Four「再会のふたり、彼女の過去」
・・・あの男の子は居るかな?そんな、ベニヤ板並みの耐久力しか持たない自信と共に、私は昼休み、屋上への扉へと向かっていた。
手には男子の制服のブレザーがある。
それもこれも、昨日に遡る・・・。
気づいたら保健室のベッドの上だった。そして、なぜかブレザーを着ていた。
「あの男の子のかな・・・?」
それは、不思議な温かさで、私を包んでいてくれた。
不意に、男の子の顔を思い出した。涙でちょっと霞んでいたけど、カッコよくて。でも、どことなく可愛い顔だった。
・・・、だんだん、ドキドキ、してきた。初対面なのに命を救ってくれて、優しい言葉を掛けてくれて、カッコよくて、自分の制服着せてくれて・・・・。
わぁぁぁ//////。かっ、顔が赤くなるのが自分でもわかる・・・。保健室の先生が、「熱が出てきたのかしら?」って言うくらいだもん。相当ドキドキしていた。
翌朝、私はかばんの中に男の子の制服を、大切にたたんで登校した・・・。
そして、今に至る。昨日からあの男の子のことしか考えられない。考える度に、またドキドキしてしまう。ぅぅぅ・・・。
と、なんだかんだ思っているうちに、屋上への扉に着いた。・・・、またドキドキしてきた。あの男の子が居るかも分からないのに・・・。
(ドクン・・・)
「ぅぅ。おっ、女は気合いよ、私・・・。」
(ドクン・・・)
頼りない励まし。それでも・・・。
(ドクン・・・。)
私は、扉を開けた・・・。
・・・誰も居なかった。
・・・そうだよね。逢えるわけ無いよね・・・。
引き返そうと、扉の方へ向いたときだった・・・
「「・・あっ・・。」」
男の子を見つけた・・・。
・・・俺と彼女は、目が合ったまま、固まってしまった。
どっ、どどど、・・・どうしよう・・・。また会うなんて思ってもいなかった・・・。
俺は、寝転がった状態で頭だけを外に出して彼女を見ている。そして硬直。
彼女は、俺を見上げるようにして俺を見ている。そして硬直。
・・・まぁどっちもどっちの状態ってわけだ。ははは。
「あっ、あの・・・」
先に口を開いたのは彼女だった。
「こっ、これを・・・。」
「あっ、俺の制服・・・。」
彼女の手には俺の制服があった。持ってきてくれたんだ・・・。
俺は小屋の上から飛び降りて、その制服を受け取った。
「ありがとう。」
「う、うん・・・。別に、いいよ・・・。」
あり?どうしてそんなに顔が赤いんだ?彼女の顔は熱でもあるかのように赤かった。
・・・まぁいいか?
「制服、ありがとね。」
俺はそれだけ言うと、また上へ戻ろうとした。が、彼女が呼び止めた。
「まっ、待ってっ!」
「ん?なに?」
彼女はなにか言いたそうだったが、もじもじしていて、言えずにいる。
「何か相談したいことでもあるのー?♪」
「「!?」」
突然、声が空から降ってきた。俺たち二人は上を見上げた。
「善弥っ!?てめっ、どこから出てきたっ!?!?」
「ははは〜♪僕は神出鬼没っていうステータスが、デフォルトでついてるのさー♪」
俺が居た場所。つまり、小屋の上に天使の善弥がいた。
「で?もし悩みがあるなら相談しなよ♪このちっちゃいに♪」
「はぁ!?なんで、おれ―――」
(ちょっと僕にのってよ♪おねがい☆)
俺は反論しようとしたが、善弥の精神感応で、言い切ることは出来なかった。
「・・・悩みがあるならな。」
俺がそういうと、彼女はすこし、うれしそうにした。
(・・・貸し一、だぞ?)
(OK、OK♪いいよん♪)
俺も精神感応で、善弥の意図不明のお悩み相談にのることに答えた。
善弥のことだ。何かあってのことだろう。ま、今度昼飯でも奢ってもらってチャラとしよう・・・・。
急に現れた人は、男の子と同じくらいカッコいい人だった。風に靡く長い金髪、優しい目、凛とした表情・・・。ぅぅぅ、カッコよすぎる・・・。
私は目からハートのビームが出ないように、懸命に我慢をした。
その人も、男の子と同じように頭だけ出して、小屋の上から私たちに声を掛けてきた。
『もし悩みがあるなら相談しなよ♪』
そう、男の人が言った。
『・・・悩みがあるならな。』
そう、男の子が言った。
とてもうれしかった・・・。
私は、ただ、知りたかった。何故、男の子が助けてくれたのか。知りたかった・・・。
自分から死のうとした私に、あんなにも温かい言葉を掛けてくれた君に・・・。
私は話した。私の悩み、私の過去を・・・。
「私、自殺しようとしたの、これが初めてじゃないんだ・・・。中学校に入ってすぐ、私はクラスに馴染めないで、皆からいじめられていたの・・・。筆箱の中身が空っぽになってたり、机の上に『死ね』って落書きされてたり・・・。でもね、“彼”だけは違った。クラスの皆がいないとき、私に声を掛けてくれたの・・・。
『大丈夫?』とか、
『あんな奴ら、無視しとけばいいさ♪』とか・・・。
とても優しかった。多分、その時から“彼”のことを好きになったんだと思う。でも、いじめにはもう耐え切れなかった。昨日みたいに、屋上から飛び降りようとしたの。だけど、“彼”が助けてくれた・・・。
『死んじゃ駄目だっ!君が死んでいい理由なんて、どこにも無いじゃないか!!』
こう言ってくれたの。私の為に、私なんかの為に・・・。“彼”の存在だけで、私は生きることが出来ると思えたの。だけど、昨日、突然“彼”が別れようって言ってきた・・。どうしようもなかった。好きだったのは、一方的な、私の独りよがりだったのかもしれないと思ったの・・。」
彼女は淡々と話し始めた。その声には、感情という色は無く。ただただ無透明な響きで、俺たちに聞こえてきた。瞳には生気が無く、口元は規則的に動くだけ。
とても機械的な話し方に、俺はすこし戸惑ってしまった。それでも彼女は、話すことを止めなかった。
「だから、また自殺することにしたの。もう、生きる意味が分かんなくなかったから。もう、悲しすぎたから・・・。でも、やっぱり死ねなかった・・・。」
そこで、彼女は話をやめて、俺を見た。
「君が・・・君が、助けてくれたから・・・。私はここに居る・・・。」
さっきまでの感じはしない。声には淡く色づき、とても哀しい響きに変わった。その瞳も不安というべきか、愁いというべきか・・・。
今にも壊れてしまいそうな雰囲気を出しながら、彼女は言った。
「私は、生きてもいいの?」
“自分は生きていていいのか?”そんな漠然とした疑問を、あなたは持ったことがありますか?
彼女はいじめを受けて、『自分はみんなから必要とされていない存在』と考えてしまいました。
皆さんの周りには、そういった悲しい人が居ますか?
もし居たら、その人に手を差し伸べて、なにか声をかけてやってください。それだけで、救われる命がありますから・・・。
本文だけでなく、こんな後書きまで読んでくれた皆様に感謝です♪




