159 決めてこい
夜。
冷たい空気の中、蒼と太陽は並んで歩いていた。
街灯の光が、一定の間隔で足元を照らす。
しばらく、無言。
足音だけが静かに響く。
「……寒いな」
蒼がぽつりと呟く。
「冬だしな」
太陽が軽く返す。
それだけのやり取り。
でも、どこか落ち着く。
「最近さ」
蒼が続ける。
「またちょっと楽しいわ、野球」
「……知ってる」
太陽は少しだけ笑う。
「顔見りゃ分かる」
「そんな出てるか?」
「出てる」
即答。
蒼は少しだけ苦笑する。
「そっか」
短く返す。
また少し、間。
「……クリスマス」
不意に、太陽が口を開く。
蒼は少しだけ視線を向ける。
「行くんだろ」
「……ああ」
短く答える。
「そうか」
太陽が小さく頷く。
それ以上は何も言わない。
でも——
「……ちゃんと決めてこいよ」
ぽつりと、続ける。
「……」
蒼は少しだけ前を向く。
「分かってる」
その声に、迷いはなかった。
少しだけ間。
太陽は横目でその表情を見る。
「……まあ」
軽く息を吐く。
「お前なら大丈夫だろ」
その言葉は、昔と同じだった。
でも——
今は少しだけ意味が違う。
蒼は小さく笑う。
「なんだそれ」
「事実だろ」
「……まあな」
短く返す。
そして——
少しだけ、間を置いて。
「……ありがとな」
ぽつりと、言う。
太陽は少しだけ目を細める。
「今さらかよ」
軽く笑う。
「いいから」
蒼も少しだけ笑う。
それで終わり。
でも——
それで十分だった。
二人は、そのまま歩き続ける。
冬の夜は静かで。
空気は冷たいのに——
どこか、少しだけ軽かった。




