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131 なんで
二人はそのまま球場の中へ入る。
スタンドへ上がる階段。
観客のざわめきが、少しずつ近づいてくる。
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スタンド。
二人が姿を現した場所は̶̶
グラウンドの反対側。
愛菜たちとは反対の位置だった。
「おー、結構ちゃんとやってるね」
千尋が周りを見渡す。
凛も、ゆっくりとグラウンドへ視線を向ける。
その瞬間̶̶
「……え」
思わず、声が漏れる。
バッターボックス。
そこに立っていたのは̶̶
蒼だった。
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(……なんで)
一瞬、思考が止まる。
胸の奥が、わずかに揺れる。
「……凛?」
千尋が隣で声をかける。
凛は小さく息を吸う。
「……うん」
視線を外さないまま、答える。
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グラウンドでは̶̶
六番、柏木蒼。
チャンスの場面で、打席に立っていた。




