表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼色の恋に。  作者: ひろねる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

141/153

140 ちゃんと

午後の街。

講義帰りの人で、ほどよく賑わっている。

愛菜は一人で歩きながら、ぼんやりと前を見ていた。

そのとき——

……あれ、愛菜ちゃん?」

聞き慣れた声に、足が止まる。

顔を上げると、そこにいたのは——

……凛ちゃん」

少しだけ、間が空く。

ほんの一瞬だけ、時間が止まったような感覚。

「久しぶりだね」

凛が、少しだけぎこちなく笑う。

……うん」

愛菜も、小さく頷く。

花火大会の夜が、頭をよぎる。

あのときの会話。

あのときの決意。

「今、帰り?」

凛が聞く。

「うん、そんな感じ」

短く答える。

少しだけ沈黙が落ちる。

人の流れの音だけが、周りを通り過ぎていく。

凛が、小さく息を吸った。

……少しだけ、いい?」

その言い方で分かる。

ただの立ち話じゃない。

……うん」

愛菜は頷いた。

近くのカフェ。

二人は向かい合って座っていた。

さっきまでの雑踏が嘘みたいに、静かだった。

何から話せばいいのか分からない。

そんな空気が、しばらく続く。

先に口を開いたのは、愛菜だった。

……蒼から、聞いたよ」

凛の肩が、わずかに揺れる。

「花火の日のこと」

視線を逸らさずに、続ける。

「振ったんだってね」

静かな声。

でも、その奥にあるものは、はっきりしていた。

凛は、何も言わない。

ただ、小さく息を吐く。

……うん」

短く答える。

……私さ」

ゆっくりと、言葉を選ぶように続ける。

「蒼くんのこと、ちゃんと好きだったよ」

(……)

分かってる。

そんなことは。

「でも」

凛の声が、少しだけ震える。

「付き合えないって、思った」

愛菜は、黙って聞いていた。

「それでも、分かってたのに」

凛は、まっすぐ愛菜を見る。

「蒼くんの隣にいるのは」

一瞬の間。

「愛菜ちゃんの方がいいって、思った」

静かに、言い切る。

(……)

愛菜の中で、何かが揺れる。

嬉しいのか。

苦しいのか。

分からない。

ただ一つだけ、はっきりしているのは——

(……それじゃ)

自分が決めたことが、意味を持たなくなる。

……凛ちゃん」

ゆっくりと口を開く。

「それってさ」

少しだけ、言葉を探す。

「私があのとき言ったこと、全部……」

視線を上げる。

「なかったことにするってこと?」

静かな店内に、その言葉だけが落ちる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ