149 冬2
店内は相変わらず静かだった。
レジの前に立った太陽が、軽く商品を置く。
「これ」
「はいよ」
蒼がバーコードを通す。
ピッ、という音が響く。
「珍しいな、こんな時間に」
蒼が何気なく言う。
「まあな」
太陽は短く答える。
「ちょっと話あってさ」
「話?」
「サークルのこと」
蒼は小さく「あー」と頷く。
「もうオフだろ?」
「そうそう」
太陽が続ける。
「だからさ、打ち上げやることになって」
「へぇ」
「来るだろ?」
軽い口調。
いつも通りの誘い方。
「まあ、バイト次第だな」
「終わり何時?」
「22時」
「じゃあそのあと来いよ」
「まあ行けたらな」
いつもの会話。
いつもの距離。
「それとさ」
太陽が続ける。
「その話もしたいし」
「バイト終わったら、ちょっと顔貸してくれ」
「なんだよ急に」
蒼が少しだけ笑う。
「いいから」
太陽も軽く笑う。
「すぐ終わる」
「……分かったよ」
蒼は頷く。
「じゃああとでな」
「ああ」
会計を終え、太陽が袋を持つ。
そのまま、何も言わずに店を出ていく。
ピンポーン
自動ドアが閉まる。
冷たい空気が、一瞬だけ残る。
蒼はそのままレジを整えながら、小さく息を吐いた。
「なんか話って珍しいな」
ぽつりと呟く。
「ですね」
七海が軽く頷く。
「でも太陽先輩って、たまにそういうとこありますよね」
「まあな」
蒼は軽く笑う。
「真面目だし」
「ですね」
それだけの会話。
それ以上でも、それ以下でもない。
店内には、またいつもの静かな時間が戻っていた。




