第64話 ご対面
秘密のアジト感満載の建物に入ると、中は割と小綺麗でベッドや家具も揃っている。
そこに懐かしい面々が集まって、数日ぶりの再会を喜んだ。
「アリーシャ、無事に戻ってよかった!俺たち心配してたんだ」
アレックスが私の肩をポンっと叩くと、続いて後ろからシュナウザーとグレイソンの姿が見えた。
「そちらの方が水と雷、土の魔導師ですね。よろしくお願い…おや?一人のびてますね」
物腰柔らかなシュナウザーが簡単に挨拶すると、ぐったりと白目をむいたフリードに注目する。
「実はね、ドルマンが力の加減が出来なかったらしくて…」
実際はわざとだけど、そこは敢えて伏せておく。
不可抗力ということにした方が丸く収まるならそれでいい。
「あ、そうなんですね。では、僕が早速回復魔法をかけましょう」
そう言うとシュナウザーはフリードの胸のあたりに手をかざした。ホワッとした光がフリードを包むとやがて彼は薄っすらと目を開けた。
「うっ、ここは…」
するとライトはフリードを覗き込み、ネズミを揶揄う猫のようににんまりする。
「だっせーの!お前、瞬間移動で気失ったんだよ」
「なっ」
「いつも偉そうなこと言って、実は俺らの中で一番弱かったりして」
「くっ、言わせておけば…」
しかしすぐに起き上がれないフリードは悔しそうにライトを睨みつけている。それからようやく周りが見えてきたのか、私たちに気づきバッと顔を背けた。
「は、初めてだったんだ!仕方がないだろ。こういうこともある!」
別に誰も責めていないのになぜか一人で言い訳がましいことを言い、しばらく休むと布団の中に丸まってしまった。プライド高めなフリードはどうやら拗ねてしまったらしい。
案外子どもっぽいマネをするんだなと思いながら、「では、体調が戻ったらまた」と声をかけ一息つくことにした。
その間、私はソリティア王国での出来事を皆に伝えた。ただしゲシュト王が闇魔導師だったというのは伏せて。
また、アレックスとシュナウザーからは去った後の龍の巣の様子を聞いた。やはり数十頭の龍族が傷を負って逃げて来たらしく、シュナウザーの回復魔法をもってしても助からなかった龍族もいるらしい。そしてその中にリタの姿はなかったという。
その他気になったこととしてノクスの探知魔法にシュタイン王国の魔導師たちが数名ひっかかったという。ルーカスの故郷を狙っての偵察に近い感じだったというが、やはり高度の高い上空にあるため無理と判断したのか襲ってくるところまではいかなかったとか。
ただ、念のためルーカスの父ルシエルは故郷に留まり、警戒を続けるという。
そして皆の話をすり合わせたところで、ようやくフリードがバツの悪そうにベッドから起き上がってきたので私は本題に入ることにした。
ゲシュトも試したという同じ属性魔導師への闇魔法。魂のカケラすら見つけられなかったが、果たして本当に魔力融合なるもので出来るのか一度試さなければならない。
当然、その対象となるのはグレイソンであり他の皆には魔力融合の準備をしてもらう。
グレイソンにかけられた二千年前の鎖が取れなくても、まずは闇魔法がかかるかどうかが問題である。グレイソンが解読した古文書には魔力融合しやすい並び順まであったというのだから、ある意味ゲシュトよりも情報が詳しい。
「でも全属性での魔力融合なんてしたことないですから、少し不安もありますね」
落ち着いた様子で最年長のアースが言った。彼は状況把握に長けているのか、私たちの会話だけで今まで何があったのか理解しているようだった。
「そう?俺はさっきからワクワクしっぱなしだけど」
ライトは享楽主義なところがあるのか、事態の深刻さをあまりわかっていないようだ。
「アースさんもライトさんも、本当に今回のことに協力してもらって助かります」
「いえいえ、敵国同士でも倒すべき相手が同じなら協力は惜しみませんよ」
アースの瞳が微かに光ったと思うと、ふてくされたようにフリードが「俺も協力してやってるんだが」と言うので、「ああ、そうでしたね」と言うとジロッと睨まれた。
そんな中、場の空気を和ませたのは意外にもノクスで、
「ぐうぅぅ」
「んっ?今の音って…」
「すみません、僕です。あの、続きは夕飯食べてからにしませんか?」
と言ったので一同に笑って夕飯を食べることにした。
ノクスは耳も顔も真っ赤っかで、隣でディアナがそんなノクスをあったかい目で見つめていた。
ああ、やっぱりこの二人の雰囲気いいなと思っていると、私はルーカスとドルマンに連行されて彼らに早めの魔力を奉仕することとなる。
別室に連れてかれた私はルーカスにずいっと顔を近づけられ、
「アリー、闇魔法に関して協力出来る事は少ないけど、歯向かう魔導師を蹴散らすくらいならするから満タンでよろしく」
とニッコリ微笑まれた。
満タンって…と思いながら手を差し出すと、
「違うだろ」
と、なぜか機嫌がよろしくないルーカスに強引に口を塞がれる。
しばらく大人しかったルーカスのこの感じ、久しぶりだなと思いながら魔力供給に浸っていると、今度はドルマンが何の前触れもなくカプッと指にかじりつく。
「!?」
ちょいちょい、ちょっと待ていっと思っていても、一気に二人から魔力を吸われ頭がフワッとし体の力が抜けてしまう。
これは…何ていうか…傍から見たら完全に襲われてるの図だなと思いながら、私は片手でルーカスの肩にしがみついた。
やがて二人は満足したように私から離れると、獣のごとく二人ともペロっと唇を舐めている。
軽く壁にもたれかかりながら私は体勢を整えると、ルーカスが微笑みながら私を見下ろした。
「アリー、あんまり他の男と仲良くしてると言うこと聞かないから。覚えといてね。」
と、軽くまた私にキスを落とし、一方ドルマンは淡々と、
「俺は当然の権利をいただくまでだ」
と自分の唇に着いた血を舐めている。
そんなドルマンに対してルーカスが横目で睨みつつ、私をサッと抱きかかえた。
「何度も言うがアリーは俺のだからな」
「分かっているさ。ただ、俺にはどうでもいいことだがな」
ドルマンは満足したようにそのままサッと部屋から出て行くと、ルーカスは涙ボクロのある甘いマスクでニッコリと微笑んだ。
「アリー、もう一回いい?」
「ダメ」
当然、即答である。
やっぱりルーカスもドルマンもお互いマイペースなのはよく似ている。
こんな日がずっと続くように早くエスティオのことにカタを付けたいと思うのだった。




