透析を受けた当日に働いて、危うく倒れそうになった話
以前、金曜日に透析を受けていたときのことだ。
透析の途中で職場から電話がかかってきた。マネージャーさんが休んでしまったので、代わりに出てきてほしいという話だった。
人手が足りないのはわかるし、急に休まれたら困るという事情も理解できる。しかも、私が出勤しなければ、残った2人で店を回さなければならなかった。そう考えると、現場がかなり厳しい状況になることもわかっていたので、頼まれたら何とかしようと思ってしまったのだ。
しかし、今考えると、なかなか無茶な話である。
透析を受けた当日に仕事に出て、ホールに立っていたときのことだ。お客さんの対応をするために、直立不動に近い状態で立っていたら、だんだん頭がくらくらしてきた。
さすがにこれはまずいと思い、壁に手をついて体を支えようとした。ところが、それはダメだと言われてしまった。
いや、こっちは頭がくらくらしているのだが……。
そう思いながらも、頭がくらくらしていることを説明すると、今度はキッチンの奥など、お客さんから見えないところならいいと言われた。
つまり、お客さんから見える場所で具合が悪そうにしているのはダメだが、見えないところなら構わないということらしい。
もちろん、お店にも接客上の事情はあるのだろう。しかし、透析を受けた当日に頭がくらくらするほど体調が悪くなっているのだから、見えないところに移動すれば済むという話ではない。座って休むなり、仕事を切り上げるなりするべきだったと思う。
そもそも、透析を受けているだけでは、それがどれくらいつらいのか、周囲にはなかなかわからないのだろう。
外から見れば、病院で透析を受けているだけに見えるかもしれない。治療が終われば普通に動けると思われているのかもしれないが、実際には、透析を受けたあとに体調が悪くなることもある。
頭がくらくらする原因はいくつか考えられるが、その一つとして、透析による体内の変化も関係しているのだと思う。
例えば、不均衡症候群というものがある。透析によって血液中の老廃物が急速に取り除かれても、脳内の老廃物の濃度はすぐには同じように下がらず、一時的に血液と脳との間に濃度差が生じることがある。その結果、水分が脳の側に移動して脳がむくみ、頭痛や吐き気などの症状が起こることがあるのだ。
ただし、不均衡症候群は特に透析を始めたばかりの時期などに多くみられるもので、あのときの頭のくらくらが、それによるものだったとは断定できない。透析後の血圧低下など、ほかの原因も考えられる。
いずれにしても、透析が終わったからといって、すぐに普段どおり動けるとは限らない。実際に経験してみなければ、そのつらさを理解するのは難しいのかもしれない。
ただ、店側の事情もわからないわけではない。
そもそも、金曜日を3人で回そうとすること自体、かなり無理があるのだと思う。誰かが休めば、残った人たちの負担は一気に増える。あのとき私が出勤しなければ、2人で店を回さなければならなかったわけで、おそらく現場はかなり厳しい状況になっていただろう。
マネージャーさんが休んでしまったときに、代わりに出てきてほしいと頼まれたのも、そうした事情があったからだと思う。自分が出なければ店が回らない。そう考えれば、頼まれたときに何とかしようと思ってしまったのも無理はない。
とはいえ、現在は売上も悪く、人員を追加できるほどの余裕もなさそうだ。人手が足りないからといって簡単に人を増やせるわけではないし、店側としても難しい状況なのだろう。
だからといって、透析を受けた当日の自分が無理をして働けるかといえば、それはまた別の話である。店が回らないからといって、頭がくらくらする状態で働き続けるのは危険だし、何かあってからでは遅い。
幸い、そのときは何とか大事には至らなかったが、今思い返しても、よくあんな状態で仕事をしていたものだと思う。
そんな経験もあって、現在は金曜日を基本的に休みにしている。人手不足の事情も、売上が悪くて人員を増やせない事情も理解できるが、自分の体を犠牲にしてまで穴埋めをすることはできないからだ。
透析を受けている人が、いつも元気に動けるとは限らない。外から見ただけではわからないつらさもある。だからこそ、本人が体調の悪さを訴えているときには、見た目だけで大丈夫だと判断しないことが大切なのだと思う。




