136 あとの余韻
ベンチから、ナインが一斉に飛び出す。
「蒼ーー!!」
「ナイスプレー!!」
ホーム付近に駆け寄る。
太陽も笑いながら近づく。
「おい蒼!」
肩を軽く叩く。
「あんな思いっきり投げて大丈夫だったのかよ」
蒼は少しだけ笑う。
「……あの場面で」
「痛いからって投げねー選択肢はねーよ」
太陽は呆れたように息を吐く。
「……ったく」
⸻
両チームが整列する。
「ありがとうございました!!」
「あーっした!!」
声が重なる。
⸻
試合後。
チームメイトたちが蒼に集まる。
「柏木お前やべーよ!」
「太陽から聞いてたけど半端ねーな!」
「肩大丈夫ならさ、一緒にやろうぜ!」
口々に誘いが飛ぶ。
蒼は苦笑しながら頭をかく。
「……まあ、考えとくよ」
軽く笑う。
⸻
スタンド。
七海と小夜が興奮気味に話していた。
「やばかったですね最後のバックホーム!」
七海が身を乗り出す。
小夜も頷く。
「ほんと」
「蒼くんの全力プレー、久しぶりに見た気がする」
二人の会話は止まらない。
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その隣で̶̶
愛菜は、静かに蒼を見ていた。
(……野球、やってる)
胸の奥から、いろんな感情が溢れてくる。
そして̶̶
ふっと笑う蒼の姿。
(……)
視線が、離れない。
⸻
反対側のスタンド。
凛は、まだグラウンドを見つめていた。
「……」
千尋が声をかける。
「凛?」
返事がない。
もう一度。
「おーい」
ようやく、凛が反応する。
「あ、ごめんね」
少しだけ慌てたように言う。
千尋は笑う。
「そろそろ帰ろっか」
少し間を置いて、続ける。
「蒼くん、すごかったね」
凛は、ゆっくりと頷く。
「……うん」
小さく息を吸って。
「本当に、かっこよかった」
⸻
千尋が何かを言いかける。
「凛、本当に蒼くんのこと̶̶」
その言葉を̶̶
凛が遮る。
「千尋ちゃん」
少しだけ明るい声で。
「お腹空いたー」
「ご飯食べて帰ろー」
⸻
一瞬の間。
千尋は、ふっと微笑む。
「そうだね」
「私もお腹空いたー」
「何食べる?」
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二人はそのまま、歩き出す。
夕方の光の中へ。




