145 昼の学食
昼の学食。
いつも通りのテーブルに、蒼、太陽、三郎の三人が座っていた。
「いやさ、聞いてくれよ」
三郎がいきなり身を乗り出す。
「俺、昨日とんでもないことに気づいた」
「またどうでもいいことだろ」
太陽が即座に切り捨てる。
「いや、今回は違う」
三郎は真顔で言う。
「この大学、可愛い子多すぎる」
「いつも言ってるだろそれ」
蒼が呆れる。
「いやいや、違うって!」
三郎が机を叩く。
「昨日な?キャンパス歩いてたらさ、5人連続で“当たり”だった」
「何がだよ」
「確率おかしいだろ!」
「知らねぇよ」
「これもうさ、大学が仕組んでるって」
「何をだよ」
「なにそれ」
後ろから声がした。
振り返ると、千尋がトレーを持って立っていた。
「大学が可愛い子量産してる説?」
「そうそれ!」
三郎が食いつく。
「いや普通にいるだけでしょ」
千尋が即答する。
「いやいやいや!」
三郎が首を振る。
「絶対偏ってるって!」
「偏ってるのはお前の視点でしょ」
「うわ、冷てぇ」
そのまま千尋が席に座る。
「で?」
千尋が蒼を見る。
「この人はどう思うの?」
「知らねぇよ」
即答。
「興味なさすぎじゃない?」
「いや普通だろ」
「いやいや蒼は違うだろ」
三郎がニヤニヤする。
「なんでだよ」
「いやだって——」
「はいストップ」
太陽が遮る。
「その話は今いらない」
「えー」
「いらない」
そのとき、
「楽しそうじゃん」
ふらっと現れたのは、牧原だった。
「うわ先輩」
三郎が笑う。
「何話してんの?」
「この大学可愛い子多すぎ問題っす」
「それはそうだろ」
牧原が即答する。
「ほらぁ!」
「でもな」
牧原が続ける。
「一番やばいのはな」
少し間を置く。
「バイト先に来る客な」
「うわリアル」
「ガチで可愛い子多いぞ」
「マジすか」
「お前らまだ甘い」
そのとき、
「何の話?」
聞き慣れた声。
振り返ると、優子先生が立っていた。
「うわ先生」
三郎が姿勢を正す。
「可愛い子の話です」
「へぇ」
優子がにこっと笑う。
「じゃあ私も入る?」
「いや入らなくていいです」
太陽が即答。
「なんでよ」
「いやなんとなくです」
「ひどくない?」
「ひどいっす」
三郎が頷く。
「てか先生も自覚あるでしょ」
「何が?」
「可愛い枠ってこと」
「
……」
一瞬沈黙。
「
……まぁ、否定はしないけど」
「うわ強ぇ」
蒼は黙って水を飲む。
(なんなんだこの空間)
「で、柏木くんはどうなの?」
優子が振る。
「何がですか」
「可愛い子」
「興味ないです」
即答。
一瞬、空気が止まる。
「嘘つけ」
三郎。
「嘘だな」
牧原。
「絶対あるでしょ」
千尋。
「
……ないです」
太陽だけが、少しだけ笑っていた。
「まあ、こいつはそういうやつだよ」
「つまんねーなー」
「うるせぇ」
騒がしい声が、学食に広がる。
でも、その空気はどこか心地よかった。




