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【完結】転生したら黒魔法しか使えなかった。でもイケメン黒龍を使役した  作者: 茄乙モコ
【第2章】リュッセント王国と王国魔導士
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第37話 アリーシャの秘密

私は二度死んだ。

月島アリサとして。

そしてアリーシャとして。


目の前が真っ暗になって。

心臓が確実に止まって…。


ん?

あれ?

何で意識があるんだろう?

心臓が確実に止まって…ってあれ?

少しずつ動いて…る?


ゆっくり(まぶた)を開けてみる。

やっぱり目の前にはあの白い肌に白い髪で赤目のドルマンがいる。

私の血を飲んだ後なのか、唇が真っ赤だ。


「あの…。」


私は恐る恐る声を出してみた。

するとすごい勢いでドルマンと目が合った。


「あの…首、痛かったんですけど…。」


ドルマンは目を見開いたままこちらを見ている。


「えっと、ここはどこですか?私、帰りたいんですけど…。」


血を吸われたのか頭が少しクラクラするが、体は普通に動きそうだ。

ゆっくりと起き上がりながら周りをチラッと見ると、やはり冷たくなった人間が近くに横たわっていた。


「ひいっ!」


今更驚いて、私は勢いよくのけぞるとドルマンの頭とぶつかった。


「痛っ!」


頭を押さえているとようやくドルマンが声を出した。


「何で…お前、生きてるんだ?」

「へっ?」

「俺は確実に血を飲ませた。なのに…。」


ドルマンは目の前の状況がよく呑み込めていなかった。

彼は不死の吸血魔族だ。

そして吸血魔族の王だけが不死の血を持つ。

王だけが持つその血を飲めば永遠の命を与えられると言われており、馬鹿な人間がそれを求めて来ることがある。今回のソリティア王国もおそらくそれが狙いだったのだろう。頃合いを見て隣の国に攻め入るふりをし、ソリティアの魔導師たちに仕返しをしてやったのだった。


人間たちは知らない。

本当のことを。

不死の血とは恩恵と死をもたらすものだ。

永遠の命と魂の破壊を。

だから決して皆が思うような永遠の命など決して入りはしない。


今まで馬鹿な人間に血を飲ませては、死にゆく様を何度も見ていた。

これまでに自分の血を一滴でも口にして生きた者はいない。

それなのに…。


「お前、もしかして体と魂が離れてるのか?」

「えっ?」

「だから封印も解けてるのか?()魔導師を見るのは二千年ぶりだが…。」

「あの…。」

「しかも俺を魅了しようとはいい度胸じゃないか…。」

「だから…。」

「お前、名前何だ?生まれて初めて面白いぞ!」


次から次へと訳の分からないことを言う目の前の魔物に私は声を荒げた。


「ちょっと!勝手に話を進めないでください!」

「おい、俺はお前の名を聞いている。早く答えろ!」


急にドルマンは私の手を掴んだので、転がった人間の死体を目に私は殺されると思った。

そして思いっきり叫んでいた。


「イヤー!!離れてーーー!!」


するとドルマンの体が光りドーンと壁際まで飛ばされたのである。

ドルマンはまたも目を丸くさせている。

そして私はドルマンの光る体を見た時、同じものを見たことがあるのを思い出した。

それはルーカスに命令をした時である。

そして私は手の甲を見た。


右手には黒い黒龍の刻印が。

そして左手には赤い薔薇の刻印が…あった。


赤は…確か血の契約って…。

そういえばコイツ、私の血、飲んでなかった…?


恐る恐るドルマンを見ると、物凄い目つきで私を睨んでいる。


「俺を使役するとはいい度胸だ。」

「あ、あなたが勝手に血を飲んだんじゃないですか!」


ドルマンは顔を抑えながら急に肩を震わせ、そして笑い出した。


「くっくっ…っあっはっは!こんな、こんなヤツに俺は…。しかも事故で契約だなんて…。」

「あ…あの…。」

「まぁ、いい。名前を教えろ。」

「ア…アリーシャです。」


何で私の方が敬語を使ってるんだろうと思いながら、それは言えなかった。

よくわからないうちにルーカス以外に、この目の前のドルマンを使役してしまったようだが、それでも何かの衝動で殺されるんじゃないかと思ってしまう。


「アリーシャか…。わかった。俺はドルマンだ。」

「は…はい。」


それは知ってると思いながら私はドルマンを見る。


「あの…ドルマン…さん。とりあえず、状況を教えてもらいたいのと、元の場所に戻りたいんですけど…。」


ドルマンはその場でドサッと腰を下ろすと、ふぅーっとあからさまなため息をついた。


「状況は俺がお前を殺そうとしたが失敗して、血を飲んだ俺が使役された。」

「何で私は死んでないんでしょう?」


こんな質問を殺そうとした魔物に聞くのもどうかと思うが致し方ない。


「それが不思議だ。知ってたら血は飲まなかった。」

「ですよね…。」

「俺の血は肉体を維持させる代わりに魂を壊す。封印が解けてるのを見る限り、体からなぜか魂が離れてるとしか思えん。」


肉体から魂が離れてる…。

それを聞いて思い当たるのは本来この体の持ち主が私じゃないということだ。

もしかしたらそれが原因かもしれない。


「封印が解けてるっていうのは…。」

「闇魔法の封印だよ。」


ドルマンが言うには二千年前ほどは精神魔法に長けた闇魔導師たちがたくさんいたそうだ。ただ、人間の心を自由に操る魔法に危機感を覚えた他の魔導師たちが、闇魔導師狩りを始めたという。

やがて闇魔導師たちはどんどんと死に、生き残った闇魔導師は生きるために自分たちに封印の魔法をかけたそうだ。それは自分の子々孫々に至るまで闇魔法を使えなくするよう魂に刻む魔法を。

精神魔法とは魂を縛る魔法。

つまり人間に魔法をかけられなくするように、自分たちに制約をかけたのだと言う。

そしていつしか闇魔導師は消え、魔物を使役するだけの黒の魔導師というのが残ったそうだ。


私はその魂の制約が何かの理由で外れていると言う。


ドルマンには言わなかったが、間違いなく月島アリサの魂だからだろう。

アリーシャの体と月島アリサの魂にはつながりが…ない。


「だから私は闇魔導師だと言うんですね?」

「そうだ。」


私はドルマンの赤い瞳をじっと見据えた。すると、ドルマンはサッと視線を反らす。

実はさっきからずっとこうだ。


「さっきも言ったが俺に魅了を使うな。」

「何のことです?」

「そうやってじっと見るなということだ。」

「どうしてです?」

「気づいてないのか?」


さっきから魅了がどうのと言っているが全くわからない。私がキョトンとしていると彼はまた大きくため息をついた。


「その目だよ。ガンガン甘い感覚にさせて、俺を言いなりにでもさせるつもりか?」

「目…?」

「闇魔導師は魂を縛る魔法だ。それは体のどこからだって出せる。さっきから魅了魔法を使ってるんだよ、お前は…。」

「魅了魔法って…。」

「簡単に言えば相手を(とりこ)にする魔法だ。」


その時、私は頭を殴られたかのような衝撃を受けた。

相手を虜にする魔法…。

目を見ると…。

そして今までのことを思い出す。

エスティオにアレックス、シュナウザーに…きっとルーカスも。

だとしたらグレイソンは?黒の魔塔でそんな風になった人はいなかった。


「それって、かからない人もいるんですか?」

「そうだな…。もともと精神魔法に耐性のある黒魔導師とか、後は同性とか?」

「なるほど…。」


なぜだか妙に納得してしまう。

そして私はドルマンをじっと見るのをやめた。

全部、私のせいだったんだ…。


その時、私の頭に浮かんだのはルーカスのことだけだった。

ルーカスの好きは本当じゃなかった。

心臓がえぐられるように痛かった。

さっき死んだことよりも、私は動揺している。

ドルマンはただただ、無言の私をじっと見ていた。



「ドルマンさんはこれからどうしますか?」

「こうなった以上、俺はアリーシャの近くにいないといけなくなった。肉体がやられたら永遠の命を持っててもさすがに死ぬ。お前から離れすぎると俺は動けなくなるからな。」

「そうですか…。」


私はドルマンというとんでもない魔物を使役したことよりも、ルーカスの気持ちを自分のいいように向けていたことの方がショックでならなかった。

ルーカスにどんな顔で会ったらいいかわからなかったが、それでもまだ私にはやるべきことがあった。


腕輪を…あの腕輪を外さなければ…。


「じゃあ、私と一緒に来てください、ドルマン。」

「呼び捨てとはいい度胸だ。お前が死ぬときはその血を食らってやるからな。」

「どうぞ、ご自由に。早速だけど、元の場所に戻してくれる?」

「了解。」


ドルマンがさっきより少しだけ柔らかい表情をした。

もしかしたらこれも魅了のせいかもしれない。

そう思えば思う程、私はルーカスに会いたくなかった。


ルーカスの「大好き」はもう私の知る「大好き」ではないのだから。




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