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八 復元
最後の三日間、慎平はほとんど眠らなかった。
地下二階で、壊れた記録を、一行ずつ、もとに戻した。桐生の事務所から流れた書類のバックアップ。改竄前の元データの断片。破棄されたはずのログ。
消された時間を、取り戻していく作業。それは、彼が二十年やってきた、いちばん泥臭くて、いちばん誰にも感謝されない仕事だった。
最後のファイルが開いた瞬間、画面に、改竄前の融資申請書が現れた。作成者は桐生。作成日時は、津田が殺される半月前。そこに、津田が桐生に送ったメールの復元ログが重なる。
〈この名義の女は、本人が知らないはずだ。先生、どういうことですか〉
それが、津田の最後の疑問だった。
慎平は、証拠一式を匿名で、警察署の窓口に届けた。差出人の名前は書かなかった。九条慎平という名前は、世間に知られるには、あまりにも小さい。それでよかった。
一週間後、朝のニュースが、桐生の逮捕を伝えた。




