134 歓声
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その中で。
蒼だけが動いていた。
拳を強く握りしめ̶̶
思い切り、突き上げる。
そのまま、一塁へ走り出す。
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次の瞬間̶̶
「うおおおおおおおお!!!」
球場が、爆発した。
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スタンド。
七海は、立ち上がったまま叫んでいた。
「やばいって……!!」
目を輝かせながら。
「蒼先輩、かっこよすぎるって……!」
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小夜は、静かに息を吐く。
その目は、揺れていた。
「……ほんと」
小さく呟く。
「期待、裏切らないね」
でも̶̶
その表情は、どこか柔らかかった。
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愛菜は、その場で立ち尽くしていた。
「……」
言葉が出ない。
ただ̶̶
胸の奥が、強く締め付けられる。
(……やっぱり)
視線が、離れない。
(蒼……)
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反対側のスタンド。
凛は̶̶
一歩も動かず、ただ見ていた。
(……すごい)
その一言すら、声にならない。
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
(……やっぱり)
わずかに、唇を噛む。
目を逸らせない。
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グラウンド。
蒼はダイヤモンドを一周する。
歓声の中。
その表情は̶̶
どこか、晴れていた。
ベンチ。
「……やっぱりすげーな、お前は」
太陽が苦笑しながら言う。
蒼は肩をすくめる。
周りのチームメイトたちも一気にざわつく。
「おい柏木!なんだ今の打球!」
「やばすぎだろマジで!」
「サークルレベルじゃねぇって!」
口々に称賛の声が飛ぶ。
蒼は少しだけ苦笑する。




