118 久しぶりかもな
「……は?」
蒼は思わず声を漏らす。
七海は満足そうに笑った。
「ついてきてくださいよー」
そう言って歩き出す。
蒼は少しだけ呆れたように息を吐きながら、その後を追った。
⸻
しばらく歩いた先。
七海が立ち止まる。
「ここです!」
指差した先にあったのは、
様々なスポーツやゲームが楽しめる大型の屋内施設だった。
蒼はそれを見上げる。
「……マジか」
七海は得意げに胸を張る。
「言ったじゃないですか」
「体動かすって!」
「まあ……確かにな」
少しだけ苦笑する。
「じゃあまず̶̶」
七海がくるっと振り返る。
「卓球やりましょ!」
⸻
卓球台の前。
「いきますよー!」
七海がサーブを打つ。
̶̶ポン、ポン
軽快な音が響く。
「うお、意外とうまいな」
蒼が返す。
「でしょー?」
七海は得意げに笑う。
だが̶̶
数分後。
「はい、勝ちー」
蒼がラケットを下ろす。
「えぇー!?」
七海が悔しそうに声を上げる。
「ちょっと待ってくださいよ!」
「本気出しすぎじゃないですか!?」
「いや、普通にやっただけだろ」
蒼は肩をすくめる。
「もっかいです!」
「はいはい」
⸻
その後も数ゲーム続けたが、結果は変わらなかった。
七海はラケットを置いて、頬を膨らませる。
「……強すぎです」
「そりゃどうも」
蒼は軽く笑う。
⸻
「じゃあ次!」
七海はすぐに切り替える。
「バスケやりましょ!」
コートへ向かう。
「ルールは簡単です!」
ボールを抱えながら言う。
「先に3点取った方の勝ち!」
「いいけど」
蒼はボールを受け取る。
「ハンデやるよ」
七海は目を丸くする。
「舐めてます?」
「別に」
軽く構える。
「来いよ」
「……後悔しても知りませんよ!」
七海がドリブルで仕掛ける。
だが̶̶
「遅い」
あっさりと止める。
そのままシュート。
̶̶スパッ
「はい1点」
「ちょっと!」
その後も̶̶
結果はすぐについた。
「……勝ち」
「うそでしょ……」
七海はその場にしゃがみ込む。
「ハンデ意味ないじゃないですか……」
蒼は軽く笑う。
「まあな」
⸻
「じゃあ次は̶̶」
七海は顔を上げる。
「ゲームやりましょ!」
⸻
レースゲーム。
「ちょ、速っ!」
七海が叫ぶ。
「お前遅すぎ」
シューティングゲーム。
「え、なんで当たるんですか!?」
「感覚」
軽口を叩きながらも、
二人は自然と笑っていた。
⸻
その流れで。
「これやりましょ!」
七海が指差したのは、UFOキャッチャー。
中にはぬいぐるみが並んでいる。
「これ可愛い……」
七海が操作する。
ガシャン̶̶
しかし、掴めない。
「あれ?」
もう一回。
ガシャン̶̶
落ちる。
「えぇー……」
何度か挑戦するも、取れない。
「むずい……」
少し悔しそうに呟く。
蒼はその様子を見て、前に出る。
「貸せ」
「え?」
「やってやるよ」
コインを入れる。
操作する。
一回。
惜しい。
「おー」
二回目。
「いけるか……?」
三回目。
̶̶ガシャン
そのまま、落ちる。
「おっ」
景品口に転がる。
七海の目がぱっと輝く。
「えっ!?」
蒼はそれを拾って、差し出す。
「ほら」
「……え、いいんですか?」
「お前が欲しがってただろ」
七海は少しだけ驚いた顔をしてから̶̶
すぐに、満面の笑みになる。
「ありがとうございます!」
大事そうに抱きしめる。
「めっちゃ嬉しいです!」
その様子に、蒼は少しだけ目を細める。
「大げさだな」
「大げさじゃないです!」
本気の声だった。
⸻
「……腹減ったな」
蒼が呟く。
「ですね!」
七海も頷く。
⸻
フードスペース。
二人は並んでホットドッグを手にしていた。
席に座る。
「いただきます!」
「はいはい」
一口かじる。
少しだけ静かな時間。
七海がふっと笑う。
「……すごく楽しいです」
ぽつりと、言う。
蒼は少しだけ視線を向ける。
七海はそのまま続ける。
「こういうの、久しぶりで」
「なんか……いいですね」
少し照れたように笑う。
そして。
「蒼先輩は?」
問いかける。
蒼は少しだけ考えてから。
「……まあまあかな」
軽く答える。
七海はじーっと見る。
「絶対嘘ですよね」
「うるせーな」
そっけなく返す。
でも̶̶
(……なんか)
ふと、思う。
(久しぶりかもな)
こんな風に、何も考えずに笑って。
ただ、楽しいと思える時間。
小さく息を吐く。
(……悪くねぇな)
そう思った。




