愛情いっぱい、元気いっぱい
俺は今、猛烈に驚いている! だって、だって…
あの貧乏なおっちゃんが会いに来てくれたのだ!!やったぜ。
「おっちゃーん、どりゅぁー!!」
そう、俺は会った瞬間おっちゃんに蹴りをいれてやった。
武術は並以下だが、蹴りの一発くらいは綺麗に決まるもんだな!
「いきなり何しやがるんだ、くそガキが…。」
おっちゃんと別れて5年。貧乏薬師は本当に1度も会いに来てはくれなかった。
まぁ、クラスメイトたちも実家に帰ったり、誰かが来たりしてなかったから普通なのかも知れん。
だから会いに来てくれたことに俺は感謝すべきだろう。
しかしである!!
俺は怒っているのだ。
リオウに過去を思い出す必要があるといわれて、しかしどうすれば…と思っていたら。
「まずは保護者に手紙を出してみるんだな」と言ってわが友がアドバイスをくれた。
なんでも、普通服には家紋が入っているそうだ。
服を売り飛ばしたおっちゃんでも家紋くらい覚えてるだろうとのこと。
ちなみに俺たちが今着てる制服も学校固有の桜の紋章が入ってる。
庶民であろうと貴族であろうと服に家紋を入れるのがルールだそうだ。
俺は大喜びでおっちゃんに手紙を出した。
だが、目の前で腹をおさえてるこのおっちゃんは…。
「まさか記憶喪失だとは思わなかったし、家紋はよく見ずに売り飛ばしたわ…すまん」
と書いてよこしたのだ。
絶望で打ち震えた俺。
「もうちょっと注意深くみてくれてたらな…。」
優しく声をかけてくれるリオウの口もとがニヤニヤしていた。
おまえ、明らかにおもしろがってるだろ!!
「ここまで不幸だといっそ面白いからな、見ている分には。」
なんて友達がいの無い男なんだ。
俺は積もりに積もった切なさを、わずかに1蹴りという愛情で赦してやったのだった。
「全く、お前がようやく卒業するっていうんで会いに来てやったのに…。」




