1296.中学校真なる七巡り6
「不思議な旅じゃなく夜の学園探索ツアーだったのです」
アリスのアリスさんがちょっと残念そうだ。
本人的には幻の四階でしばらく遭難してどうすればいいんだー。状態から徐々にいろいろ試して行って脱出、という謎とき体験を求めていたんだろう。
ごめんな、それベーヒアルが体験済みなんだ。
「しかし、ヒロキさんよ、意外とあっさり終わったな」
「まぁすでに流れが分かってる七巡りだからな。出現する敵もわかってるし、あのおっさんは予定外だったけど」
「それについてもヒロキ殿の柏手で瞬殺でございましたな」
「一応拝み屋だからな」
幽霊退治には一過言あるんだ。陰陽師共にだって負けないくらいにはな。
「でも、なんかこのまま帰るのはちょっともったいないわね」
「確かに、せっかくヒロキさんと冒険なんだし、ちょっと想定外起こらねーかな?」
おい、そこの陽キャ、それはさすがにフラグになりそうだからやめとけ。
と、思ったのだが、遅かった。
丁度下足場まで戻って来た俺たちは、ばったりと別のプレイヤーグループと鉢合わせる。
「おー? なんだよ、別の奴らいたのかよ」
「すっげー群れてんじゃん」
「幽霊いるぜゆーれい。憑かれてんなら俺が成仏させてやろーかぁ? ぎゃはは」
なんかガラの悪そうなアバターが五人。男性三人、女性二人のチームである。
手にしているのは釘バットやチェーン。不良ロールプレイしてんのかな?
当然同じく不良ロールプレイしてるヒバリとヨシキが前に出る。
「なンか文句でもあんのか、アァ?」
「おいおい、いきなり喧嘩腰かよ、テメー俺らが誰か分かってて喧嘩売ってんのか?」
知らんがな。
つか人数的にこっちが上なのに、つっかかってくるのか。これはさすがに面倒そうだな。
とりあえず映像に残しておこう。
「はいはい、二人ともステイステイ、七不思議体験に来たんだろ、俺らなんて気にせず行ってきな」
「はぁ? コケにされて引き下がれるわけねぇだろボケが!」
「コケにしてないだろ。不良界隈では今のは挨拶みたいなもんじゃねーの? ほら、挨拶終わったんだからお互い向かう場所向かおうぜ?」
「チッ、クソ雑魚がチョーシ乗りやがって」
ダメだ、会話にならねぇ。
「なー、心霊体験すんじゃねーの? アタシ喧嘩なら帰るけどー」
「あーしもー」
不良娘二人は喧嘩したくない派のようだ。俺らとしても全力で乗っからせて貰おう。
「チッ、テメェら顔覚えたからな。行くぞ」
覚えたのはこっちですが。バリバリ映像に映しておいたから。
ぞろぞろと下足場から廊下へと向かう不良君たち。
このままただの面倒な邂逅で終わる、と良かったんだけど……
「そらよぉ!」
男の一人が気功弾みたいなものを投げた。
それは、ハナコさんに向けられていた。
「ヒャハハ、行きがけの駄賃ーっ」
当然、ハニエルさんがすぐさま反応して結界を張ったので霧散した。
だからダメージなんてないし、被害なんてない。
そう、被害はないんだ。けど……狙ったな?
「おいおい、防がれたぞ」
「ちぇー、除霊してやろうとおも」
ピチュン。と光が駆け抜けた。
何かを言おうとしていた不良が一人、額に風穴開けて倒れる。
「……は?」
「え?」
「ちょ、ちょっと!? 何してくれてんのよあんた!? プレイヤー同士で殺害!?」
「……たな? 狙ったな、俺のハナコさんをッッ!!」
「ハニエルよ、これ殺人罪になるのか?」
「んー。ちょっかい掛けてきたのはあっちだからねー、過剰反撃にはなるかもだけど、初めから殺す気でハナコさんを狙った以上は、大丈夫じゃないヌトセ様。あ。ってかレッドネームじゃない向こう」
「テメェ! 俺らは峨琉菟蛇だぞ!」
「知るかボケェ!! ハナコさんを狙う奴は等しく死刑じゃぁ!!」
「あ、こ、こいつヒロキンじゃない!? ヤバいって!」
「あ、あーし関係ないから!」
女性陣二人は即座に両手をあげて降伏。
男二人は武器持って襲ってきたのでレーザー銃で撃ち殺す。
死んで償え。クソどもが!
「あー。やっちまった」
「こりゃユウに連絡しとく案件だな。すまん」
「がるがるさんなんか問題です?」
「おう、ありゃたぶん現実世界での不良チーム名だ。現役不良だろ。確か一般人相手にも襲い掛かるヤバい奴らだったはずだ。ユウから聞いただけだからあんま覚えてねぇけど」
ああ、それでイキってたのか。
つまり、ここで瞬殺された怒りを現実でやってやる、って?
そこまでできる奴らなのか。なら、遠慮はすべきじゃないな。
とりあえず運営に連絡してっと。
天の声さんや、俺レッドネーム扱いになるっぽい?
―― 安心しなー。あいつらが既にレッドネームだから問題無しだ ――
あー、あの不良たちすでに誰か殺し済みだったのか。
「えーっと、その、トラブル来てくれ、なんて言ってすんませんっした」
陽キャ君が頭下げるけど、まあ問題はないよ。
とりあえず、連絡すべき場所にちょいと連絡しておくか。
ヌトセさん、ちょっとログアウトするからアバター任せていい?
さぁて、現実での戦いは面倒だけど、そこはもう金持ちの戦いをさせて貰うかな、っと。




