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第57話 旅立ちの旅立ち

昼食後、早速私たちは話し合いをすることになったのだが、始まってすぐシュナウザーがあることを言い出した。


「先ほどの話を聞いていて思いついたのだけど、おそらく魔力融合ではないかと思うんだ。」


魔力融合。

それは合成魔法を使う時にする方法で、今まで黒魔導師は加わることのなかったものだ。

三人以上でする際は手を繋ぎ円のようになると言う。


「魔力融合…。確かに言われてみればその可能性が高いな。だとしたら…。」


アレックスも大きく頷く中で一つさらに問題があるという。

それは魔力融合をする場合は、魔導師の力関係が同じくらいである必要があると言うのだ。

そもそも私の魔力量がものすごく多いことから鑑みて、王国魔導士レベルの魔導師を確保する必要があると言う。


そこで問題になったのがどこからそんなすごい魔導師を三人も連れて来るかということだ。


「三人の魔導師を連れて来る件だがソリティア王国から連れて来るのはどうだろうか。」


こう言ったのはアレックスだ。

あと三人、同等の実力のある水と雷と土の魔導師が必要だということだがリュッセント王国の上級魔導師はエスティオに精神支配されているためまず難しい。他に同じくらいの能力を兼ね備えた魔導師は敵国のソリティア王国くらいしかいないと言う。そのためソリティア王国から連れて来るという結論に至ったのだ。


「とすると当然行くべきは俺だな。火属性の魔導師は二人もいらないだろ。」


それを聞いたディアナがバンっと机に両手をつき立ち上がる。

「だとしたら私が行くべきですわ。団長の方が実力は上ですもの。何かあった時のために残るのは団長です。」


そんなディアナを見てノクスも慌てて立ち上がった。

「そんな…。ディアナ、だとしたら僕も一緒に行くよ。」


「ディアナはともかく風魔法が使えるノクスも行ったら意味ないだろ。」


たしなめようとするアレックスに対して「ディアナ一人は行かせられない」とノクスは一歩も引き下がらない。あの二人はこの戦いが終わったら結婚するかもしれないなと思いながら、私は手を挙げた。


「みんな落ち着いてください。行くのは私です。」


するとシュナウザーが思いっきりため息をついた。


「何言ってるんだい、アリーシャ。君が行くなんて一番あり得ない。今回の戦いは君が要だというのに。僕はアレックスかディアナに行ってもらうべきだと思うよ。」


しかし皆が口にしていないことがあることを知っていた。


「アレックスさんやディアナが行って連れて来れるんですか?リュッセント王国ならまだしも敵国から。事情を説明してそんな簡単について来てくれるとでも?」


一瞬ひるむアレックスに対して、ディアナは好戦的だった。


「そんなの従わせればいいのよ。軽く火魔法でちょっと痛めつけて、ひるんだところを連れて来るわ。連れてきた後どうしても従わなかったら、その時は…。」


私はチラッとディアナを見ると、

「だとしたら最初から私が精神魔法をかけた方が早いよね。私にはルーカスもドルマンもいる。いざとなればドルマンの瞬間移動かルーカスの背中に乗って逃げればいいし。」


ただ皆が私の案に賛成しない理由がもう一つあった。

グレイソンが悩まし気な顔をしながら私を見る。


「ただねぇ…。つい一か月前にそちらの吸血魔族さんがソリティアの魔導師を()っちゃったからね…。見つかったらただでは済まないと思うわよ。」


「うっ…。」


それを言われると確かにと思いつつ部屋の隅にいるドルマンに視線を移す。

大量に魔導師たちを傀儡のように変え、殺してしまった事実は消えないのだ。そんな皆の会話を遠くから退屈そうに聞いていたドルマンは大きな欠伸(あくび)をすると、ゆっくりこちらに近づいて来た。


「確かにただじゃ済まないかもな、ソリティアの王は。隣国に攻めると見せかけて国境近くで俺を殺そうとしたんだから。大方、不死の血ほしさに俺の寝首をかいたつもりだろうが、今頃俺からの報復を恐れてガタガタしてるだろうよ。」


不死の血…。

永遠に生きることのできる血を求めて人間が襲ってくるとは言っていたが、まさにソリティアの王がそうだったとは驚きだった。そしてリュッセント王国の魔導師たちはその争いに巻き込まれたのだという事実にも。


「じゃあそれを逆手に取るのはどう?そんなドルマンを使役した私が現れたら丁重にもてなすんじゃない?敵国ならエスティオもそう簡単には近づけないし、総攻撃でもけしかけられない限り逆に安全だと思うけど。」


ドルマンはフッと笑うと「決まりだな」と言った。


「俺の瞬間移動能力は一度行った場所なら正確に移動できる。ソリティア王国内ではしばらく過ごさせてもらったから王宮内に入るのは簡単だ。」


ルーカスは私の横顔をじーっと見ながら軽くため息をついた。

本当は危険な目に遭うかもしれない場所には行かせたくなかったのかもしれない。


「だったら俺がソリティア王国の上空まで飛んでつれて行くのが安全だろう。追跡魔法で感知されないようにな。」


アレックスやディアナはまだ不服そうだったが結局話し合いの末、私とルーカス、ドルマンの三人で行くことが決定した。ただし命の危険がある場合はすぐに退避するというのが絶対条件で。


アレックスとシュナウザーは引き続き龍の巣に留まり、避難して来るだろう南の龍族たちの手当や攻め込まれた時のために備えると言う。

ノクスは探知魔法を使い周辺地域の情報収集。ディアナはノクスの護衛兼恋人といった具合だろうか。

グレイソンは龍族の宝物庫に眠る古文書の解析をするという。もしかしたら何か新たに分かることがあるかもしれないからだ。


因みに龍族の宝物庫はあの湖の真ん中に浮かぶ神殿がそれだったらしい。

あんなに目立つところに宝物庫があるとはびっくりである。逆に目立ち過ぎて盗みに入ったら一発でバレそうだ。


ついでにグレイソンからもらった魔力が探知されにくいローブがもう一つないか宝物庫を探してもらうと、白地に金糸で薔薇の刺繍が施されたローブがあったためもらうことにした。残念ながらハンドカバーはなかったので、街で買うまで左手の刻印は布を巻いて隠すことにした。

ルーカスと一緒に街デートをしたのがだいぶ昔のことのようだ。


エスティオも私を追っているだろうが、まさか敵国に行くとは思っていないに違いない。

当分は時間を稼げそうである。

と言ってものんびりはしていられないので、目標は一か月ということで一旦落ち着いた。なぜならルーカスが飛ばしてもソリティア王国まで一週間はかかる。往復二週間。一週間で三人の魔導師を見つけて連れて帰らなければならないのだ。


「一か月くらい俺に任せろ。どんな魔導師が攻めてきても防いでやるから。」


ニカッと笑うアレックスに対して、シュナウザーは私の手を握った。


「アリーシャ。とにかく無理はしないでほしい。いいね。」


私はルーカスに惚れてなかったら、シュナウザーになびいていたかもしれないと思っていると、そんな気持ちを見透かしたようにルーカスが私に冷たい視線を浴びせていた。


「大丈夫です。心配しないで。」


私はニコッと笑うとシュナウザーの手を離した。


その夜私はルーカスからもらった指輪を眺めながら、改めてエスティオのことを考えていた。

ここまで執着するエスティオはもはや単純に私を花嫁として迎えたいというだけではないだろう、と。自分とおなじ闇魔導師が存在する以上、きっと私という存在がきっと脅威で仕方がないのだ。

だから私という存在を自分の手中に収めるか、もしくは存在を消してしまうかしないと安心できないのではないだろうか。


そんなことを考えながら眠りにつき、翌日の早朝に私とドルマンはルーカスの背に乗って旅立った。


めざすは敵国ソリティア王国へ。



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