147 人に相談してる時点で、答えは決まってるんだよ
夕方。
オレンジ色の光が街を包む中、蒼と牧原は並んで歩いていた。
コンビニのバイトへ向かう、いつもの道。
「今日うるさかったな」
牧原が軽く笑う。
「三郎が特に」
「まあ、あいつはいつもあんな感じですけど」
蒼も苦笑する。
少しだけ間。
足音だけが静かに続く。
「……で?」
牧原がぽつりと言う。
「お前、なんか恋愛で悩んでんだろ」
「……え」
一瞬で、心臓が跳ねる。
「いや、別に」
反射的に否定する。
「分かりやす」
牧原が即答する。
「いやほんと違いますって」
「いやいや」
軽く笑う。
「顔に出すぎ」
「……出てます?」
「出てる」
即答。
「お前さ」
牧原が少しだけ視線を前に向ける。
「どうせ」
少し間を置く。
「好きな女にフラれて」
「……」
「元カノのこと、また好きになったとかだろ」
「……は?」
思考が、一瞬止まる。
「え、なんで……」
思わず声が漏れる。
「なんで分かるんすか!?」
「ほらな」
牧原が笑う。
「顔に書いてあんだよ」
「マジかよ……」
蒼は頭をかく。
「いやでも」
少しだけ言葉を探す。
「なんか……よく分かんなくて」
「何が?」
「いや、その……」
言い淀む。
でも、隣にいるのは牧原だ。
「凛のこと、好きだったんですけど」
ぽつりと、出る。
「でも今は……」
少しだけ、言葉が詰まる。
「愛菜と一緒にいると、楽しいし」
「なんか、昔みたいに戻ってる感じもあって」
「……でも」
「それが、どういう気持ちなのか、自分でもよく分かんなくて」
言い終わる。
少しだけ、肩の力が抜ける。
牧原は、少しだけ笑った。
「いやもう決まってんじゃん」
「え?」
「人間ってな」
牧原がゆっくりと言う。
「人に相談してる時点で、答えは決まってんだよ」
「……」
「ただ、それを後押ししてほしいだけ」
足を止めずに、続ける。
「自分で決めてるくせに、確信が欲しいだけなんだよ」
静かな声。
蒼は、何も言えなかった。
(……)
確かに、そうかもしれない。
でも——
「
……いや、でも」
まだ、言い切れない。
牧原は、そんな蒼を見て小さく笑う。
「まあ、いいんじゃねぇの」
「焦んなくても」
「どうせ、お前は分かるタイプだろ」
軽くそう言って、前を向く。
コンビニの明かりが、少しずつ近づいていた。
蒼は、その背中を少しだけ見て——
また、前を向く。
(……)
答えは、まだ口には出さない。
でも——
確かに、そこにあった




