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ブライト・ジュエル 上

ロリすら男女逆転モノをインジ先生にお願いしたら、こんなのを書いてくれました。

 闇を切り裂き駆ける二つの影、難攻不落、捕縛不可能、不可侵にして不防の怪盗ブライト・ジュエル。その美貌が噂の口に上ることはあっても素顔を見たものはいない。


「お城って、どうしてこう無駄に広いかねえ。」

 モップ掛けの手液を止めてスラ子がぼやく。

「口じゃなくて手を動かしてくださいね。」

 にこやかな表情とモップを繰るリズムを崩さないのは美しいハーフエルフ。

 たゆたゆと色っぽく揺れるスライムと、金髪金眼の美貌をみすぼらしい身なりに隠したヤヲ子、この二人が巷を騒がせている美人怪盗ブライト・ジュエルだなどと誰が思うであろう。

 二人は現在、このエメラルド城にあるという王家の秘宝を探るために下働きの女として潜入中だ。

「だって、お宝は見つからないし、掃除はきりが無いし……」

「しいっ!」

 廊下の向こうからこっちを見ている銀髪の少年に気づいたヤヲ子がスライムを制する。

「また出た。」

 僅かに十を越えたばかりと思しきこの美少年、ユリヲにスラ子は何故か懐かれている。

「うかつに餌付けなんかするからですよ。」

「だって、お腹へってそうだったし……」

 ユリヲが柔らかい体をきゅうっと掴む。

「今日はどうしたの。」

「夢、怖い。」

「しょうがないなあ。」

 小さな少年を抱き上げるスラ子の無防備さにヤヲ子が眉をひそめる。

「また! そんな怪しい子に構うのはお止めなさい。」

 高位を表す仕立てのいい服、血統のよさを感じさせる高貴な美貌にもかかわらず。彼の素性は城のどの記録にも無い。

「だって、そんな悪い子には見えないもの。」

「怪しい、無い。」

 ユリヲは廊下にかけられた王族の肖像の末席、この国の第三王子である青年の絵を指した。

「ああ、素敵な王子様よね。」

 絵姿だけでも眼福だ。月光のように冴えた銀の髪、華奢に締まった骨格、ばら色の唇……

「そういえばあんた、似てるわねえ。隠し子?」

「隠し子、無い。ユリヲ。」

「はいはい。あんたもこの位いい男になったら相手してあげるわよ。」

「約束。」

「ばかねえ、そのころ私はおばちゃんよ。」

 不意打ちのように、ユリヲが柔らかい体に口付ける。

「何すんの!」

「約束、キス。」

「そうじゃなくて、あんた今どこにキスしたか解ってんの?」

「解る、無い。」

 ふくふくとした頬を真っ赤にしてぷいっと顔をそむける様は「解っている」と言っているも同然だ。

「約束、きっと!」

 パタパタと子供らしい足音を響かせて去る背中を、スラ子はぽかんと口を開けて見送っていた。

「何まんざらでもない顔してるんですか。」

「ヤヲ子っ! 私、ショタじゃないからっ!」

「はいはい。で、どうするんですか? このままずっと女中暮らし?」

「そんなの、ブライト・ジュエル様のプライドが許さないわ。」

 スラ子がぶよりと体を起こす。ぷるぷると体を揺らしながら形を変える。

 引き締まった肢体、流れるような黒髪、そしてスライムのように弾力あふれる胸……絶世の美女がそこにいた。

「色仕掛けですか、ワンパターンですね。」

「だって、これが一番手っ取り早いじゃない?」

「いいんですか、あの少年は。」

「ゆゆゆユリヲがなんだって言うのよ。」

「好きなんでしょう?」

「ショタじゃないって言ったのが解んなかったのかなあ? そりゃあユリヲは顔も可愛いし? 男ぶろうとしてヘタれるのも可愛いし、私を守ろうとする優しさも可愛いし、後は……」

「ベタぼれじゃないですか。」

「でも、犯罪領域ショタだもん。」

「へんなところで道徳心が強いんですね。」

「もう良いでしょ。行ってくるから。」

 スラ子は身軽に窓から飛び出した。夜空には欠け落ちる前の薄い月が刃のように光っている。

 階下は警備兵の仮眠室。その窓の一つにスラ子はひょいと飛び込んだ。

 都合のいいことに、いくつかあるベッドは一つしか使われていない。スラ子は一番奥で布団にくるまれている人影にそっと近づく。

「こんばんは。美女はいりませんか~。」

 小声でおどけただけだったのだが粗末な布団はばっと跳ね上がり、気が付けばスラ子はベッドに押し倒されていた。

「第三王子……?」

 自分を組み敷き、熱っぽい視線で見つめている男は肖像画の……いや、肖像画なんかよりも数倍美しい。銀髪が暗いほどの月光に透けて白く輝いている。

 だが形良い唇が耳慣れた声をこぼしたことにスラ子は驚嘆した。

「スラ子、約束。」

「ユっ! ……んぐっ。」

 驚きの声を唇が塞ぐ。

「声、大きい。人、来る。」

「今はスライムじゃないのに、どうして私だって解ったの?」

「愛。」

「それに、その姿は?」

「愛。」

「どうしてここに?」

「愛。」

「ふざけてないで、ちゃんと答えなさいよ!」

「色仕掛け。情報、エッチ、引き換え。」

 ユリヲがスラ子の耳朶に歯を立てて囁いた。

「本当、姿。」

「ええっ! だって、スライムだし……今なら巨乳よ。」

「スラ子、本当、愛する、希望。」

「ん! 耳朶液に息、かけないで。」

 こらえきれずに美女の形が崩れる。

「スラ子、可愛い。」

「あんたって変わってるわね、ユリヲ。」

 それでも伸ばされた腕液はユリヲの肩を抱き寄せた。

(ユリヲ、私の可愛いユリヲ……今だけは……私だけのユリヲ……)

 薄氷の月が静かに照らす中、二人の影はもつれるように溶け合い……


――R‐18 規制中――



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