1304.陰陽寮にいらっしゃい
「ここじゃ」
なんとか気を持ち直した稲荷さんに案内してもらい、俺たちは陰陽寮へとやってきた。
ちなみに、陰陽寮はおんみょうりょう、ではなくおんようりょう読むらしい。あるいはおんようのつかさ。だってさ。
俺はずっとおんみょうりょうだと思ってたよ。
案内人君が居れば、嬉々としてその辺りのことを説明してたんだろうけど、今回は彼来てないからな。
未知なるモノさんもマイネさんも陰陽寮をおんみょうりょうと読んでたから説明できる人材は稲荷さん一択なのである。
「陰陽寮は陰陽頭を筆頭にして幹部職、実際に呪術を行う方技、その他の庶務職でできておるんじゃ。普段陰陽師と呼ばれておるのは方技のメンバーじゃな。陰陽師たちを纏めておるリーダー格は博士と呼ばれておる。陰陽博士や天文博士、暦博士、漏刻博士などじゃな。彼らの下に一般の陰陽師が付いており、修習生を指導しておる」
うん、俺そういうの興味ないからどうでもいいや。
多分ここに居るプレイヤーほとんどが興味ないと思うぞ。
そもそも全部纏めて陰陽師だろ、と考えてるメンツだぞ。そんなこまごま分かれてますとか言われても覚えきれんわ。
とりあえず行こうぜ。
なんというか、昔の家屋って感じだな。武家屋敷といった佇まいで、五行を模した家紋が門に装飾されている。
観音開きの扉を開き、砂利道を歩きながら屋敷へと向かう。
入り口にやってくると、向こうから狩衣っていうんだっけ? 陰陽師というか、平安貴族の服を着た柔和な男性が扉を引いて現れる。
「皆さん随分と大所帯で。稲荷様一同の方々ですね。お待ちしておりました。私はこの度皆様の案内役を仰せつかりました、加茂志恋と申します」
志恋さんかよ珍しい。いや、多分運営のことだから【かもしれん】という単語で考えて当て字しただけだと思うけども。
「この度は陰陽師に関係のありそうな札が市井に出回っているのに気付かれたとか?」
「ああ。これなんすけど」
早速本題か、と思ってカードを出そうとしたのだが、慌てたように両手で待ったをかける志恋さん。
どうやらここでは出す必要はないらしい。
むしろ世間話程度の話のきっかけづくりだったのかもしれない。
なんか、ごめん。
「はは、こちらこそ申し訳ございません。お客人方を玄関先で立ち話させてしまいました。ささ、どうぞこちらへ」
「む?」
志恋さんに促され、俺たちは案内されるままに土間へと向かう。
うぉ!? 今一瞬コトリさん結界が発動しなかった? 気のせいか?
扉を潜る際、ヌトセさんが一瞬眉を顰めたものの、そこまで問題はなかったようだ。何も言わずに通過した。
志恋さんがほっと息を吐いたのはおそらくヌトセさんの正体がわからずともなんかヤベー存在がアレに気付いた、けど見逃された。みたいな状況だろう。
アレ、が何かは分からんけども。
まぁ妖怪を弾く結界とかなんかそんなもんだろうと思われる。
ウチのメンバー誰も弾かれなかったな。未知なるモノさんとか弾かれたら面白かったのに。
「なんか結界張ってたんすか?」
「ああいえ、敵意のある者を弾く結界が入り口にあるだけなんですけどね。巨大な力を持つ方は煩わしいと破壊してしまう方もいらっしゃいますので」
「あー」
「さすがに敵対しない予定の施設にある結界を破壊したりはせんぞ」
「そもそも儂が普通に入っとる時点で問題ないと思うじゃろ」
いやー、稲荷さんだと素で気付かなかった説があるからな。
ヌトセさんが判断して問題ない、と言ってくれるほうが安心感が違うんだ。
「しかし、まさか陰陽寮なんて場所に行くイベントがあるとはなぁ」
「カワイイ依代とか貰えたりしませんかね?」
キュートマスターが来た理由は式神貰うためかよ!?
まぁ確かに、陰陽寮だし、記念に一体貰える、なんて淡い期待してくるのは仕方ないのか。
もしかして他のメンバーがわざわざ今回の旅に同行してるのも同じ理由か?
くねくねとした鴬張りの通路を歩く。
二条城みたいな造りになってんのかな?
入り組んでるし、音が鳴り響くし、結構襲撃者対策が出来てるみたいだな。
「なんか、面倒な部屋割りね。迷子になるんじゃないこれ?」
「ははは、よく言われます、陰陽寮はその特性上結構敵も多いんですよ、なので面倒さよりも敵性組織対策に力を入れております、今しばらく歩くのでご容赦を」
「マイネさんだと就職先としては無理なんじゃね?」
「そ、そうね、ここに勤めて陰陽師になるくらいならマンホール少女のままでいい、かな?」
いちいち部屋覚えるの大変そうだからな。マイネさんには面倒くささが先に来て職業として覚える前に逃げ出していることだろう。
「しかし、ヒロキ様でしたか、土御門家に類する方ですか?」
「え? あー、いや、ノリで付けた苗字だからなー、一応拝み屋とかはやってるけど陰陽師の土御門家とは関係ないっす、たぶん」
「おや、そうなのですか。土御門家の方がヒロキ殿と会えると知って喜んでおりましたのに」
どういうこっちゃ!? 名前でイベントあったりすんの!?




