クズニート魔法令嬢のアギ様は今日もダメ人間とのこと
登場人物紹介
浅利淀
日本どころか銀河系出身者初の超能力を開発するアビリスター最強格のステップ9。17歳で元メイド。
フリミド・ピラーセル
ステップ9としても年齢でも淀より少し先輩にあたる白髪の超美形高校生。
私の新しい住処であるイカレタヤカタの居間にて、ピラーセル君はとりあえずお茶を出してくれた。そしてとある少年を紹介された。
自己紹介をしたのは私とほぼ同い年であろう茶髪で活動的な服装の男の子。
「俺の名前はロル・フランイ、一応お前と同じステップ9の一人で能力名はマスターブレイカー。まあマスブレイカと略してもいいけどな」
「浅利淀。能力名はサイクロンスプリーム。よろしくお願いします。」
「別に敬語はいらないよ。ステップ9歴はともかく一応サイスプリムの方が年上なんだろ?それになんていうか同じ屋根で暮らすなら尚更敬語使われるのも気まずいし。」
「わかったわ。ロル君。なら私からもお願いがあるの。サイスプリムじゃなくて淀って呼んでほしいな」
「わかったよ。よろしくな。淀」
ロル君もピラーセル君同様、ステップ9の中では常識人の部類のようだ。
「君はステップ9だから尚更事前にいろいろ教えておきたいな。僕たちはもともとアビリスターSETの仲間でもあるんだよ。」
「SET?」
「Special Engineering Team、特別工務隊の略称。ようするにこの星の治安を維持するために生務会とも警察とも別に活動する組織。例えば危険な能力者や麻薬や危険な兵器の密売の取り締まりとかね。」
「そんなの、普通学生がやるような仕事じゃないでしょ?」
「むしろアビリスターの高能力者やそれ顔負けの一芸の天才だからこそ穏便な形で済むんだよ。まあ毒には毒を、ってやつ」
「大変そうだね‥‥」
「淀。気もその毒だってこと忘れないでね。間違いなく君の星の歴史上もっとも多くの命を奪える人間だからね」
それをいわれると私は思わず唾を飲み込んでしまう。
「僕はちょっと学校の課題まとめなきゃいけないから、またあとでね」
ピラーセリ君が自室に戻ってからロル君と雑談ししばらく経ったのち
「もしかして貴女が新しいステップ9さんですか?」
まず声をかけてくれたのは私とほぼ同い年であろう水色髪で執事服を着た中性的な容姿の少年……なのかな。
「はい。初めまして浅利淀と申します。能力名は一応は略してサイスプリムというらしいですか」
次が金髪ストレートのお人形さんみたいな雰囲気の小学校高学年ぐらいのとてもかわいい女の子
「まあかなりかわいい部類なんじゃないか?母星での評価はどうか知らないけど」
「初めまして。この館の主人である。セントカクラアギとその執事ゲンヨウコウレです」
「セントカクラ家ってもしかしてあの‥‥」
私はアビリスターに来る前に聞き齧り程度にはアビリスターとその対抗勢力である魔法界にについて調べたのでセントカクラという言葉は聞いたことはある。魔法界での超大物である大司族のなかでも一際最強と言われるセントカクラ家。魔法界どころか宇宙中の政財界にも多大な影響力を持っているのだそう。もちろん私が知らないだけで案外アビリスターならよくある苗字かもしれないけど執事がついてるということはひょっとして‥
「アギは当主ヌルタイジの孫娘ですよ」
やっぱり……。にしてもチドリ君はアギの執事でありながら呼び捨てにしてるのが気になる。
「まああのクソジジイとはほぼ絶縁状態で今現在は相続権も失ってるけどな」
「だから魔術師のクセに隠居所的にアビリスターのこのアパートに住んでるというわけ。まあどこにいてもどうせ引きこもりのクズニートなのは変わらないけど」
「相変わらず元夫婦なのに冷たいですね。言ってることは正論ですが」
「えっ夫婦?」
思わず彼らの日常会話に割り込んでしまう。年頃の同年代の男女が元夫婦なんて聞いて反応しない年頃の女の子はいるだろうか、いやない
「まあ私が4歳、マスブレ殿が7歳の時だが」
「えええええー!?」
私は思わずギャグ漫画なら屋根が外れかねないほどの大声をだしてしまう。そりゃあ地球と常識が違うのはわかるけどあからさまにさらっと流されると尚更驚いてしまう。
「まあもともとマスブレ殿の育脳を担当する研究者と私の両親が勝手に決めたことだけどな。」
「ひょっとして政略結婚とかそういうのですか?」
まあセントカクラ家ほどの名家ならむしろ普通かな。ロル君もステップ9としては私よりかなりの先輩らしいし。
「ガハハ、違う違う。結婚を通してお互いを後ろ盾にしあうとか、それを使ってお互いの政治的影響力を高めようとするとかそういう名家の政略染みたことじゃなくてアギの両親がはまったのは政略結婚ごっこだ」
「ごっこって‥‥」
「アビリスター側はセントカクラ家の結納金で豪遊、私の両親や側近の方はステップ9の義両親ということを免税付にしたバカ遊びやって終わった」
「平和的というべきですかね」
「バカ遊びって‥‥」
「アビリスターの内で疑似商店街を作って店屋さんごっこをしたりわざと猛獣を放し飼いにしての軍人ごっことかだよ。ちなみに双方のバカ遊びの費用はおそらく一人あたりの平均でもヨドの星のかなりの人間の年収に相当するだろうね」
「あと孤児の女の子とかに裸踊りをさせたりと」
とても近代的な超能力者の星と格式のある魔術界の話とは思えない
「裸踊りって‥‥流石に下着か水着姿ですよね?」
性に対してはもともとこちらの方が寛容とはよく聞くけど…
「‥おそらく貴女が予想し得る最悪のことやってのけてます。ですがこの作品はR18ではないので割愛させていただきます」
「…なんかごめんなさい」
「いいんだよ。私の両親がおかしいんだから。それと私やコウレにも敬語は不要だ。私よりはもちろんコウレよりも年上だろ?」
「わかった。よろしくねアギちゃん、コウレ君」
「まあ気を取り直して!イカレタヤカタの新しい住人の歓迎会をぜひやろうではないか!私が手塩をかけてアギスペシャルを作ろう。きっと天にも昇る気分になれるぞ!」
「本当に昇天してしまうのでアギは黙って原稿書いててくださいよ。もうすぐ締切でしょう?」
「原稿ってアギちゃん創作の趣味なんてあるのね」
「違う違う。単なる趣味じゃなくて、ちゃんとした雑誌で連鎖してるプロだぞ!」
といってセンラアクギという作者による漫画を見せられる。実際チラ見したが明らかに面白い。縁故採用ならぬ縁故連載と呼べるものではないことは素人でもわかる。
「これアギちゃんのペンネームなの?」
「もちのろんだ」
「こいつは幼い頃から漫画、というよりは創作の天才なんだよ。漫画だけでなく小説家やイラストレーター素質もある。それだけでオクスタンを飛級できるぐらい」
オクスタンは特別な才能を持つ生徒には飛び級制度が存在するの知ってる。いくらセントカクラ家のお嬢様とはいえアビリスターの正規の能力者ですらないアギちゃんが飛び級できるのはその漫画の才能がよほど優れてるのだろう。
「それ以外でも基本は超万能な美少女だぞ。」
「魔術の才能どころか早寝早起きもできない怠惰で不登校でオタクでクズニートの万能美少女なんているわけないでしょう」
「あと勉強もダメ、スポーツもダメ。ボードゲームどころかジャンケンやトランプですらコウレやミンネどころか俺にすら勝ったことがない」
「あと当然のように金銭感覚も非常識ですし自分のサブカルチャー関係以外は一般常識も皆無、なのに社交パーティーみたいなことはろくにできませんよね。なのに無駄に負けず嫌いですし」
このセリフいったのはいつのまにか私たちのそばにいたメイドさん。彼女がミンネさんかな。正直私とは同じメイドでも月とスッポンな相当な茶髪の美人。少しロル君に似てる。
まあ話を聞く限り容姿は静香ちゃん並み、能力はのび太君未満、性格はスネ夫・ジャイアン未満、苦手への耐性は青ダヌキ未満らしい。
「あと運動神経どころか体力も皆無ですし体型も年相応に考えても残念な部類ですし…ゲフ」
言い終わる前にコウレ君はアギちゃんの魔術で壁に突き飛ばされていた。これは流石にコウレ君が悪い。私がいうのもアレだけど実際は年齢を考えてもアギちゃんは身長も女性としての丸みの面でもかなり残念な部類ではある。しかし前述通り総合的な容姿は充分可愛い。地球の男の子からなら一目惚れされてもおかしくない。
「とりあえず締切はもう大丈夫さ。ってことで今夜は私が料理を奮うからな。既に食材も買い込んである。」
「お願いですからやめてくださいアギお嬢様。料理なら僕とミンネさんが腕によりをかけたものを作りますから」
やはり彼女がミンネさんらしい。
「そうですよ。アギお嬢様はあくまでもここの家主ですし」
「コウレが私を呼ぶのにお嬢様をつけるのはなにか良からぬことから逃げるときだよなおい」
私はロル君に耳打ちで質問する。
「‥‥アギちゃんってそんなに料理下手なの?」
「まあそれこそ死人が出るレベルに。でもアギ自身はその自覚ないしタチが悪いのはこいつの魔術はこういう時だけはわりと冴えるんだよ。足止めしたり捕獲して無理矢理食べさせることもできる。まともな戦闘ではゴミだけどな」
「‥‥」
「気にするな。こいつはただ料理は下手だし掃除も下手だし生活能力も皆無で性格も最悪なだけなんだ」
「‥‥」
「そんなに私の料理が食べたくないのか?」
「原稿終わったなら尚更休んでてくださいませ」
「いつもは勉強しろとかいうクセに‥」
「あの。だったらこの際私が料理作ろうか?一応同居人になることを(歓迎)するわけですから私が作っても矛盾はないよね?」
私は3人の会話に割り込む。
「「「えっ」」」
「私も一応母星では幼少期からメイドやってから簡単なものでよければ」
本来なら遠慮すべき立場の使用人の方々は少なくともアギちゃんよりはマシだと直感したのか
「ぜひお願いします」
一気に顔が明るくなる
「なあ。ヨド。本当にいいのか?」
「まあ地球のレシピが口に合うかわからないけど」
「ぜひお願いします。僕一度地球料理食べてみたかったんです!」
「地球って星自体ヨドとの出会いで初めて(うが)」
「私もです!」
「俺も!」
まあこうして私はこのヤカタの住民に料理を振る舞うことになった。




