4巻 3章 2話
数十日後、マーズ。
クラウンが作戦を実行するには、グランピーの資産や土地の売却に関する書簡をマーズの企業に届けるという条件があった。
しかし届け先の企業を訪問するには、スーツ着用の服装指定があった為、クラウンとスノー、犬達はスーツを購入しに出かけた。
「スーツどこで買う?高いのいらないなー。」クラウンはスノーに聞いた。
「普段着ねーもんな。シシッ。専門店じゃなくて、バザールで買うか?」
「うん!」
ステンドガラスの天井が美しいバザールに着いた。
金塊屋、ランプ屋、香水屋が並ぶ通りから一本奥の道に入り、ハーブティー屋、トロフィー店、雑貨屋を通り過ぎた。さらに裏路地に入ると青空バザールに着いた。ストリートファッションの洋服屋、喫茶店、スニーカー屋があった。クラウンとスノーはスニーカー屋の前で自然と足が止まり、ラックに並んだ片方のスニーカーを見ていた。
「あれ?ギルドのやつらだ。」柄の悪そうな男達が3人、クラウンに近寄って来た。
柄の悪いもう1人がスノーに言った。「銀行にお金取りに行くの手伝ってよ〜。金でなんでもやってくれんだろ〜。」
「ああ、連絡してくれ。」スノーはクラウンに合図して歩き出した。
クラウンもスタスタ歩く。
角を曲がると、クラウンは「あんな事言っていいの?」とスノーにたずねた。
「どうせクエスト通らねーから、あしらっとけ。シシッ。」
「まあそうだね。」
「いつも一人でクエスト受けてる時、大丈夫か?さっきはあしらったけど、依頼主にやりたくねー事言われた時はちゃんと言えてっかー?」
「そーいえば。前にさー、クエスト受けた後に、勝手に依頼主が金額安く変えようとしてきた事あったなー。」
「そん時どーしたんだよ。」
「え?まあ無事に終わったって事で揉めたくないからサインもらって終わったけど。」
「だめだろー。無理ですとか、その条件は変えて下さい、とか追加料金もらいます、とかだろー。」
「えー。無理ですっていいづらい。それでトラブルなかったしー。」クラウンは手のひらをスノーに向けながら遠ざかろうとした。
スノーは手招きした。
「クラウン、ちょっと来い。あのな、最初は言い慣れてないから言いづれーかもだけど、次からちゃんと少しずつでも意思表示の練習すれば、できる!やってみろ。シシッ。」
クラウンはもじもじしながらも「う、ううん!言ってみるよ。僕が言ってもいいよね?やってみる。ふうー。スノー、ありがと。」
「よしっ。シシッ!あった、店に着いたぞ。」
クラウンは若い店主に言った。「舐められないスーツ下さい!」「いらっしゃい!良いのがあるよ!」店主は一式揃えて持って来た。
クラウンは試着室で着替えた。黒の上下のスーツにグレーのシャツ、赤と黒のネクタイ、黒い靴。カーテンを開けると、スノーも店主も良い表情をした。
「もうちょっと迫力があった方がいいな。」スノーが言うと、店主がカウンターからヘアグリースを持ってきて言った。「髪の毛ほどいて、これ塗って後ろに流してみなよ。」
「え、やった事ない。どーやって?」
「こうやって手に軽くつけて、後ろに流すだけ。」店主は両手で前から後ろに髪をかき上げて見せた。
クラウンは店主に教わった通り、ヘアグリースをつけてオールバックにした。
「おー、良くなった。」「お似合いです。」クラウンは着たまま会計した。スノーも全身黒で一式揃え着替えた。
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アトランティス社。
スノーはインターホンを押した。
「ギルドのスノーです。書簡持って来ました。」
「ご苦労様です。お世話になっております。応接室20番でお待ち下さい。」
扉が開いた。クラウン達はエレベーターで上がり、応接室で飲み物を飲んで待った。
10分後。
社長がアシスタントロボを連れて入って来た。「お待たせしてすみません!あいつの事、丸焼きにしてくれたでしょー。ありがとうございます。従業員一同、汗水垂らして働いたクレジットを湯水の様に使われたあげく、脱税疑惑をかけられて、頭にきてました。警察に相談しても捕まえられないと言われてましたから、従業員一同、感謝してしています。清々しました。」
「あの、僕、丸焼きにはしてないです。羊の毛皮がよく燃えただけです。」クラウンは目を逸らして言った。
「そーでしたか。あいつにキレられませんでした?在職中は瞬間湯沸かし器ー、言われてましたから。」
「キレられてはないけど、なんか、最後に待ってって言ったんです。被害者達には待ってあげなかったくせに。なんか許せなくって。」
「私達の気持ちに寄り添ってくれてありがとうございます。」社長はディスプレイにサインした。
クラウン達は書簡を無事届けた。
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サイプレス号。
帰り着くと犬達はハニに走り寄った。
「おかえり!うはあっ、何、その格好ー。ブラスト来てー。」ハニは帰ってきた2人を見るや服装に突っ込んだ。
「それが仕事をして帰ってきた僕らに言う言葉ですか?ハニ?」クラウンは言った。
ブラストがすぐ来た。「うわっ誰の趣味?スノーは別にいいのか?いや、並ぶと怖いな。」
クラウンとスノーは並んでポーズを決めた。
犬達もすまして座った。
ハニは面白がってログに残した。
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続く。
絵:クサビ




