消えた記憶と愛する人の嘘 48 【甘い尋問】
ソファーにもたれかかりながら電話を切って4時ごろ来るのかぁ、っと考えていると、次の瞬間、まいがすぐに隣に座り込み、そのまま俺に抱きついてきた。
「ねぇねぇ、友達なんて言ってたの?」
興味津々といった様子で、まいは俺の顔を覗き込んでくる。
その瞳は好奇心に満ちていて、まるで子供みたいにキラキラと輝いていた。
「別に」
俺は何事もなかったようにそっけなく返す。
すると、まいはすぐに俺の両頬を小さな手で挟み込み、無理やり顔をこっちに向かせた。
「んー? 何よそれ、怪しい!」
笑いながら目を細め、俺の顔をじっと見つめる。
そして、にやっと笑ったかと思うと、軽く唇を尖らせながら、まるで詰問するように言い始めた。
「正直に話したら許してあげる! で? どうせ、まいのこと可愛いって言ってたんでしょ? それとも……“美人な奥さん” とか?」
まいはニヤニヤしながら問い詰めてくる。
「いや、何も言ってません」
俺が淡々と答えると、まいは少し不満そうに眉をひそめ、さらに俺の顔を近づけるようにして、じーっと目を覗き込んできた。
「ほんとにぃ?」
「ほんとに」
「じゃあ……もう帰る?」
「……は?」
俺が困惑していると、まいは腕を組んでふんっとそっぽを向いた。
「だって、謙が話してくれないなら、まいもう帰るもん」
「いやいや、いきなり拗ねるなって」
「だって気になるんだもん」
どうやら、まいの尋問はまだ終わる気配がないらしい。
「ほら、早く言いなさい」
「……しつこいな」
仕方なく、俺は観念して肩をすくめた。
「はい、白状しますから勘弁してください」
「よろしい」
満足そうに微笑むまい。
けれど、俺が次の言葉を口にする前に、彼女はすかさずせがんできた。
「で? なんて言ってたの?」
「……もううるさい口だな」
俺はまいの頭を両手で優しく包み込み、ゆっくりと引き寄せる。
「えっ?」
まいが一瞬驚いたように目を見開く。
そして次の瞬間――
俺はそのまま、まいの唇を唇で塞いだ。
まいは最初こそ驚いたように固まっていたが、やがて目を閉じ、ゆっくりと俺の動きに応えるように身を預けてくる。
ソファーの上、静かな部屋の中で、しばらくの間、甘い時間が流れた。
まいの手がそっと俺のシャツを掴む。
その小さな指が少し震えているのを感じて、俺は優しく抱きしめた。
唇が離れると、まいはほんのり頬を赤らめ、少し潤んだ瞳で俺を見つめていた。
「……ずるい」
小さく呟くまい。
「そんな手があったなんて」
「しつこかったから、黙らせるしかなかったんだよ」
「むぅ……」
まいは唇を尖らせてみせるが、その顔はどこか嬉しそうだった。
俺はそっとまいの髪を撫でながら、優しく微笑んだ。




