146 昼の学食 続
騒がしい空気のまま、学食の時間は続いていた。
「でさ、結論」
三郎が指を立てる。
「この大学は神」
「雑すぎるだろ」
蒼が即ツッコミ。
「いや事実だって!」
そのとき——
「柏木くん」
優子がふと声をかける。
「ちょっとこれ取ってくれる?」
テーブルの奥にあるトレーを指差す。
「あ、はい」
蒼が立ち上がる。
少し前に身を乗り出す。
その瞬間——
ガタンッ
後ろから誰かがぶつかる。
「うわっ」
バランスを崩した蒼が、そのまま前に倒れ込む。
「きゃっ——」
ドンッ
優子の方に倒れ込む形になる。
一瞬、完全に距離がゼロになる。
「
……」
「
……」
固まる二人。
近い。
めちゃくちゃ近い。
「
……柏木くん?」
優子が小さく言う。
「
……すみません」
蒼、真顔。
そのままゆっくり離れる。
完全沈黙。
そして——
「おい今の」
三郎が立ち上がる。
「100点だろ」
「何がだよ」
「いやいやいや!」
三郎が机を叩く。
「今の完全にラッキーイベントだろ!!」
「違うだろ」
「違わねぇよ!」
「距離やばかったぞ今!」
「近かったな」
牧原が冷静に言う。
「近かったですね」
千尋も頷く。
「お前らうるせぇ」
蒼が呆れる。
「いやいや蒼お前な」
三郎が詰め寄る。
「普通の男なら3日は引きずるぞ今の」
「引きずらねぇよ」
「引きずるって!」
そのとき——
「ふふ」
優子が小さく笑う。
「柏木くん、こういうの慣れてなさそうだもんね」
「慣れる機会ないです」
即答。
「真面目すぎでしょ」
千尋が笑う。
「いやでもさ」
牧原が言う。
「今の対応で分かるわ」
「何がですか」
「モテるやつだわ」
「いや関係ないでしょ」
「あるある」
三郎が頷く。
「こういうやつが一番持ってくんだって」
「持ってかねぇよ」
太陽だけが、少しだけ苦笑していた。
「まあ……らしいけどな」
蒼は小さくため息をつく。
(ほんと、なんなんだよ)
でも、その空気はどこか心地よかった。




