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一人よりも家族全員を殺害する強盗殺人犯のほうが民度高いよね

登場人物紹介

浅利淀 

一大寺家のメイドで当作の主人公(多分)。本人はモテないと思ってる。実際は多くの男から好意を寄せられているがラブレターや告白などは全て行成によってもみ消されている


一大寺行成

淀の主人で今では一応恋人。探偵卿としての事件解決への意欲と淀への愛はとにかく重い。


「今から素養チェックを行います」

間違いなく自分の人生最大の転機と言える新天地に踏み入れたのは行成と付き合うようになってから数週間後だった。宇宙でもトップクラスの科学文明を持つ星・アビリスターへの留学資格である超能力の素質チェックが行われたのである。アビリスターは宇宙中から留学生が集まる超能力者の街である。その超能力は体や頭に電極を打ち込み超能力を開発するものらしい。素質チェックは文字通りその素質をチェックするためのものである。私はもちろん「どうせ素質ないだろう」と思ってたし能力者なんて興味なかった。異世界転生系のラノベとかそういう趣味もなかった。だが、結果は予想外だった。私の能力者としての素質は「非常に優秀」と判定され、留学許可が下りたのである。許可が下りた途端、なぜか無性に能力者になりたいという気持ちが強くなり、私は留学を希望した。当然、行成は猛反対した。

「はあ、留学?お前そういうのに興味ないはずだろ?」

それに猛反対した。

「実際才能あると言われると誰だって乗ってみたくなるわよ。それにメイドなら代わりの人も紹介したでしょ?そもそもやめてと言ったのを行成でしょ?」

「バーカ。代わりなんてどうでもいいわ。」

「それにアビリスターは超能力だけの街じゃないわ。教育などに関しても宇宙最先端。だからこそ短期でもいいから留学して私の武道を進化させたいのよ」

「……たまに連絡ぐらいはくれよな…まあくれなければこっちが押しかけてくるからな」

私の両親についても

「…あそこってめちゃくちゃヤバい街じゃないのか?」

「ここだって充分ヤバい街じゃん。アビリスターの犯罪者のほうが人道的な一面だってあるわよ。例えばこの街の強盗殺人犯は自分の顔を見た相手しか殺さないけど、アビリスターの強盗殺人犯はその家の家族全員をいっしょにしてあげるって評判よ」

私は反対意見をなにかに誘われるままに完全に押し切る。自分の運命に飛び乗ったとでもいうのが正解なのかもしれない。私がアビリスターにいくという話は意外にも私のクラスメイトにも注目された。「全国の小学生〜高校生から一学校数人程度」を見込んでるという話はよく聞くがよりによってそれが淀だとは思わなかったなんて反応。なぜか私の転校をものすごく残念がってる男子の顔も印象に残ってる。人によってはなぜか私を呼び出そうしてるけど行成さんが来るとすぐに撤回してしまう。変なの。そして、意味深な会話も耳にした。

「どうせ行成の嫁じゃん」

「女子はこれからチャンスじゃん?」

「ムリムリ。あいつ浅利以外にはマジで興味0じゃん」


地球からアビリスターへはワープを繰り返しても12時間ほどかかる。しかしフェリー形状の宇宙船なので三等個室でも意外と快適である。景色自体はワープを繰り返すのでほとんど楽しめないけど食堂やゲームセンター、温泉などは充実してるのはそこそこ非日常を楽しめた。


現地で即開発を受けたがその結果

なんと私は12人目のステップ9。能力の正式名はサイクロンスプリームで空気などをコントロールできる。自分自身を風にする形で飛行も可能らしい。能力名の由来は必殺技の名称らしい。ステップ9とはアビリスターの頂点能力者。地球レベルの星なら並の軍隊と戦えて真面目に暴れれば並の大企業を潰せる被害額を出せるほどの力。それに自分がなったと言われてもまったく実感が沸かない。当然何度か能力についての実演もやらされた。専門施設内で専用の怪物体と戦わせられもした。

「いっけえー! これでとどめよ!」

武道有段者である私は、能力を飛行や加速に使い、飛び蹴りやパンチを織り交ぜて戦った。研究者曰く「相当な強さ」とのことだった。どうやらいかにも偉そうな研究者がいうには相当な強さとのこと。とりあえず学校はオクスタン高に決まったようだ。聞いたことはある。アビリスターでも特に金持ちの子女や特殊な能力者、あるいは一芸の天才などが通うエリート校。当然私は特待生扱いとのこと。どういう学園生活になるのかな。もともと素質チェックをした時点で確定だったのか制服などの支給などは学校先を聞いてから即日だった。その後研究所の関係者からステップ9で案内役だという少年を紹介された。彼もオクスタン高の生徒らしい。もちろん留学生一人一人に案内役がつくなんて本来あり得ないはずだが私の場合はステップ9だから特別らしい。どうやら私の案内役というより監視役らしい。

ステップ9というのはアビリスター、いや宇宙中の天才の頂点であると同時に人格破綻者の頂点として有名である。まあ私自身がその1人なのになにそんな客観的なことを考えてんだろ。どちらにせよ好奇心を誘う存在である。能力の凄さをみてみたいとか頂点の天才に対して憧れるとかそういう意味ではなくどんな感じにぶっ飛んでるのかなという下世話な興味。地球で例えれば不祥事をやらかした芸能人とか家柄か知名度だけで実績は伴わない政治家とかに近いのかもしれない。

「彼女が本日付けでステップ9になったサイクロンスプリーム、サイスプリム・浅利淀だ」

サイクロンスプリームが能力の正式名称でサイスプリムはその略称。高ステップの能力者同士は相当親しくない限り能力の略称で呼び合うのがデフォルトらしい。

「僕が案内役のフリミド・ピラーセル。能力はストレンジ・テレキネシス。一応よろしく‥でどこいきたい?」

白髪で髪型は中性的、何より徹底的な特徴として一言でまとめるとかなりの美形。地球だったらホスト、いや新進気鋭のアイドルかタレントと言われても通用するだろう。彼は少し私の顔をみた途端緊張してる様子も見せた

「とりあえず適当にオクスタン高の周辺あたりを散策したいです」

なに考えてるかわからない感じだしとりあえず敬語を使う。

「敬語はいらないよ。変に気を使いたくないし。よろしくねサイスプリム」

わりと気さくそうですぐ馴染めそうな感じの男性だと思う。

「えっと……できればサイスプリムってのやめてくれるかな?」

「えっ?略称としてはカッコいいと思うけど略さない方が好み?」

私は自分の正直な気持ちを述べる。

「高ステップの能力者同士は、親しくない限り能力名で呼び合うって知ってる。でも、ピラーセル君とは普通の友人になれそうな気がしたから……」

それをいうと彼は意外そうな顔をみせた。

少し間が空いてから彼は微笑み

「わかったよろしくね。淀」

「ありがとね。よろしくピラーセル君」

当地の写真などはもちろん地球のネットでも死ぬほど出回ってるが現地を散策してると日本どころか地球、いや銀河系ですらないのに町並みはわりと明治〜昭和の東京に似ているのに気づく。むしろ私の故郷のほうがより近代的な都市景観だと思う。しかし実際は流石科学の殿堂。旧態的な外観だが中身はかつての東京とは似ても似つかないほどハイテク。多層建ての建物は少ないがそれは森林や山岳地帯などを差し引いても明らかに人口密度も低いかららしい。


「で幼少の頃からメイドで…」

ピラーセル君と軽い雑談をしてみると掴みどころがなく飄々とした性格。おどけた軽口や芝居がかった仕草を絶やさない。世間一般で言えばかなりの変わり者だけど他のステップ9よりははるかに良識的な面を持ってると思う。頭脳明晰かつ理知的な一面を覗かせる雰囲気は行成にも似てる。でも彼にはない「闇」のようなものを感じた。

「まともな実家があるだけ羨ましいよ。僕なんて両親が早くになくなってて幼少期ほとんど浮浪者だった。闇バイトやってて強盗に入った先がアビリスター関係者の実家だったのが俺の運命を変えたんだよ」

なるほど、その闇の正体はここか。同じように美形だけど髪の色だけなく境遇も行成と正反対の少年だった。

どちらにせよ私達2人はいっしょに散策してるわけだが正直あんな美形の隣が私みたいな平凡な容姿の子でいいのだろうか。なんだか居心地が悪い。一応同年代の男女2人なので傍目でみたら容姿レベル格差カップルのデートに見えなくもないかも。少なくとも性別が逆だったら今ごろ私は回りの男から強烈なヘイトに満ちた視線を浴びてたに違いない。どちらにせよ普通の学生としての課外授業感覚で案外楽しい時代を過ごせた。

彼は一応私の監視役なだけあってなにかをどこかに報告してるようなそぶりも見せた。

「はい。まあそういうことで…イカレタヤカタですか…」

彼は電話を切ると私になにかを告げる

「君の入居先はイカレタヤカタだ。一応僕も住んでるんだ」

そう言って彼は私の新しい住居への道案内を始める。館を名乗るだけあってそこまでの道はすぐに町外れとなる。

「…イカレタヤカタって…」

ネーミングセンスがすごい。

「まあ作った人と家主がいろんな意味でイカれてるからその名前で呼ばれるようになったんだよ」

「…」

「これを言っても興味持つかはわからないけどイカレタを上回るほど優秀な執事がいるんだよ。君にとってもお世話役になってくれる。ほらもうついた」

道のりとしては町外れではあるが徒歩でもせいぜい中心地から20分もかからない。彼が指を指したのは和風の2階だての建物。どうや離れも持つらしい。背後には山脈も見える。東京郊外の高級住宅地というより田舎のその土地に根付いた旧家の住居っぽい。

「とりあえず家主には君のこと話してるからもう部屋も用意はしてくれてる。まあ挨拶が済むまでリビングにいたいならそれでもいい」


つづく


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