9 帰るね
蒼の部屋で、四人はゴールデンウィークの予定を話し合っていた。
そんな中、三郎がふとにやりと笑って蒼を見る。
「おい蒼。凛ちゃんたちと一緒に行くって、ちょっと嬉しそうじゃね?」
突然の一言に、蒼はわずかに顔を赤くする。
肩をすくめながら答えた。
「別に。大したことじゃないって」
そう言いながらも、胸の奥ではほんの少しだけ嬉しい気持ちが顔に出そうになる。
その様子を見て、愛菜は軽く眉をひそめて三郎を睨んだ。
どうしてそんなことを言うのかと、胸の奥で小さく苛立つ。
横にいた太陽も空気の変化に気づいたのか、わずかに眉をひそめた。
愛菜は何も言わず、机の上で組んでいた手を組み直す。
そして少しだけ唇を噛んでから口を開いた。
「……ふーん、そうなんだ」
蒼は少し困ったように笑う。
「まあ、みんなで行くんだしさ。普通に楽しもうぜ」
三郎はそんな空気など気にせず、楽しそうに茶化した。
「おーっと、見ろよ。蒼、ちょっと困ってるじゃん」
蒼は苦笑しながら視線を逸らす。
胸の奥には、やっぱり少しだけ嬉しい気持ちが残っていた。
その後、話を元に戻し、四人は再びゴールデンウィークの予定について話し合う。
海や遊園地、ショッピングなどの案を一通り出したあと、最終的に「バーベキュー」に決まった。
「じゃあ、場所は河原でいいか? 火起こしとかもあるし、みんなで手分けしてやろう」
三郎が提案する。
「うん、それ楽しそう」
蒼が答え、太陽も頷く。
「いいね。天気が良ければ最高だ」
その時だった。
三郎がふと思い出したように笑いながら言う。
「おい蒼、やっぱり凛ちゃんたちと一緒って、ちょっと嬉しいんじゃねーの?」
蒼は肩をすくめ、少し赤くなる。
「いや、別にそんなことは……てか、お前しつこいな」
その瞬間、愛菜が立ち上がった。
「……ちょっと、私帰るね」
それだけ言うと、そのまま部屋を出ていく。
「愛菜!」
太陽がすぐに立ち上がった。
「待てよ!」
そう言って、愛菜の後を追うように部屋を出ていった。
部屋には、蒼と三郎だけが残された。




