#確認
「うわ、高っ」
「マツ、ちゃんと掴まっててね。落ちちゃうかもしれないから」
そう言われ、目の前にあるロトの肩にしがみついた。
「わっ……あはは、そんながっちり掴まなくていいのに」
ロトには笑われたが、言い返すような余裕は松原にはない。
高いところが苦手というわけではないが、箒に乗るとなると話が違う。
「箒は怖いから、せめてきちんと座れる椅子のような部分がほしい」とロトに頼んだら、きょとんとした顔をされた。
どうやら、ロトにその発想がなかったらしい。
首を傾げながら、箒に座面を作り出したロトを見て、藤田と鹿野だけでなくスクまで「それほしい!」と言い出した。
ロトも自分用の座面を作り出して座り、「これは快適かも」と小さく呟いていた。
乗り物としての箒に革命が起こったのかもしれない。
「マツは一人じゃ箒に乗れなかったかもね」
「うん、これは乗れなかったと思う。安定感の問題だけじゃないわ」
生身で高いところを飛ぶ、というのはなかなか怖い。
松原が振り返ってみると、鹿野はスクにぎゅっと抱きつき、街を指さしながら何か問いかけているようだった。
鹿野は落ち着いているため、抱きつく必要もないとは思うが、そこは深くは突っ込まない。
残った藤田は、ロトに魔法をかけてもらって一人で飛んでいた。
ロトいわく前にも飛んだことがあるから大丈夫、だそう。
「高所は苦手なはずなのに」と藤田を心配した松原と鹿野の予想通り、今の藤田の顔は少し青い。
前に平気だったのは、夜でまわりの景色が見えにくかったからなのではないだろうか。
「スク、降りるよ」
「はーい。シカ、またあとでね」
ゆっくりと降下していくロトに合わせて、藤田の箒もゆっくりと降りていく。
「マツ、地面滑りやすいから気をつけてね。フジも」
「分かった」
先に地面に降りた三人の後から、スクと鹿野も降りてきた。
地面に足を置こうとした瞬間に滑った鹿野を、箒の上から慌てて掴んだスク。
「あぶね! 地面滑りやすいよ」
「滑った後に言われても困るんですよ、もう少し早く言ってくれません?」
ギリギリで転ばなかった鹿野に文句を言われ、苦笑しながらスクも地面に降りた。
藤田はじっと宇宙船を見上げている。
損壊している部分もあるものの、全体としては綺麗な状態で落ちている。
ちゃんと入り口を閉めてから離れていたため、真っ白な物体になっている。
「ロト、開けてくれる?」
「わかった。開け!」
ロトがそう唱えると、宇宙船の入り口が開き始める。
だが、本来下りてくるはずのはしごが下りてこない。
前回もそうだったから、どうやら魔法に反応していないらしい。
「やっぱりはしごは下りないものなの?」
「うーん……はしごってはしごだよね」
当たり前のことを言って、真剣に考え始めたロト。
余計なことは言わないほうがよさそうだ。
みんなで黙ってロトを見守る。
「はしご下りてきて」
ロトの言葉に、え、と目を丸くしたスク以外の三人。
まさか、と思ったものの、本当にはしごが下りてきた。
「これでどう?」
「うん……俺らが知ってる宇宙船、だね」
よかった、と笑うロト。
やはり魔法は不思議なものだ。
「どう? 宇宙船、直せそう?」
スクが首を傾げる。
「いや、見てみないと分からない。エンジン見てみる?」
「そうですね、とりあえずエンジンを見てみましょう」
さっさとはしごを上って宇宙船の中に入っていった鹿野。
松原はその後を追って宇宙船の内部に入り、外にいた藤田に声をかけた。
「藤田さんは外から確認してくれない?」
「了解、任せて」
藤田は頷いた。
「蓋外せます?」
鹿野が宇宙船の内部を見回して、そこ、と端を指さした。
エンジンの状態が分かる場所の一つだ。
じとっとした目で鹿野を見た松原。
「鹿野も手伝えよ」
「いや、私はちょっと戦力外なんで」
「嘘つけ、やりたくないだけだろ」
しぶしぶ、鹿野も近寄ってきて蓋に手をかける。
この蓋はかなり固い。
一人で外すとなるとかなり厳しく、二人がかりでやっと外せるものだ。
「いってえ……指いってえ……」
ぼやいている鹿野は放っておき、中を覗き込んだ松原。
すぐに状態が分かって、苦笑した。
このエンジンの故障の原因は、落下の衝撃らしい。
地面に落ちたときにそのまま滑ったらしいことは、木の倒れ方を上空から見たため分かる。
どうやらそのときに、エンジンを地面に擦ってしまったらしい。
「あーなるほどな……鹿野も見て、これ」
「はいはい、どうなってんの?」
鹿野も指先を押さえながら、中を覗き込む。
「あー……そういうことか。反対側も見ます?」
「そうだね」
通常エンジンは二箇所にある。
反対側の蓋も苦戦しながら外して、中を覗き込んだ。
「こっちは意外とそうでもないな」
「そうですね、想像したよりは」
エンジンを見ながら話していると、ちょうど外にいる藤田と目が合った。
エンジンカバー自体もなくなっていたらしい。
となると、エンジンも剥き出しのはずだ。
「これ、直せると思います?」
「いや、さすがに無理だな……こういう壊れ方をしてるとは思わなかった」
「私も想定外ですね」
内側からはそれしか分からない。
立ち上がって入り口に向かった鹿野。
「藤田さん、やっぱり部品ってなくなってますか?」
「なくなってるね。だいぶ足りない。近くに部品らしきものは散らばってるけど、これで修理しろってのはかなり厳しいかな」
松原も入り口に向かう。
「そもそもエンジンカバーもないし、エンジンの本体もえぐれちゃってる。線が切れてたりするし、燃料タンクも怪しいよ」
「本当に。こんな壊れ方をしていて、よく火が出なかったものですよ」
藤田も周囲を見て回ったらしい。
困ったような顔をしている。
そんな藤田をじっと見ているロトとスク。
「フジ、この宇宙船はもうダメなの?」
「そうだね。前に来た時は暗かったから細かいところまで見れなかったんだけど……こんなにエンジンの壊れ方が酷いとは思わなかった。直せないよ」
首を横に振る藤田。
この宇宙船で宇宙に出ることはもうできない。




