4巻 1章 9話
翌朝、合同作戦の日。
クラウンとブラストはRAV4で買ったお気に入りの服を来て、ヘルメットとサポーターを手足につけた。クラウンはチョコをハニに預けた。ギルドのみなと円陣を組んで気合いを入れ、スケボーを持って2人は出発した。
「クラウンこっち。」ブラストは曲がり角で止まって声をかけた。クラウンもスケボーを止めた。「この先がスケーティング禁止エリアだよね。」「そう。クラウンはコケ方派手だから車に気をつけろよ。」「転ぶのはうまくなったよ。ははっ。」2人はワッペンのない手首をさすり、グータッチした。一息整えて、地面を蹴った。スケーティング禁止エリアにスケボーに乗って侵入した。
車道の間、中央分離帯をS字を描きながら降る。クラウンはヒヤヒヤしながら、ブラストの後をゆっくり滑る。カーブの勾配で、道路の間知ブロックの上を滑るとスピードが落ち、足元がカタカタ揺れる。カタカタ、カタカタ。「うわお!」「ヤベー楽しいー。」
片側2車線の広い道路にでると、走行中の車に掴まっては、離れて、ちょうどいいスピードの車にまた掴まり、来た道を登って行った。
遠くからサイレンが聞こえた。
ウーウー。
「うわー来た来た!」クラウンがS字で降りながら振り返る。白黒のミニSUVは水色にビカビカ光りながら追って来た。
「にっげろー!ははは。」ブラストはテンションが上がり、カーブの間知ブロックをガタガタしながら降りて行く。国軍警備隊はクラウンの真後ろまで迫った。「そこの2人!止まりなさい!ゆっくり道路からでなさい!」ウー!ウー!
クラウンはハラハラして何度も後ろを振り返った。「見てないで止まりなさい!」
クラウンは間知ブロックのスロープを上手く曲がれず坂を一気に下った。「わわわわ!」「クラウン踏ん張れ!」「スケボーから降りなさい!止まれ!」
クラウンはブラストを追い抜き、広い道路にでた。ブラストは素早くキックして、追いかけた。クラウンが車に突っ込まないように、ブラストはクラウンの後ろから路肩に押した。2人は路肩で止まった。クラウンは冷や汗がドバッと出て、膝に手をついた。心臓がバクバクいった。
「ゆっくり壁に手をつきなさい!動いたら撃つぞ!」
クラウンとブラストは壁に手をついた。国軍警備隊がミニSUVから降りて来て、2人を監獄に連行した。
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監獄。
クラウンとブラストは同じ牢屋に入れられた。牢屋越しに国軍警備隊が話しかけてきた。「黙り通せると思うなよ、不良少年。どっちにしても国軍訓練所に強制、、、」
「ちょっと来てくれ!緊急要請だ。」「何があった?今日はあちこち騒がしいな。」「トラックが資材を道路にぶちまけたらしい。交通整理に行くぞ。」「ただでさえ人手不足なのに。明日はしゃべらせてやるからな。」そう言って警備隊員は出て行った。
警備隊員がいなくなると投獄されている人々は自由に話しだした。
「うまくいったね。」クラウンは笑顔になった。ブラストも嬉しそうに少し笑って言った。「ビョーンさんに話しかけてみよう。」「ビョーンさーん。いる?」「おい!ビョーン!新入りが呼んでんぞ!また仲間が来たんじゃねーか。」「ビョーンは俺だ。誰だ?」「ラファエルの友達だよ。助けに来たよ。」「はあ、ありがと。また監獄仲間が増えて嬉しいよ。ラファエルは元気してる?」「うん。」「ラファエルに頼まれたんだ。食べ物届いたでしょ?」牢屋内がざわついた。「サンタクロースは君たちなのか?あの日は大盛り上がりだったんだ!」「ありがとう。」「ありがとう!」「ここのメシはとにかく少ないんだ!」「うますぎて涙でたよ。ありがとう。」
投獄された人々から感謝の言葉がたくさん返って来た。「今日の夕方出るから待っててね。」「へ?!今、出るって言ったか?それなら俺の友人も一緒に頼む。俺を助けただけの善良な市民だ。」
「OK」「一緒に行こう。」
ガチャン。
交代の警備隊員が来ると、ざわついた牢屋は静まり返った。
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高校の終業のチャイムが鳴り、一斉に下校する。サリーは抱えていたスケボーに乗り、仲間達もユナイトパークに向かった。
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ホテル「エルココ」
ハニは部屋の窓を全開に開け、ホテルの部屋を出た。エレベーターで屋上に上がると、ヴァルとチョコとピギーバット達が待っていた。ギルドスーツケースが2つ並んでいる。
「ready〜?」
「YES!」
「ワン!」
ぶうぶうぶう。
「スピリット。」ヴァルがパワーを使い、ピギーバット達はチョコとギルドスーツケース2つを抱えて監獄に突入していった。
プキプキー!
バサバサバサ!
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監獄。
「緊急要請だ!」「今日は何度もなんだよ。」「早く行くぞ!」警備隊員が慌ただしくいなくなった。
バターン!
柵が勢いよく開いた。
ぶうぶうぶう。
カチャカチャカチャ。
「来た!」クラウンはチョコの走ってくる音が聞こえた。
チョコを先頭にピギーバット達がギルドスーツケースを持って来た。
クラウンとブラストは牢屋越しにチョコをなでた。「よしよーし!」
素早くギルドスーツを引き入れ、急いで着替えた。
クラウンはワッペンを起動し、ブラストとぶつけた。「フレイヤ!グアダルーペとビョーンの部屋を開けて来て!」炎の女神が現れた。フレイヤが廊下を進むと、囚人達はどよめいた。フレイヤは火の玉を2発、ビョーンの牢屋の鍵に向かって撃ち、熱くなった所を蹴り崩した。
フレイヤはビョーンに来い!のジェスチャーをした。
ドカーン!
クラウン達の牢屋から爆発音がした。
クラウンとブラストとチョコは同時にジャンプしパワーを使って大爆発を起こした。牢屋の壁と扉は爆発で吹き飛び、穴が空いた。
「ビョーンさん、こっち来て!」ブラストが廊下に顔を出し呼んだ。フレイヤは壁の穴から飛び出し、ルーペの居る塔まで飛んで行った。ピギーバット達も空に飛んで行った。
「ビックリしたー。えっ、まだ子供?」ビョーンと友人が駆け寄った。
「行こう!」クラウンが手招きして外にでた。クラウン達は監獄の壁に沿って走った。
ハニが黄緑色の光をまとい、クラウン達めがけて飛んで来た。ハニは手を横に開いて、クラウン達をユナイトパークの屋上のビルに送り飛ばし、ビョーンと友人を引き寄せた。
「うわ!」「はわ!」
ハニは引き寄せたビョーン達をホテルの窓へ送り飛ばした。
ボン!ボン!
塔から爆発音が2回した。フレイヤがルーペの牢屋も開けた。
ウーー!ウーー!
監獄にサイレンが鳴り響いた。
ハニはホテルの窓の外から顔を出し、ビョーンに言った。「迎えが来るまでここで大人しく待ってて。」そう言って、ハニはユナイトパークの屋上まで飛んで行った。
ビョーン達は窓を閉めて、壁に背を付け鼓動が落ち着くのを待った。
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グアダルーペはバルコニーに出て辺りを見渡したが、フレイヤは時間切れとなり姿は無かった。
そこに山手からパラシュートで虎徹がバルコニーに降りて来た。「こちらへ。ハーネスをつけて参ろう。」
グアダルーペは虎徹に駆け寄り、背中を向けてハーネスを背負ってパラシュートを装着した。虎徹は自身のハーネスと連結させ言った。「一緒に飛ぶぞ。飛翔。」
「ヒャ!」山手に高く飛び上がった。虎徹はパラグライダーを開き、上昇気流をつかみ、上空へ上がって行く。監獄からサーチライトで照らされ、ミニSUVが数台、追跡に向かって来た。
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ユナイトパークの屋上を飛ぶハニもサーチライトで照らされた。ユナイトパーク側にも追跡のミニSUVや警備隊員が一斉に出て来た。
着地したハニはクラウンとチョコ、ブラストとユナイトパークの階段を駆け下りて、ユナイトパークの裏の体育館へ逃げ込んだ。体育館の扉を開けると、候補生と3姉妹が待っていてハニにインラインスケートを履かせ、縦に繋がって腰を持ち、スピードを上げて体育館を走った。クラウン達は体育館の2階まで走り、横の扉から渡り廊下に出て行った。
警備隊員が一斉に押しかけてくると、ハニ達は体育館の卓球台の上をジャンプしながら逃げる。体育館は大騒ぎになった。「今よ!」3姉妹の長女が号令をかけると、次女と三女がカラー粉末のピンポンボールをばら撒き、卓球部の友人達が警備隊員に向かってスマッシュを打った。
バフ!バフ!
カラフルな煙幕が舞い上がり、ギャラリーもタオルなどを投げて警備隊員の行く手を阻んだ。
ハニ達は体育館から無事脱出し、3姉妹の母親が待つバンに乗って、警備隊員達を巻いた。
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渡り廊下の先でサリーと候補生が待っていて、クラウン達の姿が見えると、スケボーを3台置いて先導した。スケーティング可能なアクティブエリアを先行してくれている。クラウン、ブラスト、チョコはスケボーを急いでキックして、警備隊員達から遠ざかる。ユナイトパークの入り口から入り、サリーはコードをスキャンした。「Somebody,Grab the Whee」が大音量で流れた。
ダンボールの壁をすり抜けて、ジャンプ台を2つ飛び越える。クラウンはダンボールの壁を手で崩していった。警備隊員達が追いかけて来ると、最後尾のブラストは散らばったダンボール箱に向かってパワーを放った。「ショックウェーブ!」ドパ!ドパ!ドパ!ダンボール箱が警備隊員達に吹き飛んでいった。警備隊員達はひっくり返った。
さらに追いかけて来た警備隊員達はユナイトパークの保護バスケットに掬われてスタート地点に戻された。
「イェー!」
サリー達はユナイトパークから出て、スケーティングゾーンを走る。
ウー!ウー!
ミニSUVが猛スピードで追って来た。
サリーが目印のグラフティー看板を指差した。「クリーンの看板!もうすぐだ!」
工事現場の目印のグラフティー看板を見つけ、サリー達はパワースライドをして通行止めの道に入って行った。見失わない様にクラウン達も必死について行くが、どんどんミニSUVが車の間を縫って追跡して来る。通行止めの看板を曲がった所で、ミニSUVが何かと衝突した。
ガチャーン!!
ミニSUVは横回転して止まった。ボンネットから煙が出ている。
「シシッ。大丈夫っすか?!」岩肌のスノーがゴーストを連れて、ミニSUVに駆け寄った。「すまん!追跡に夢中でぶつかってしまった。君の方こそ大丈夫か?」「なんともないです。ご苦労様です。」スノーとゴーストは走り去った。
クラウン達はその隙にフェンスの間に飛び込み、目隠しシートを通り抜けて工事現場の中に入った。ドワーフの棟梁が待つ搬送トラックに乗り込んだ。荷台でサリー達と合流しハイタッチした。搬送トラックは警備隊員の誘導で脱出した。
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上空でグアダルーペは緊張して歯を食いしばり、ハーネスを力強く握っている。パラグライダーは山の影に入った。追跡のミニSUVが見えない所まで進むと、虎徹はグアダルーペに声をかけた。「安心してこのまま真っ直ぐ行けば良い。3つ数えたらパラシュートを開け。行くぞ!」虎徹はグアダルーペにパラシュートのストラップを握らせ、切り離した。ガチャ。ブン!
3秒後、パラシュートが開いた。
虎徹は見届けると、くるんと方向転換して、追跡してくるミニSUVの上空めがけて飛んで行った。ミニSUVはUターンして追いかけて来た。
虎徹は目印のグラフティー看板を見つけ、カフェテラス前の道路へ降りた。腕をぐるぐる回してパラグライダーを丸め、腹のバッグに押し込んだ。カフェテラスの前にあったBMXに乗り、坂を一気に下り始めた。
カフェテラスにいたRAV4のオーナーが道路の真ん中に出て両手を上げた。「わーお!私のBMXがー。」ミニSUVが1台止まった。残りの2台はゆっくりオーナーを避けて、虎徹の追跡に向かった。
ウー!ウー!
高台から見るスタディオンシティはカラフルなネオンが煌びやかだ。
虎徹は全速力でペダルを漕ぐ。身をかがめスピードを出す。横からBMXの候補生とその仲間が虎徹に合流した。水色のライトに照らされ、別れ道で2手に分かれる。ミニSUVも2手に分かれ追跡する。
急カーブに差し掛かり虎徹は全速力でパワーを使った。「飛翔っ!」カーブの高台から一回転して飛び出し、高く夕景の空に舞い上がった。
バサ!
パラグライダーが開き、虎徹は飛んで行った。
BMXは山の土手に落ちた。
虎徹は警備隊を巻いた。
しばらく上空を飛び、徐々に降下する。下の道路にCleanのステッカーを貼ったバイクが一台走っている。
バイクを運転しているヴァルがパワーを使った。「スピリット。」バイクはスピードを落とし、左右にバランスを取って虎徹の真下に入った。バシュ!ドスッ!パラグライダーを切り離し、虎徹はバイクのリアシートに着地した。バイクは修道士の谷に走って行った。
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ローティのリムジン。
「BMXとパラグライダーを回収してくれ。こっちもエルココでピックアップする。」ローティは仲間とのコールを切った。自動運転のリムジンはホテル「エルココ」の駐車場に着いた。ローティはお客様専用通路から入り、ビョーンを迎えに行った。ビョーンとハグをして、みなでリムジンに乗り、ホテルを出発した。途中、検問でチェックを受けたが、買収している警備隊員だった。検問の抜け道を教えてもらい修道士の谷に向かった。
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上空。
「安心してこのまま真っ直ぐ行けば良い。はー、はー、安心してこのまま真っ直ぐ行けば良い。はー、安心してこのまま真っ直ぐ行けば良い。」グアダルーペは何度も虎徹の言葉を繰り返していた。
「ルー、ぺー、、、ルー!ぺー!」
グアダルーペは平たい崖の上で両手を広げたミニヤ見つけた。まっすぐ彼の元へ飛んで行く。
「ルーペー!」
「ミニヤー!」
グアダルーペはミニヤに飛び込んだ。2人は抱き合い喜んだ。「ルーペ!新しい家に行こう!」「本当に家を出たの?」「そうだよ〜。新しいペットも待ってるよ〜。ほら、それ巻き取って車に乗って。」グアダルーペはパラシュートを急いで巻き取って、軽トラックの荷台に投げ入れた。「今日はすごい事が起きたのよ!」「協力してくれたみんなに会いに行こう!」軽トラックに乗り込み、修道士の谷に向かった。
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修道士の谷。
軽トラックが広場に停まった。
みな拍手で迎えた。
「ほらー、やっぱりこの2人が最後に来るっていったじゃん。」クラウンは心配していたスノーに言った。「シシッ。これで揃ったな。お疲れ!」
ローティが一歩前に出た。「ミニヤがグアダルーペ様を癒したいと温泉川の近くに家を建てました。今からみなで行き、そこで打ち上げをしましょう!あ、水着はそこの私の露店でお求め下さい。」ローティが一礼した。みな口笛を吹いたり、ハグをしたり、飲み物のケースを担いだり、修道士の谷は活気に満ちた。
川の温泉にみなで楽しく浸かった。クラウン達はサリー達、ローティの仲間、ビョーンと友人、ミニヤ、グアダルーペと友情を育んだ。
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2章に続く。
絵:クサビ




