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133 セオリー通り
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(……ちょっと早いな)
蒼は小さく息を整える。
(でも、タイミングは分かった)
(スライダー……)
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スタンド。
小夜が小さく呟く。
「……今のであのタイミングで振ったってことは」
「ストレート待ってたのかな」
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(……ワンツー)
蒼はバットを構える。
(俺なら……)
(もう一球、同じコース)
(ただし、ボール半個分外してゾーンへ)
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四球目。
̶̶見送る。
審判の声。
「ボール!」
(……やっぱりな)
狙い通りのコース。
わずかに外れていた。
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五球目。
低め、外。
̶̶ブンッ
空振り。
「ストライク!」
(……フルカウントか)
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スタンド。
小夜が静かに言う。
「今のコースは……ファール打つのがやっとだね」
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(……セオリーなら)
蒼は目を細める。
(やっぱり、同じコース)
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ピッチャーがセットから投げる。
六球目。
ボールが手を離れた瞬間̶̶
(……来た)
蒼の口元が、わずかに歪む。
(セオリー通りなら、な)
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インコース、ストレート。
̶̶カンッッッ!!!
振り抜いた瞬間。
誰も追えない打球速度。
一直線に、ライト方向へ。
打球はそのまま̶̶
スタンドへ突き刺さった。
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「……は?」
誰かの声。
一瞬、球場が静まり返る。
何が起きたのか̶̶
誰も理解できない。




