1297.手を出すべきではない存在
SIDE:???
「だぁぁっ! クソが!!」
俺は思わずヘッドギアを外すと同時に投げ捨てる。
ふざっけんなよあのクソ野郎!
問答無用で殺しに掛かって来るとか何考えてやがる!
憑いてる幽霊ぶっ倒そうとしただけじゃねぇかよ。
あそこまでブチ切れるか普通。
ってかゲームであそこまで舐められたらよ、ぶっ殺すしかねぇよなぁ!
丁度電話がかかって来たのですぐに対応する。
電話相手は、ついさっきまで一緒にパーティー組んでた峨琉菟蛇のリーダーだ。
即座に受話を押して会話する。
【おぅ。分かってんな?】
「うす、あのクソ野郎へ報復っすね」
【奴はツチミカドヒロキというアバターらしい。ヒロキンチューブから今、自宅を割り出してる。テメーはすぐさま着替えてバイクを出しな。いつものトコ集合だ】
「了解っす!」
リーダーは切れたらヤバい。
気に入らない奴は確実にぶち殺して二度と逆らえない状態にしちまうイカレた男なのだ。
ツチミカドヒロキだっけか? たかがゲームで手ぇだしちゃいけねぇ存在に手ぇ出しちまったようだな。
可哀想だが、まぁ自業自得って奴だ。諦めな。
こうしちゃいられねぇ。っとばかりに電話が終ると同時に特攻服へと着替える。
特服は高校入った時から愛用している紫を基調とした服だ。
さすがにリーダーより華美な装飾すると悪目立ちするのでドラゴンの装飾、したかったけど諦めて鯉にした。
錦鯉だから見劣りはしないものの、さすがにちょっと俺には似合わない気がしなくもない。
鉢巻付けてバールのようなものを手にして外へ。
改造バイクに乗って騒音鳴らしながら集合場所へと急ぐ。
んー? なんか気のせいか? 妙にパトカーとすれ違うな。
なぜかこちらへの職質とかせずにそのままどこかへと向かっていくが、いや、まぁいい。俺にゃ関係ねぇだろう。
集合場所に行く前に捕まると面倒だし、安全運転で行くか。ったく、面倒臭ェ。
でも下手に捕まって遅くなったらリーダーに殺されちまうしな。
結構早く集合場所にやってきたつもりだったのだが、すでにそこには数多のダチが集っていた。
皆、峨琉菟蛇のチームメンバーである。
釘バットに血染めのバット、金属のまで持ってる奴がいる。
「おぅ。これだけ集まンの久々じゃね? どこの誰だリーダーブチ切れさせた奴?」
「俺らとリーダーでゲームしててよ。そこの女二人コマして集団デートしてたらよ、トチ狂った馬鹿に殺されたんだよ」
「おいおい、マジかよ、あれか? PKって奴か?」
「そんなんじゃねぇな、マジ切れして襲い掛かって来たパンピー」
「はぁ? あー、お前が余計な手出ししたんだろ。パンピーかわいそー」
「俺は別にそんなひでーことしてねぇぞ。相手がテイムしてたっぽい幽霊を除霊しようとしただけだし」
「ほら、やっぱお前じゃん。あー、一般人にお前がちょっかい掛けるからそいつが血塗れで土下座する羽目になるんだぜ。なぁ、母親か妹、姉、いるかな? ってか相手女?」
「知らねーよ、アバターはクソガキだったけど、男だろ」
「っし、メンツ揃ったな! 相手の住所特定したから今からブチ殺しに行くぞ。家族が居たならもろともにぶっ殺せ。女は好きにしていいぞ!」
「マジかよ!」
「リーダー愛してるぅーっ」
「ヒャハハ! 楽しくなりそうだなぁ!!」
「全員行くぞ!」
まさしく絶望のパレードだ。
並みの暴走族も裸足で逃げ出すほどに百を超える峨琉菟蛇のバイクが群れを成して公道を占拠する。
邪魔する奴らは纏めて……あぁん?
「おい、なんか変じゃね?」
「どういうことだ? 車が一切走ってなくね?」
「んな馬鹿な?」
若干の違和感を覚えつつ、峨琉菟蛇の名声のおかげで一般車たちも今走るのは得策じゃない、と逃げたんじゃないか。なんて互いに笑い合う。
目的地までは一切車が居なかったおかげですぐについた。
行きがけの駄賃で窓ガラスとか割りたかったんだが、ほんとに車一つもなかったな。
「ここだ!」
「おいおい、良いマンション住んでるじゃねーの」
「どの部屋?」
「そこの一階だとよ。お前ら窓から行け!」
「ひゃはは一番槍貰いー、どーん!」
手にした金属バットを件の部屋のガラス窓へと思いきり投げるメンバー。
「オルァ! ツチミカドヒロキィ! テメェ峨琉菟蛇に喧嘩売って生きてられると思うなよ! 確実に人生終わらせてやるから覚悟しろやぁ!!」
まだゲーム中なんじゃねーかな。
入ったらヘッドギア付けたままなんじゃね。
っしゃ俺も突撃だーっ。
砕けた窓ガラスから部屋へと侵入する、そこには……何もなかった。
「……は?」
「確保ーっ!!」
一斉に光が灯される。
周囲を埋め尽くす勢いで勢ぞろいした警官の群れ。
もはや逃げ場など、俺たちにはなかった――――
は?
「峨琉菟蛇のメンバーに告ぐ、お前たちは既に包囲されている。大人しく捕まるならば良し、抵抗するならば覚悟せよ!」
はぁぁ!?
な、なんだ? どうなってる!?
リーダー、どうな……
「止めろ、放せっ!? 畜生! 畜生――――っ!!」
振り向いた先ではすでに警官に押し倒され、手錠を掛けられているリーダーの姿。
「殺人未遂と住居侵入、器物損壊、強姦未遂も行っとくかぁ? 罪状が沢山だなぁ!!」
なんで、なんで警察が、こんなに沢山!?
なにが、起こっ……た?




