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130 ちょっと覗いてく?
試合は終盤。
八回。
ツーアウト。
スコアは1-0のまま。
静かな緊張が、グラウンドを包んでいた。
「頼むぞ!」
ベンチから声が飛ぶ。
四番、太陽。
ピッチャーが振りかぶる。
̶̶シュッ
打った。
鋭い打球が三遊間を抜けていく。
「抜けた!」
「ナイバッチ!」
一塁ベースを駆け抜ける太陽。
久しぶりのランナー。
ベンチが一気に盛り上がる。
スタンドからも歓声が上がる。
⸻
球場の外。
大学の構内を歩いていた二人が、その歓声に足を止めた。
「……なんかすごい盛り上がってるね」
千尋が少し身を乗り出すように言う。
凛も視線を向ける。
「……うん」
「なんか、試合やってるっぽいね」
どこか他人事のような声。
でも̶̶
耳に残る歓声。
千尋がにやっと笑う。
「ちょっと覗いてく?」
軽いノリ。
凛は少しだけ考える。
「……もしかしてさ」
「太陽くんのサークルじゃない?」
ぽつりと呟く。
千尋が「あー」と納得する。
「ありそう」
凛は小さく頷く。
「ちょっとだけ、見ていこうか」




