126 6番、ファースト 柏木
試合当日。
空は高く、雲ひとつない晴天だった。
グラウンドには、サークル同士の試合とは思えないほどの熱気が漂っている。
ベンチ。
「6番、ファースト 柏木」
軽く呼ばれる名前。
蒼はゆっくりと立ち上がった。
グローブをはめる。
(……久しぶりだな)
グラウンドに立つ感覚。
土の匂い。
スパイクの感触。
全部が、懐かしい。
⸻
スタンドの端。
七海は少し前のめりでグラウンドを見ていた。
「ほんとに出てる……」
隣には、小夜。
腕を組みながら静かに見ている。
「当然でしょ」
小さく呟く。
その視線は、一直線に蒼へ向けられていた。
少し離れた場所には̶̶
三郎の姿。
「マジかよ……蒼、出てんじゃん」
驚いたように笑う。
そして̶̶
愛菜もまた、太陽に誘われてこの試合を観に来ていた。
⸻
試合は序盤。
蒼の第一打席。
「……」
バッターボックスに入る。
静かに構える。
(……サークルの試合、か)
ふと、思う。
軽く流すつもりだった。
適当に打って、終わるはずだった。
でも̶̶
(……)
視線を感じる。
スタンドの方。
七海。
小夜。
そして̶̶
愛菜。
一瞬だけ、視線が交差する。
「……」
小さく息を吐く。
(……ったく)
バットを軽く握り直す。
⸻
ピッチャーが振りかぶる。
投げる。
̶̶シュッ
ボールが来る。
蒼の目が、わずかに変わる。
(……遅い)
一歩、踏み込む。
̶̶カンッ!!!
乾いた音が、グラウンドに響き渡る。
打球は̶̶
一直線に空へ。
「……え?」
七海の声が止まる。
打球は伸びる。
伸びる。
そのまま̶̶
バックスクリーンへ突き刺さった。
「……は?」
一瞬、静寂。
次の瞬間̶̶
「おいマジか!?」
「え、今の何!?」
「ホームラン!?」
ベンチがざわつく。
相手ベンチも立ち上がる。
スタンドが一気に騒がしくなる。




