第63話 新たな魔導師たち
ソリティア王国の魔導防壁が作動したことによって、取りあえずは外からの攻撃は防げていた。
精神支配を受けていた魔導師や兵士たちは一旦牢へと送られたものの、私とゲシュト王が密かに動き彼らの魂にかけられた魔法を解くと、なぜ自分たちは同胞を攻撃したのか分からないと混乱しショックを受けた。
エスティオが誰に闇魔法をしかけているか分からないため一切の気が抜けない日々が続いていたが、あの襲撃以来目立って大きな攻撃はない。
とするとエスティオはやはり襲撃のどさくさに紛れて王都内から逃げたと推測された。風魔法による探知によるとリュッセント王国の魔導師らしき集団が北の森に潜伏しているという。残念ながらエスティオがいるかどうかまでは分からなかったらしいが、そこ以外にいる気配はないそうだ。
そうして十日、お互いの出方を探るような日が続いた時、ようやくノクスからの風魔法による知らせが届いた。
どうやらここから50キロほど離れた街に皆が集結したらしい。
私はそのことをゲシュト王にすぐ伝えると、三人の魔導師を紹介された。
「水の魔導師、フリードだ。」
「俺は雷使いのライトだよ~。」
「私は土の魔導師アースと申す。」
少し冷たそうな印象のフリードに、軽そうな黄色のツンツン頭のライト、そしてアメフト選手のような色黒マッチョのアース。また個性豊かな男の人たちが集まった。
どうやら異性の方が闇魔法が効きやすいことを知ってか、ゲシュト王が余計な気までまわしてくれたようだが、ルーカスが明らかに三人を睨んで牽制している。
(いや、もう魅了魔法出してないから大丈夫なんだけど。)
と思いつつもちょっと嬉しい。ルーカスがこうやって分かりやすく嫉妬してくれるのは何だかんだで乙女心をくすぐるのだ。
「黒魔導師のアリーシャです。右にいるのがルーカス、左はドルマンよ。」
と言った瞬間、三人の顔色が変わる。
「ド…ドル…、あの吸血魔族か?」
とフリードが眉を顰めると、細目のアースの瞳がキラッと光って、
「魔力感知できないようにローブを被っているようだが、そちらは黒龍とお見受けする。いや、本当に…。」
「お嬢ちゃん、見た目によらず危ない人だね~。」
と、警戒する二人に反してライトはけらけらと笑っていた。
取りあえず、いきなり攻撃されなかっただけマシとしよう。
ゲシュト王からエスティオを倒すために協力を惜しむなと言われているらしく、闇魔法を使って支配しなくても三人は言うことに従ってくれそうだ。
「早速だけど、私の仲間と合流したいの。今から王都を出てグロースの街に行きますが問題ないですか?」
ツンツン頭のライトは二つ返事で承諾したが、残りの二人は困っている様子だった。
「どうかしましたか?」
すると少し不機嫌そうにフリードが説明する。
「ライトは雷魔法で瞬時に移動できるが、私とアースは移動魔法は持ち合わせていない。風魔法を使える者を呼んで来るか魔導車だが、魔導車は目立つから困るという訳だ。分かったか。」
フリードはプライドが高いのか、自分が出来ないということが不服らしい。
見た目が中性的な色白の美形だけにもったいない。髪も瞳もサファイアブルーのイケメンなのに…。
私はニコッと笑うと、ドルマンをチラッと見上げる。
「ドルマン、まずはフリードさんとアースさんをお連れして。」
ドルマンは「はいはい」と面倒くさそうにフリードとアースの二人に近づくと、ガシッと腕を掴んで一瞬で目の前から消えた。
「えっ!」
もちろんそれに驚いたのはライトである。
「えっ、今の何?どういうこと?」
「知りませんでしたか?吸血魔族の王ドルマンは瞬間移動が出来るんですよ。ただし人数と距離が限られますが。」
私が得意気に口角を上げると、ライトは「すげー!すげー!」と喜んでいた。
「でも、ライトさんは大丈夫ですよね。高速で移動できるんですから。」
「まぁ…ね。」
「では、現地で会いましょう。」
ドルマンの瞬間移動を体験してみたかったのか、ライトは小さく「ちぇっ」と舌打ちするとその場から一瞬で消えた。というより高速で移動した。
光の速さで移動する彼もまた瞬間移動と言えるのではないだろうかと思いながら私はドルマンを待つ。
「ルーカス、きっとこれが最後の戦いね。」
「そうだな。」
「これが終わったら、私たち…。」
と、そこでドルマンがヒュッと戻って来たのでルーカスとの会話は一時終了。もう少し遅く戻って来いと思いながら、ドルマンの方へと近づいていく。なぜかくっくっと嬉しそうに笑うドルマンにどうしたのかと尋ねると、
「さっきの青髪の人間、思い切り圧をかけてやったら向こうで気絶したぞ。」
「えっ?」
「態度のでかい人間は最初に潰しておかないとな。後が面倒だ。」
それにはルーカスも同意したようで、「お前と同じというのは癪だが同感だ。」とその部分だけは気が合っていた。
「アリー、ああいうのは最初が肝心だからね。少し痛い目に遭わせるのも必要だよ。」
フローラルの香りでもしそうなルーカスの微笑みと言葉があまり合っていない。そんなに失礼な態度を取られた感じはしなかったが、二人にはそう見えたらしい。
「じゃ、行くぞ。」
私は慌ててドルマンの腕を掴むと、目をつぶって開けた時には違う街が目の前にあった。
彼の瞬間移動って本当に便利だなと思っていると、ライトが少し頬を赤くしてこちらに近づいてくる。
「瞬間移動に負けないようにちょっと本気出しちゃった。ところでフリードは死んでるし、アースはぐったりしてるけど何で?」
キョトンとするライトに私は「はは…」と引きつり笑いをする。ドルマンがちょっとした嫌がらせをしたとは言えない。何たってこれから彼らの力を借りなければいけないのだから。
「瞬間移動に慣れてないと最初はあんな感じなの。休ませて置きましょ。」
「ふーん。」
ライトはどうやら単純思考のようであまり深く考えないようだ。
ちょっと助かった。
そう思っていると建物の陰から懐かしい顔がこちらに駆けよって来る。
「ノクス!それにディアナも!」
ノクスの探知魔法で私たちが来たことが分かったらしい。
彼の側にはディアナの姿も見える。
彼らの顔を見て何だかホッとし、私は自然と笑みがこぼれた。
「良かった、アリーシャ。うまくいったんだね。」
ノクスが柔和に微笑むとディアナが「やってくれるとは思ってたけどね」と自信たっぷりに言った。彼女のツンデレはちゃんと健在だ。
「他のみんなは?」
「ちゃんといるわよ。ついて来て頂戴。」
エスティオ率いる魔導師に見つからないよう、探知遮断魔法をノクスとシュナウザーが協力してはってくれたらしい。私たちは特にこれと言った敵に遭うこともなく、街の路地をすり抜けとある建物へと入っていく。
少しふらつきながらもアースは一人で歩き、完全に白目をむいているフリードはライトに背負われている。後でフリードが目を覚ました時のことを考えると少し楽しみだ。プライドの高い彼は第一声に何を言うのだろう。
最後の決戦を前に、私は新しい仲間が出来たことをほほえましく思っていたのだった。
不定期更新になっておりご迷惑をおかけしております。
完結に向けてプロットを練り練りしておりますので、ご容赦くださいませ。




