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【完結】転生したら黒魔法しか使えなかった。でもイケメン黒龍を使役した  作者: 茄乙モコ
【第2章】リュッセント王国と王国魔導士
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第25話 エスティオの攻撃

翌朝、目が覚めるとやっぱりそこにはルーカスの顔があった。

昨日も餌付けにかこつけてキスしたけど、今までのと違った。魔力を手で渡せるのに、私は何も抵抗せずに受け入れていた。これはもう認めるしかない、か…。


私はルーカスの綺麗な寝顔を見ながら、彼の髪の毛に少し触れた。


「ルーカス…好き。」


すごくすごく小さな声で言ってみた。

まだ直接、面と向かって言うのは難しいかもしれないけどこうやって寝てる時に練習してみるのも悪くない。そしたらいつかちゃんと言える。そんな気がした。


ルーカスはまだぐっすり寝ているようだったので、先にそっと着替えて朝食を食べに部屋を出た。だいたいベッドから出るといつも気配で気づいて起きてくるのに今日は珍しい。

いつでもどこでもルーカスがくっついてくるので、一人で食堂に向かうのが何だか不思議だった。



♢♢♢



アリーシャが部屋からパタンと出ていく音がすると、足音がだんだんと遠くなっていく音がする。


部屋の中はシーンと静まり返り、先ほどと同じ態勢でルーカスはベッドの上にいた。


そして完全に音が聞こえなくなるとルーカスは目を開けた。


嘘じゃない。

嘘じゃない…よな?


ルーカスは先ほど聞こえた声を反芻(はんすう)した。


「初めてアリーが俺のこと好きって言った…。」


たった二文字の「好き」がこんなに嬉しいなんて…。

今まで何度もアリーに「好きだ」と言ったが、彼女から返ってくることはなかった。

それが、今、初めて返ってきた。

ちゃんと目を開けている時に言われたわけじゃないが、聞き間違えるわけがない!


アイツのことをカッコイイと言ってから少しモヤモヤしていたが、それも今のですべてなくなった。

寝てると思ってこそっと言うなんて、アリーは可愛いことをする。

これからはもう遠慮せずにもっともっとアリーにキスして…。


「2年待てっていうの、アレ守らなきゃダメかな…。」


朝食から返ってきたら思いっきり抱きついてキスしよう。

ついでに寝てる俺に何か(ささや)かなかったか問い詰めるんだ。きっと慌てふためくに違いない。

そんなアリーを想像するだけでもドキドキする。


俺はこの時アリーが囁いた「好き」の二文字に浮かれて、いつもと同じ行動を取らなかった。

アリーの側に常に張り付くようにいたのに、この時に限って…。


アリーが部屋に戻って来た後、俺はこのことをすごく後悔することになるなんてこの時は全く思っていなかった。



♢♢♢



私は食堂に着く前に辛子(からし)色のローブを着た魔導師に声を掛けられた。どこかで見たことあると思ったら、それはあの謁見の前まで案内してくれた男だった。


「エスティオ様が応接室でお待ちしています。こちらへ。」


わざわざ私に会うために魔導師の宿舎まで足を運ぶとは、やっぱりあの事だろうなと思いながら私はその男に従った。そして私は決めていた。この際だからはっきりと言おうと。あなたとは結婚しない、と。


応接室に入るとエスティオが私を見るや両手を広げた。


「やぁ、待っていたよ。さぁ、そこのソファへ。」


私は促されるままソファに腰かけた。


「朝からずっと待ってたんですか?」

「ああ、そうだよ。君が部屋から出てくるのをね。」


エスティオは微笑んでいたが私は昨日のことを考えると背筋に悪寒が走った。


「昨日、私の部屋を覗いてたって本当ですか?」

「黒龍君がそう言ったのかい?」

「はい。」


エスティオは動揺することもなく、先ほどと同じように微笑んでいた。


「覗いていたという言い方は語弊(ごへい)があるな。私はただ確認していただけだよ。君がちゃんと私の忠告を聞いているかどうか。」

「忠告って…。」

「私は君に言ったはずだよ。あまりいちゃつかないでほしいとね。それなのに君はあんなベッドで一緒に寝てるなんて、一緒の部屋にいるのだって許せないというのに…。」


やっぱり昨日も、もしかしたら他の日も私を監視していたことに身震いした。この人は何かがおかしい。


「私、今日ははっきりと言おうと思ってここに来ました。」

「はっきり、とは?」


私は深く息を吸うと思い切って言った。


「私は他に好きな()がいます。だからあなたとは結婚しません!指輪もお返しします。」


私はエスティオを真っすぐに見た。この人が私の何が良かったのか知らないけど、ここまではっきり言ったのだ。さすがにわかってくれるはずだよね…。私はエスティオをチラッと見た。

彼はふーっとため息をつくと、私の方へと近づいて上から見下ろした。


「それは本当に人かい?魔物の間違いでは?」


彼の冷たい視線が私に刺さった。


「お察しの通り、魔物です。それが何か?」

「君は何もわかっていないね。魔物がどういうものかを。アイツらは私たちとは違うんだよ。」


そんな事私だってずっと考えている。この人に言われなくたってそれくらいわかっている。


「だから何です?」

「アイツらは人間を魔力を得るために襲う。いわば敵だ。黒魔導師は使役してるから情が移りやすいがただの化け物だよ。」

「彼は化け物なんかじゃない!」


さすがにこの言い方にはカチンときた。みんなが言うようにエスティオは魔物を敵視している。


「いいや。じゃあもっと具体的に言おう。黒龍が人間を嫁にするのはただ子孫を残すためだ。アイツらは軽く1000年は生きる。そして嫁を見つけては子を作るのさ。君のこともその中の一人にしかすぎない。」

「そんなことない!ルーカスはずっと一緒にいるって。」

「君が老いてもかい?アイツはずっと今のままの姿だっていうのに。」


自分の中で着かれたくない所を言われ、音を立てて崩れそうになるのをこらえていた。こんなことくらいで泣くな!コイツの前で弱みなんて見せたら終わりなんだから。


「それでもいいと言ってるんです。私は。」


私はエスティオをキッと睨みつけた。

エスティオも引き下がらなかった。


「これだけは言うまいと思っていたが、君のために言おう。アレは以前にも女を連れ去っている。」

「ウソよ!」

「噓じゃない。その女に会いたければ今は王都にいるから言うがいい。」

「…。」

「アレは子を作るために君といるだけだ。人間のように恋愛感情なんてものはない。アレが君に使役されている限りは手荒な真似はしないと思うが、そろそろそれも限界なんじゃないか。いつ君に襲い掛かってくるかわからない奴だ。その時はちゃんと命令するんだ。刻印がある限り、君の命令は絶対だからね。」

「命令で従わせるなんて、嫌です。」

「とにかく、もう少しよく考えるんだ。アレは君が思っているような奴じゃない。」


私はなぜか自信をもって違うと言えなかった。ルーカスと会ってまだ日が浅かったからかもしれない。好きだと言っておきながら、私は彼のことを信じることが出来ていなかったのだ。


そしてエスティオはさらに付け加えた。


「私は寛大な男だ。ただし、君があまりにアレと仲良くするなら私にも考えがあることだけは伝えておこう。」

「どうするんですか?また腕輪でもはめるんですか?」

「いや…。ただ、あの腕輪はただの封印魔法だけではないということだ。」

「どういうこと?」

「万一に備えてあの腕輪には攻撃魔法が仕掛けてある。私が呪文を唱えれば即座に発動する魔法がね。君の黒龍はそれくらいでは死なないが、他の魔物はどうなるか…。」


私の体温が急に冷たくなるのがわかった。魔塔にいるみんなの相棒には腕輪がついている。


「私を脅すんですか!」

「そういう風に聞こえたなら仕方がないが、あくまで私は国の安全のためにそうしている。黒の魔導師は危険意識が薄いのだよ。」

「私にどうしろと。」

「簡単なことだ。アレと今後、抱き合ったりキスしないことだ。魔力を渡す時以外は手も握らずにね。なぜなら君は私と結婚するのだから。」

「嫌だと言ったら?」


エスティオはフッと笑った。


「魔塔の魔物たちが突然いなくなるだけだ。」


私は怒りに震えながら、エスティオを見据えた。


「わかりました。でも、覚えておいてください。ルーカスはちゃんと感情もあるし私のことを思ってくれています。あなたの思い通りになんてさせない。」


「楽しみにしているよ。それと、君が遠征から戻ったらすぐに式を挙げる。そのつもりでいてくれたまへ。」


私はバンっと扉を閉めるとすぐに自分の部屋に向かった。

エスティオという男が執拗に後ろから追いかけてくるようで怖かったが、それ以上にルーカスに早く会いたかった。

今日は暑くてうだりそうな中、書いていました。

読んでもらえて感謝しています。

これからも応援よろしくお願いします。

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