Five「君と俺だけ」
今回はちょっぴり短めです
『生きていてもいいの?』か・・・。
「よくそんな事訊けるな?」
俺はちょっと、キレ気味に返事をしてやった。
「ご、ごめん・・・。」
彼女はそんな俺の気分を察したのか、顔を俯いてしまった。
「やっぱ生きる価値なんて、私には無いよね。2度も他人から助けてもらうなんて。もう死んだ方かいいよね。わた――――」
「甘えてんじゃねぇよ!!!」
下を俯きながら涙を落としていた彼女は、俺の怒声にびくっと肩を震わせた。
もう我慢できない。
「おい、あんた。なんで自分が生まれてきたか解るのか?」
「えっ・・・?」
彼女は俺の突然の質問に戸惑った。ま、こんな事聞かれてすぐ答えられるはずは無いがな。
「・・・解らない・・。」
彼女は素直に答えた。
「じゃぁ、なんで俺が助けたか解るか?」
「・・・わかんない・・・。」
これが解らないから、彼女はあんなことを訊いてきたのか、・・・はぁ。
「・・・いいか?あんたはこの世にたった一人しかいないんだ。」
俺は語り始めた。
「あんたは一人だけ、同じ存在は決していないんだ。そんなあんたが、自分から死んだらどうする?あんたに関わっていた人たちはどうなる?あんたの両親はどうなる?残された人たちはどうなるんだ?」
男の子は、私の目を見て話をしている。その目には、怒りと憂いが混ざったような色をしていた。
「あんたには、残されたやつの気持ちが、解るのか?」
解らない・・・。
「あんたの友達が、あんたと出逢ったときの気持ちを知っているのか?」
知らない・・・。
「あんたの両親が、あんたが生まれたときのことを話してくれたことを憶えてるのか?」
憶えてない・・・。
「何か一つでも、あんたは自分以外の人間の気持ちを知ろうとしたことがあるのか?」
「・・・ありません・・・。」
男の子の声は、私の心に直接響いてきた。昨日のような温かく、優しい感じではなく、刺々しく、冷たい声・・・。
ふと、私は泣いていた。自分でも気付かぬうちに、涙が溢れていた・・・。また、この人の前で泣いてしまった。私は、こんなにも弱い人間ということを、改めて知った。
もう、この場から逃げたくなった。これ以上、私自身の弱い部分を曝け出したくなかった。
「そのまま死んでもいいのか?」
「わから・・ないよ・・。私には・・。」
わからない。分からない。判らない。解らない・・・。
「わから―――」
「じゃぁ、死んじゃダメだな。」
彼が私を抱きしめてきた・・・。
俺は、頭で考える前に体が動いていた。体が小さいのに、俺さほど変わらない身長の彼女を優しく抱きしめていた。
「ぇ・・・、ぁの・・・。」
「なにも知らずに死ぬなんて、俺が許さない・・・。」
俺も遂におかしくなっちまったようだ。俺は、彼女を抱きしめながら泣いていた。
善弥は黙って見ている。もう知らん・・・。
いつ振りだろうか、涙を流すのは・・・。
彼女もまた、俺を抱き返してきた。弱々しいが、しっかりと・・・。
「ぅぅ・・・ひっく・・・。ごめん、・・なさい・・。」
俺たちは、抱き合いながら、涙を流した・・・。
「ぅぅ・・・。うわぁぁぁぁん!」
彼女が膝を突いて、声を上げて泣き始めた。当然、抱きしめ合っている俺も膝を突いた。
まるで、時間が止まったみたいだ。
俺と彼女以外、この世界には存在しないように・・・。




