第10話 厄介な魔物ルーカス
結局ルーカスをバスルームから追い出すことができず、お風呂に入ることになった私。
取りあえずコヤツのことは大きなペットだと思うことにした。
そしてルーカスを湯舟に浸からせながら、私はコイツの頭を洗ってあげている。
もちろんルーカスのアソコはバスタオルでがっちりと巻かれて今回はちゃんと見えないようにしている。もちろん私もだ。
「なんで?」と聞かれたが巻かないと一緒に入らないと言ったら渋々巻いた。
あと湯舟がシングルサイズで助かった。
一緒に入ろうとか言われたら大変である。
「俺、人間の風呂に入ったのも頭を洗ってもらうのも初めてだ。こんなに気持ちいいんだな。」
目をつぶり完全にリラックスするルーカスは本当に気持ちよさそうだ。
「お母さんとかに洗ってもらったこととかないの?」
素朴な疑問だった。
そもそもコイツはどこで生まれて、どう育ったんだろう。
二十歳前後くらいに見えるけど、ずっと一人だったのかな。
「俺が小さい時に死んじゃったから、あんまりよく覚えてないんだ。親父は俺が成人したら新しい嫁探しに行っちゃったし。」
ってことは二十歳よりは上なのかな?
にしてもコイツの父親も新しい嫁って…。
ドラゴンってそんな無責任な感じなの?
「ふーん。そうなんだ。」
すると急にルーカスは目を開け私をちらっと見て微笑んだ。
「安心して。俺はアリーだけだから。」
「う、うん。」
とりあえず頷いてみたものの、出来れば私にも選択肢がほしい。
この世界のこともまだよくわからないし、何よりどんなにカッコよくても旦那が魔物ってやっぱり…ね。この言葉も今の私には正直ちょっと重すぎる。
せっかく16歳に生まれ変わったんだから、ちょっとくらい青春したいし…。
「ところで、ルーカスって今何歳なの?」
何気ない質問だった。
前世で30歳だった私から見れば、まだまだ青い若造と上から見ていたのもある。
「うーん…。」
しばらく考えた後ルーカスは笑顔で答えた。
「150歳くらいかな?」
ひゃくごじゅう?
今、コイツ、ひゃくごじゅうって言ったよね。
全然私より年上じゃない!
こんな無邪気な感じでいるけど、キスも初めてって言ってたけど、本当にそうなの?
まさか全部計算なんてこと…。
私は一瞬不安がよぎったがブンブンと横に首を振って、その考えを打ち消した。
「どうしたんだ?アリー。」
「ううん、何でもない。」
ルーカスの髪の毛を綺麗に洗って流してあげると、彼は私を持ち上げ湯舟につからせた。そして今度は私の髪の毛を洗うと言い出したのだ。大丈夫かなと思ったが取りあえず任せてみることにした。
「アリーの髪の毛って綺麗だね。金色でキラキラ光ってて…。」
「そう?ありがとう。」
それは私も最初に見た時に思った。
どっかの妖精さんかと思うくらい、顔も可愛いし。
魔物が惚れるのも今は納得。
「目もピンク色で可愛い。」
「そうかな?」
最初は茶色っぽいピンクだったのに、さっき見たらピンク色になってたんだよね。
コイツと魔力交換したせいかな…。
「ルーカスの目も金色になった時、すごく綺麗だったよ。」
「そうか?みんな怖がるのに。アリーは俺の金色の目、好き?」
「うん、もちろん。」
「そっか。ただ感情が高ぶった時しか金色にならないから、いつも見せられなくて残念だな。」
感情が高ぶった時ね…。
なるほど、覚えておこう。
「アリーのほっぺが少し赤いけど、もしかして熱い?」
「そんなこと、ないよ。」
「そっか。アリーの肌はすべすべで気持ちいいね。」
そう言いつつ、私の顔を手で触っていたと思いきや首、肩とだんだん下がってくるではないか。
「ちょっとルーカス。何考えて…。」
と振り返って見た時、彼の瞳はがっつり金色に光っていた。
彼は私を見るとニッコリ微笑んだ。そして一言。
「あれ?バレたか。」
それは完全なる確信犯の顔だった。
やっぱりコイツ油断ならない。
私はボコッと一発お見舞いして「出てけー!」と叫んだ。
♢♢♢
お風呂から上がると部屋に夕食の用意がされていた。
どうやら皆、ルーカスが怖くて近寄れないらしい。
どこがそんなに怖いのかわからないが、取りあえず一緒に食べる。
そして就寝前。
ナイトウェアのルーカスは色気が半端ない。
お風呂に入って、髪もサラサラになって一段とカッコよくなっている。
そしてそんなルーカスの手を握る私。
一体何をやっているかというと、魔力を渡そうとしているのだ。使役した魔物に定期的に魔力をあげないと、その魔物は飢餓状態になって契約者を襲ってしまう。
食事と睡眠で魔力が回復する人間と違って、魔物は回復しないらしい。魔力は魔物にとってはエネルギーのようなものらしく、魔力がないと魔物は動けなくなってしまうという。
ただ、問題なのは手を合わせているのに、あの時のように魔力のまの字も感じられない。
あの魔力交換した時のように、体の中から何かが溢れる感じがしないのである。
おかしいな…。魔力を渡す時も魔力交換とやり方は一緒だって言ってたのに…。
「アリー、何やってんだ?」
「いや、魔力を渡そうとしてるんだけど…。」
「ふーん…。」
するとルーカスがいきなり私の頭をグイっと引き寄せ、顔を近づけた。
彼の瞳はまた金色に光っていた。
「じゃあ、またあの時みたいにしてみる?」
そう言うと、ルーカスは自分の唇をペロっと舐め、私の口を塞いだ。
やっぱり彼の唇は柔らかかった。
そして私の中でまた、あの感覚が起こった。
温かい、いや熱い流れを体の中で感じる。
そうしてそれがルーカスの方へと流れていくのを感じた。
「ぷはっ!」
私がルーカスを押し返すと、彼は味わうように唇を舐め、にやっと笑った。
「アリーも素直じゃないな。俺とキスしたいなら最初っからそう言えばいいのに。」
そう言うと、彼は私をぎゅうっと抱きしめ頭にスリスリした。
「やっぱりアリーは最高に可愛い。早く食べたいよ。」
私はこの時思った。
コイツから逃げる方法を考えなくては、と。
次話はルーカス視点です。(本日も23時更新予定)
ちょっとルーカスの腹黒な感じが見えてきましたが、次話から徐々に出していく予定です。
そして主人公の前世の年齢を25から30に引き上げました。書いているうちにイメージがちょっと違ったので。




