Six「俺たちの名前、彼女の名前」
「流石神様だね、尚人。」
「よく言うぜ、最後のあの感覚。あれもお前がやったんだろ?」
「あらら♪またばれちゃいましたか♪」
現在。6時限目。あれから、屋上への訪問者は来ていない。
あの後、彼女は泣きつかれて寝てしまった。また保健室に連れて行くのも面倒だったので、俺はお気に入りの場所に彼女を寝かせ、自分の制服の上着を着せている。
俺と善弥は、彼女が寝ている横に座り、並んで空を見ている。
「ったく、いい趣味してんな。お前・・・。」
「なにがー?♪」
・・・善弥はおそらく、こうなることが解っていたのだろう。だから俺に、あの朝変な感覚を覚えさせた。多分、俺が制服の上着を着せたまま忘れてきたのも、コイツの仕業だ。
そして今日、俺が彼女から制服を受け取っているとき、俺のお気に入りの場所に瞬間移動をし、彼女が悩みを言うように促した・・・。
全部、コイツが動かしていたと言ってもいい。しかし、それは同時に・・・・
「お前の行動は禁忌を犯した。」
「・・・。」
世界は廻る。それは、その世界に神様がいるからだ。神がいない世界は、廻らない。
よって、神様以外は、世界を動かしてはいけないのだ。神様以外のものが世界を動かすということは、その世界の未来を変えるということだ。
唯一無二の絶対規則。
しかし、善弥はそれを破り、俺を操作しながら未来を捻じ曲げてしまった。
禁忌を犯したのだ・・・。
「ま、しょうがないよね♪」
善弥は、禁忌を犯したのにも関わらず、あまり気にしてないようだ。
「さ、僕に相応の罰を♪」
おどけた表情で言ってきた。
・・・妙に引っかかる。こいつは相当頭が切れる。天界でも、頭脳テストで善弥の右に出る天使はいなかったほどだ。誰よりも禁忌の重みを知っている善弥だからこそ、自分から禁忌を犯すことは、まず無い。ということは・・・。
「・・・ルシファーか?」
「!!」
善弥の顔色が変わった。
「やっぱりそうか・・・。」
そうとしか考えられない。それ以外、善弥がこんなことをする理由が思いつかない。
「よくわかったね・・・。」
「俺を舐めるな、バカタレ。」
俺はポカッと善弥の頭を小突いた。善弥は『あたっ♪』と、ふ抜けた声を出しやがった。なんで“♪”が付くんだよ。なんでご機嫌ですよ♪的な声なんだ?寒気がする(ぶるるっ)
「・・・彼女だけは失うわけにはいかなかったんだ・・・。」
俺から叩かれた隣の男は、急に真面目な顔になった。
「でも、結局は尚人に頼っちゃったね、ごめん・・・。」
いつも笑顔の善弥が、とても辛い表情を見せた。こいつが笑顔じゃない時なんて、失礼だが見たことが無い。(つまり、寝ている時もニヤニ【個人情報により、モザイク加工】)
「さ、早く僕に裁きを。」
空を見つめていた善弥の瞳が閉じた。
ったく、素直じゃないな。俺もコイツも・・。
「・・・俺、最近寝不足なんだー♪」
「えっ?」
俺の見当違いの返答に、善弥は戸惑ったようだ。
「だからさ、さっきから眠たくって眠たくって。ちゃんと聞いてなかったんだよ♪」
俺は、出来る限りふざけた表情で言った。コイツから、辛い表情が無くなるように・・・。
「・・ははっ。」
善弥が笑顔になった。俺も、その笑顔を見るだけで笑顔になれる気がする。
「やっぱり最高だよ、尚人ー☆」
瞬間、善弥が抱きついてきた。
「ちょ、おまっ、離れろっ!!」
あつい。いろんな意味で・・・。
「ん・・・。」
俺が、善弥の抱擁から逃れようとしている時、彼女の目が覚めたようだ。
俺は急いで善弥を蹴り飛ばし、屋根の上から落とした。
「起きたか?」
目を開けると、目の前に男の子が居た。
・・・近い。とてつもなく、近い・・・。
男の子が呼吸をするたびに、吐息が私の頬を擽る・・・。
「~~~・・・。///////////」
もうダメ・・・。心臓が破裂しそう・・・。
「ん?顔が赤いな・・?熱か?」
男の子はそう言うなり、自分のおでこを私のおでこにくっ付けてきた。
男の子の髪からはシャンプーのにおいがする。甘いにおい・・・。
頭の中が真っ白に染まっていく・・・。
「~~~~っ///////////」
死んじゃうよぉぉ~~//////。
「だ、だいじょぶだから・・・。」
やっとの思いで、私は声を発することが出来た。こんなにも声を出すことが難しかったなんて・・・。自分でもびっくりしてしまった・・・。
「お、そっか。」
男の子は、おでこを離してくれた。私のおでこに、微熱と甘い香りを残して・・・。
「今の気分はどうだ?すっきりしたか?」
男の子は、私の横に座り直して、聞いてきた。
「うん。すっきり。」
「そりゃよかった♪」
そういって、男の子は笑顔になった。
この男の子に出会ってから、私は少なからず笑顔になれた。自分でもわかる。自分の顔がほころんでいることが・・・。
とても懐かしい感覚だ。心の底から笑顔になれる・・・。何年ぶりだろうか?中学生になってからというもの、彼と出会ってからも、ここまで笑顔になったことはなかった。
とても、幸せだった・・・。
「微笑ましい雰囲気だね♪」
と、懐かしい記憶に浸っている間もなく、屋根の上にさっきのカッコいい男の人が上ってきた。・・・いつから下にいたんだろう?
「さて、一件落着としたところで、自己紹介がまだだったよね?」
そういえば、私はこの人たちの名前を知らない。
よく思えば、中学校三年間のあいだ、私はこの人たちに会った覚えが無い・・・。
こんなにカッコいい二人組みが、女子中学生の話題に上らないこと自体、おかしいのだ。
そんな私の心の中も知らずに、自己紹介を始めるカッコいい二人組みだった・・・。
「僕は3年A組の天満善弥、ヨロシクね♪」
勝手に自己紹介をし始めやがった。
「んで、こっちのちっちゃい奴は、同じ組の神埜尚人。ちなみに、僕ら二人とも部活動には入ってないよ♪ほら、尚人。挨拶は?♪」
「お前は俺の保護者かっ!?」
善弥は俺のほうを見て(ちなみに、今の俺にとって腸が煮えくり返りそうな笑顔で)俺に挨拶をするように言ってきやがった。
というか、なぜ彼女は俯いているんだ・・・?んー・・・。笑っているのかな・・・?
・・・善弥。今さっき、裁いときゃよかったかもしれない・・・。
「良いから良いから♪さ、早くっ♪」
・・・はぁ。
「よろしく・・・。」
はぁ、なんで俺はこんなことになったのかな・・・。
背が高い男の人は天満善弥。
そして、私を助けてくれた男の子の名前は神埜尚人だそうだ・・・。
(同級生だったんだ・・・。)
・・・神埜。・・・神埜、・・尚人、・・くん・・。
~~~~~・・/////////////っ!
ヤバイよぉ。名前聞いただけで、こんなに、ドキドキ、しちゃう・・・。
私は、赤くなる顔を隠すように、そっと下を向いた。
「よろしく・・・。」
ふと、顔を上げる。
神埜尚人くんは、とても顔を赤くしてそう言ってきた。
「照れるなよっ♪」
天満善弥さんは、照れている神埜くんに軽く頭を叩いた。
「照れてねぇよっ!」
真っ赤な顔で神埜くんは言い返した。
・・・可愛い・・・。
「じゃあ、次は君♪」
天満善弥さんは、そう言って私にビシッ!っと指を指してきた。
神埜くんも仏頂面で、腕を組んでこっちを見ている。
「わたしは・・・・・」
『ルシファーって誰っ!?』
っていうツッコミは無しの方向で♪




