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三 下書きフォルダ
翌週、慎平は会社の倉庫に眠っていた型落ちのタブレットを、こっそり持ち出した。
メッセージアプリは使わせられない。スマホを持てず、外に出ることも、誰かに見張られているらしい彼女に必要なのは、痕跡の残らない通信だった。
慎平が考えたのは、使い捨てのアカウントで共有するクラウドメモだった。
「送信」はしない。片方が下書きに文章を書き、保存する。もう片方が開いて読み、その下に返事を書く。通信ログは残らない。誰にも「送られた」ことがない手紙。
玄関のドアの隙間に、タブレットと手書きのメモを差し込んだ。
〈怪しい者ではありません。向かいに住んでいる者です。窓の光を見ました。もし助けが必要なら、これを使ってください。使い方は裏に〉
三日間、何も起きなかった。
四日目の夜、下書きフォルダに、一行だけの文字が増えていた。
〈ありがとうございます。神崎といいます〉
慎平の指は、画面の上で震えた。




