125 ファンだもん
その数分後。
小夜はソファに座りながら、スマホを手にしていた。
画面に映る名前。
̶̶蒼
少しだけ迷う。
でも̶̶
すぐに、通話ボタンを押した。
コール音。
数秒後。
『……もしもし』
蒼の声。
「夜に悪いね」
落ち着いた声で言う。
『いや、大丈夫っすけど……どうしました?』
少しだけ不思議そうな声。
小夜は軽く息を吐く。
「七海ちゃんから聞いた」
少しだけ間を置く。
「試合、出るんだって?」
『……あー』
蒼が少しだけ言葉を濁す。
「まあ、助っ人で」
軽く答える。
小夜は少しだけ笑う。
「ふーん」
「サークルとはいえ、試合は試合だよ?」
少しだけ、からかうように。
「そういう問題じゃないでしょ」
即座に返す。
少しだけ静かになる。
そして̶̶
「見に行くから」
はっきりと言う。
蒼が一瞬黙る。
『……は?』
素っ頓狂な声。
小夜は少しだけ間を置いて̶̶
「それはそうでしょ」
「私は、野球選手 柏木蒼のファンだもん」
その言葉に̶̶
蒼が一瞬、言葉を詰まらせる。
『いや、そんなお袈裟ですよ』
『本当にただの大学のサークルの試合ですよ?』
少し照れたような声。
小夜は小さく笑う。
「ふふ」
「じゃあ、頑張って」
通話を切る。
⸻
静かな部屋。
スマホを置く。
小夜は少しだけ天井を見上げる。
「……楽しみだな」
ぽつりと呟く。
その目は、どこか期待に満ちていた。




