157 12月
放課後。
冬の空気は冷たく、日が落ちるのも早くなっていた。
キャンパスの外。
蒼はポケットに手を入れながら、門の前で立っている。
「……さむ」
白い息が、ゆっくりと消えていく。
「蒼?」
後ろから声がした。
振り返る。
「……愛菜」
「なにしてんの?」
少し不思議そうに近づいてくる。
「いや、ちょっとな」
曖昧に答える。
「今帰り?」
「うん」
愛菜は軽く頷く。
「今日、授業長くてさ」
「そうなのか」
「うん、めっちゃ眠かった」
軽く笑う。
「お前、絶対途中寝てただろ」
「バレた?」
「顔見りゃ分かる」
「ひどっ」
二人で軽く笑う。
自然な空気。
無理のない距離。
「蒼は?」
「俺は自主練してた」
「今日も?」
「ああ」
「ほんと好きだね」
「まあな」
軽く肩をすくめる。
少しだけ間。
風が、静かに吹く。
「……寒くなったね」
愛菜がぽつりと呟く。
「だな」
「もう12月かぁ」
空を見上げる。
「早くね?」
「早い」
蒼も少しだけ上を見る。
「気づいたら年明けてそう」
「それな」
また少し笑う。
(……)
自然と、隣を歩き出す。
どちらからでもなく。
同じタイミングで。
(……こういうの)
ふと、思う。
(やっぱ、いいな)
言葉にはしない。
でも、確かにそこにあった。
「そういえばさ」
愛菜が言う。
「サークルの打ち上げ、どうだったの?」
「ああ、今度ある」
「へぇ」
「来るかって言われた」
「行くの?」
「まあな」
「そっか」
少しだけ頷く。
それだけの会話。
でも——
それで十分だった。
(……)
少しだけ、足を止める。
愛菜も、それに合わせて止まる。
「ん?」
不思議そうに見る。
蒼は少しだけ視線を逸らして——
戻す。
「……なあ」
「なに?」
「クリスマスさ」
その一言で、空気が少しだけ変わる。
「……うん」
愛菜が小さく返す。
「予定、ある?」
静かな声。
でも、はっきりしていた。




