表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼色の恋に。  作者: ひろねる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/157

102 始まる前日

その日の夜。

蒼は自分の部屋のベッドに寝転び、天井を見つめていた。

エアコンの静かな音。

外から聞こえる、かすかな虫の声。

部屋の中は、やけに静かだった。

(……花火大会の前に、か)

愛菜の言葉が、頭の中で何度も繰り返される。

̶̶花火大会の前にさ

̶̶少し、時間もらえる?

あのときの声と表情が、やけに強く残っていた。

蒼はゆっくりと目を閉じる。

浮かんでくるのは̶̶

愛菜の顔。

高校のときの記憶。

一緒にいた時間。

楽しかったことも、全部。

(……愛菜は)

そこまで考えて、思考が止まる。

代わりに、別の顔が浮かぶ。

凛。

笑っていた顔。

少し照れたような表情。

海での時間。

砂浜でのやり取り。

「花火大会、行こう」

そう言ったときの、あの嬉しそうな顔。

蒼は小さく息を吐く。

(……なんだよ)

自分でも分かっている。

少しずつ。

確実に。

気持ちが動いていること。

でも̶̶

(……それでいいのかよ)

胸の奥が、わずかにざわつく。

そのとき、ふと別の言葉がよぎる。

̶̶そういうとこだよ

̶̶ちゃんと楽しんできなよ

小夜の声。

軽い調子なのに、妙に引っかかる言葉。

蒼は目を開ける。

天井を見つめたまま、小さく呟く。

「……どうすりゃいいんだよ」

答えは、出ない。

でも̶̶

ひとつだけ、はっきりしていることがある。

逃げられない。

今回だけは。

ちゃんと向き合わなきゃいけない。

蒼はゆっくりと体を起こした。

スマホに手を伸ばす。

画面には、凛とのトーク画面。

少しだけ迷ってから、指を動かす。

『花火大会、楽しみにしてる』

短い一文。

送信ボタンを押す。

すぐに既読がつく。

少しして、返信が来た。

『うん、私も楽しみ』

その一言に、胸が少しだけ温かくなる。

同時に̶̶

どこか、痛む。

蒼はスマホをベッドの横に置いた。

(……ちゃんとしないとな)

小さく息を吐く。

静かな部屋の中で。

その決意だけが、はっきりと残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ