1299.バノフ渓谷からノトン山へ
どれほどの時間歩いただろう。
いい加減飽きて来た俺たちの前には、ノトン山へ向かうための渓谷が待っていた。
「あー。確かバノフ渓谷だっけ?」
「ようやくロマール地方に来たわね。で、どこよここ?」
にわか共しかいねぇなオイ。とか言っても俺もそこまでドリームランド知ってるわけじゃないから、ここがバノフ渓谷だってことしかわからんけども。
で、バノフ渓谷ってなんぞ?
「お前だってわからねぇんじゃん。案内人、なんか言えることあるか?」
「えーっと、近場にタブネンの物御台というのがどこかにあると思うんですけど、僕もそこまで詳しくないんですよね。一応、ここは現実世界にあったロマール地方を模した場所だそうです。確か2万6千年前くらい、だったかな? 一人の男性がロマールの物御台でイヌート族による侵略がないか目を光らせてたんですが、居眠りしたらしいんですよね。で、ドリームランドに来ちゃいまして、結局彼の意識によりこの辺りがロマール地方に模した形になっていったわけですね。でしたよね?」
俺に聞かれても?
そもそもうろ覚えなら伝えなくてもいいんだぜ案内人君。未知なるモノさんの無茶振りに無理して応えなくてもいいんだ。
とりあえずこの渓谷は放置でいいからさっさとノトン山登ろうぜ。
にしても、なんだっけか。イヌート族が襲い掛かってきて、ロマールピンチ。最終的にノフケーにより滅ぼされました、だったよな。
なんでイヌートが襲い掛かってるのにノフケーに滅ぼされたことになってんだろな?
「単純にイヌート族がノフケー族だったんじゃね? ほら、時代と共に呼ばれ方変わったりするじゃん」
未知なるモノさんは夢が無いなぁ。
ここはイヌート族の族長がノフケーでさらにラーン=テゴスの化身だったのさ! ってくらい言っちゃってもいいんじゃねぇ?
「ねぇ、アレって何かしら?」
「ん? あー、多分シャンタク鳥だな。なんか北側によくいるらしいぞ。ナイトゴーントが居ないからあいつらの縄張りなんじゃね?」
「コトリバコ、置いちゃいます?」
「ニャルさんが涙目になるからやめてね?」
ニャルさん自身からお願いされたコトリさんが仕方なく諦めた。
山を登るとクリーチャーの種類が変わって来たな。
山岳仕様って感じだろうか?
「なぁ、なんかおっさん顔の奴いねぇ?」
「さぁ? 居たとしても見敵必殺だから瞬殺ですよね?」
「あ、今マンホールで押し潰したの、それだったかも。投げた先に居たのが悪いのよ」
ここら辺の敵、種類結構いるはずなんだけどなぁ、ヌトセさんとコトリさんがマジモードというかテンション高いコトリさんのおかげで気配感じた瞬間には相手が消し飛んでいる状況だ。
残念ながらどんな種類のクリーチャーがいるのかすら判別できずに消えていく。
唯一、シャンタク鳥だけは空を飛んでいるので判別できるのだが、こっちはヌトセさんが見つけ次第ニャラルトホテプの眷属、しぃねぇぇぇぇ。と撃墜しているので、ほんともう、俺ら山登りするだけの状況である。
なぁニャルさん、この辺りの情報ってなんかねぇの?
「そだねー。ロマールって僻地じゃん。だから滅多に人が来ないんだよねー。案内人君がテキトーに告げてたけどさ。ここはロマールの最後の生き残りが見張り台からドリームランドに来たことで出来た彼の夢世界なんだよね。完全な姿でドリームランドに出来ちゃってね、しかも人々も完全再現。といっても、普通の人と違って青白い肌でアーモンド形の目、高い鼻の人々になってるんだけどね。一応、交易商がいるから外界から隔絶されてはないのだよ、でもイシャーラ通ってここまで来るのが大変だからね。ほとんど交易もないわけよ」
「確か、氷と嵐の奇妙な神を信仰しているのだったか?」
おー、ニャルさんが説明始めたからクトゥグアさんが対抗するように告げて来た。
「ちなみにだがヒロキよ、ロマールの民はドリームランド内の神についてはほとんど知らんらしいぞ。私が神ヌトセだ。と言ってもおそらく10人中9人は首を傾げるだろう」
ヌトセさんが補足してくれるが、なるほどな、僻地にいるから他のドリームランドの町と隔絶してるわけか。
ロマールの民も外に出ることに拘ってないようだから外のことに興味もなく、神々も自分たちの信仰神がいるから他を知る必要がない、と。
んじゃ、下手に神様居ますよーとか言わずに一般旅行者として話をするくらいがちょうどよさそうだな。
「そろそろ中腹か?」
「この辺りならディアコスが見えるぞ。そら、アレが廃墟ディアコスだ」
おー、結構遠くにあるんだな。あそこに行くまででも結構かかるぞ。
オラトーエの方に夢の住民は存在してるけど、ディアコスの方は廃墟として出現したのか。
おそらく生き残った夢見人の思考の中でディアコスは既にイヌート族に滅ぼされた後だったんだろうな。




