない。
ただ——
その目が、揺れている。
「……蒼」
小さく呼ぶ。
「……ほんとに、それでいいの?」
「……え」
「……凛ちゃんは?」
静かに、でも逃げずに聞く。
「もう、いいの?」
「……」
一瞬の間。
でも——
蒼の答えは、迷わなかった。
「……ああ」
短く。
はっきりと。
「ちゃんと終わってる」
「……」
その言葉に、愛菜の目がわずかに揺れる。
「……そっか」
小さく、呟く。
少しだけ、俯く。
「……蒼はさ」
ゆっくりと続ける。
「優しいから」
「私のこと、放っておけないだけでしょ」
「……違う」
即答だった。
「俺が選んだんだよ」
一歩、近づく。
「愛菜を」
「……」
「他の誰でもない」
「俺がいいって思ったのが、愛菜だった」
その言葉が、真っ直ぐ届く。
「……」
「だから」
もう一度、言う。
「ずっと、愛菜の隣にいたい」
沈黙。
そして——
ぽろっと、涙が落ちる。
「……ずるい」
小さく呟く。
「……」
「そんなふうに言われたら」
涙が止まらない。
「……我慢できないじゃん」
一歩、近づく。
「……私だって」
声が震える。
「……ずっと、好きだったよ」
「……」
「今も、変わってない」
涙を拭いながら、少し笑う。
「……花火大会のとき」
小さく、息を吐く。
「ちゃんと、諦めたつもりだったのに」
「……」
「ほんと、バカだよね」
泣きながら、笑う。
「……」
「でも」
顔を上げる。
「……やっぱり」
まっすぐ見て。
「……蒼が、隣にいないと嫌」




